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2005年08月15日
アナウンサーの技術として私がもっとも尊敬するのは
アナウンサーの技術として私がもっとも尊敬するのは
競馬の実況だ。
わずか1分の間に10頭の馬がどどっと走ってタイムを競う。
しかもやたらと長い馬の名前。お金がかかってるから間違えられない着順。
それを水が流れるようにしゃべるのだからこりゃあ、すごい特殊能力だ。
馬ではないけれど
票を数える生中継をやることになった。
お金はかかっていないけれど
国の行方がかかっている。
小泉改革の本丸、郵政民営化法案の参議院採決の日。
自民党造反者の数しだいでは法案否決、即解散総選挙という事態。
胃が口から飛び出そうなくらいの久々の緊張。
馬ではないが議員の顔を必死で覚えた。
顔といえば馬の場合は、顔で覚えるのは難しい。
騎手の帽子と勝負服の色で覚える。
「何、塗り絵してるの?」
一覧に並ぶ人型に色鉛筆でぬりぬり色を塗ってる後輩は不機嫌そうに顔を上げた。
「あっこさん、塗り絵じゃありません、
こうやって帽子と服の色を塗りこむことで頭の中に入れてるんです」
色ね、色。
でもこちらはみんな同じようなダークのスーツ。
鮮やかなスーツの女性はわかるけど、あとはなあ・・
じゃあ顔は???
議員名鑑を見てもう~ん参議院議員の方々は正直少しなじみが薄い。
スポーツ担当時代によくお世話になったファイヤー大仁田さんや渦中のキーマン荒井議員などはわかるけれど・・・・こうなったら反対票を投じる可能性の高いひとの手元を見るしかない。反対は青い札を入れるからだ。
特別番組のスタートは午後1時半。
番組が始まって5分後に投票が始まる予定だった。
気合を入れてさあ、本番まであと45秒。
ん?おおおおおっ、ちょっとちょっと。予定よりも早くない?
中継の映像を見ると、すでに数人が投票を始めていた。
本番10秒前。
「票読みの仕方とか、現状とか、解説する時間がないですね、どうしますか?」
「こりゃあ、解説はさくっと終わらせて、投票のようすをじっくり見せよう」
隣で解説を担当する政治部長が言った。
「解説はさくっとですね」
これでスタッフが徹夜で準備した手元の台本ももう形骸化。
フリートークでいくしかない。
ところがさくっといったのはむしろ投票のほうで
さくさくさくさくさく票を入れる。
おおおおはやいはやい。じっくり見せるどころではない。
実際に頭に入れていた議員の顔と手元を一致できたのは3人くらいか。
あっという間に否決、あっという間に番組も終わり、あっという間に臨時閣議、
あっという間に解散、総選挙。
日本の歴史に残る一日は、まさにあっという間に過ぎていった。
改革にスピードは大切という小泉さんだが、解散総選挙という重大な局面すら
躊躇なく競走馬のように走り抜けた。
このスピード感。昔の「自民党」の感覚でいる反対議員達、採決までは先頭にいたが
ゴール手前であっという間に追い抜かれた。
最終勝負は投開票日の9・11.
そのときゴールに飛び込むのはどちらなのか。
刺すか刺されるか。目の離せない壮絶な戦いがまさに今、繰り広げられている。

