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2006年03月22日

彼を見るといつも思い出す光景がある

彼を見るといつも思い出す光景がある。
95年の春・・・阪神大震災という未曾有の災害に見舞われた神戸。
道をいけば、倒壊した建物にぶちあたり
誰もがうつむき、疲弊していた中で、
唯一、明かりがともっていた場所。

グリーンスタジアム神戸。
私は記者席にいた。

彼が現れると
スタジアム中が、声を限りに叫んだ
「イチロー」「イチロー」
すさまじいまでのエネルギーだった。
心から絞りだすような絶叫は、闇夜にこだまし、地面をゆるがし
誰もが、震災で傷ついた、不安や、悲しみや、絶望からの救いを
彼に求めていた。

思わず身震いしてしまうようなすさまじい感情の中で

彼はバットを握り締めていた。

その年、
ユニフォームの袖に縫いこまれた「がんばろう神戸」の文字。
彼は、20に迫る連続試合安打を続けていた。
毎試合毎試合、打ち続け、あのころ彼は神戸の唯一の心の支えになっていた

取材で訪れた試合。
悲鳴にも似たその絶叫の中で思わず身震いしながら解説者につぶやいた
「こわいくらいですね」

プロ3年目、まだ線の細かった彼の体がバッターボックスにはいる

「生と死の地獄を見た人たちの救いの声だからな・・・
これは尋常のプレッシャーじゃないよ。」

ピッチャーがセットポジションに入った

瞬間、スタジアムが息を止めた。
くいいるような視線。誰もしゃべらない・・・・。

そして、
耳をつんざくような大歓声
めまいがするような熱気の中
彼は、もう一塁に立っていた。
わけもわからず、涙が出た。隣の解説者も立ち上がって拍手をしていた。

試合後、ロッカーから出てきた20歳の青年に聞いた
「プレッシャーは?」
「ないといえばうそになりますけど
まあ、神戸のために明日もがんばります」手を上げてバスに乗り込んでいった。
彼はその後も打ち続け、結局、連続23安打まで記録をのばした。

あの光景があるから
私はいつも思う。
メジャーリーグの安打記録の達成の時も、そして今回の
ワールドベースボールクラシックの世界一の瞬間も

彼が打つのはあたりまえだと。

どんな場面でも
きっと、彼は答えを出してくれるんだろうと。

次は何をしてくれるんだろう。
日の丸の国旗を掲げる彼の姿をスタジオで伝えながら、
その計り知れない力に思いをはせた。

 
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