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2016年1月28日 放送
【写真】熊谷 崇 氏 村上龍の編集後記 ショートエッセイはこちら

予防すれば虫歯ゼロ!ニッポンの歯科を変える歯医者さん

医療法人社団 日吉歯科診療所 理事長 熊谷 崇(くまがい たかし)
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社長の金言

金言1
自分の歯を知ることが
健康の源

人口11万人の山形県酒田市に、市民の1割が通う日吉歯科がある。理事長の熊谷は、虫歯ができる仕組みを患者に理解してもらい、ケアを徹底する「予防治療」を推し進めてきた。歯医者は虫歯になったら行くところでなく、虫歯にならないように通うところ。目指すは80歳で全ての歯がある社会だ。「歯を削ることは修理にすぎない。虫歯の原因になる虫歯菌を減らさないと再発する」。予防で日本人の歯を健康にしようという熊谷に迫る。

患者も驚く「予防治療」

総勢50人のスタッフが酒田市民の歯を守る日吉歯科診療所。熊谷が35年前に開業した。ここに酒田市民は年3回ほど「予防治療(メンテナンス)」に通う。初診の患者も、応急処置以外の虫歯治療は受けない。初診の患者がまず会うのは医師でなく、歯科衛生士たち。この歯科衛生士が、予防で大きな役割を担っている。過去の虫歯治療のチェックや唾液・虫歯菌の検査を行い、虫歯がなぜできるか、予防はどうすれば良いか患者に徹底的に教える。1人の衛生士は、初診からずっと同じ患者のケアを担当する。この体制が患者との信頼関係を生み、メンテナンスに通うリピート率も上がる。20歳までの酒田市民の虫歯の本数は1本以下だという。

信念で予防に力を注いだ35年

徹底的に予防に力をいれる日吉歯科だが、健康保険は予防をカバーしていない。1回約1万円の治療費は全額患者負担になる。しかも、開業当初は、すぐに虫歯を治療しない「予防治療」に患者の苦情が殺到したという。「歯磨きの仕方を習いに来たのではない」と喧嘩になることも。しかし熊谷は信念を曲げず、虫歯に関する手作りの資料を渡し「予防」の必要性を訴え続けた。今や、その理念は酒田に根付き、親子3世代で通院する家族もいる。さらに地元小学校も虫歯の予防教育に力を入れている。

酒田から全国へ 広がる予防治療

日吉歯科では25年前から予防診療を学びたい歯科医や歯科衛生士のための研修を毎月行なっている。今まで全国から約2000人が参加。彼らは地元に戻り、予防治療に打ち込む。だが、従来の治療と違う予防診療には患者も戸惑う。熊谷が直面した壁に、歯科医たちも悩まされていた。だが、確実に予防治療は広がりつつある。飲食店を経営する平田牧場は、福利厚生の一環として従業員を日吉歯科に通わせている。「食を扱う者は歯が健康でないといけない」との理由で、治療費まで補助しているのだ。

ゲストプロフィール

1942年8月生まれ。東京都出身
      日本大学歯学部卒業
1980年 日吉歯科診療所 開設(山形・酒田市)
2006年 日本大学客員教授
2016年 日吉歯科汐留診療所 開設予定





企業プロフィール

設立:1980年4月開業
所在地:山形県酒田市日吉町2-1-16
従業員数:50人(2015年12月)
       歯科医11人
       歯科衛生士22人・技工士5人






 

村上龍の編集後記

インプラントに頼る身として、子どものころ、熊谷先生のような歯科医が身近にいたらどんなに助かっただろうと、切実にそう思う。恥ずかしながら、幼少時、「バナナ味」の歯磨きペーストを「食べる」だけだった。予防医学の国民的理解と普及は、歯科に限らず、すべての医療にとって、さらに財政にとって、喫緊の課題である。正統な危機感を抱くこと、自分への将来的な投資という概念を広めること、熊谷先生と日吉歯科の成果は、歯科医療にとどまることなく、社会全体に波及すべき重要な啓蒙活動となっている。

歯科医療を超えて
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