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2006年03月31日

遺族の想い

私が初めて遺族を取材したのは、ニュースを担当して間もないころだった。

盆踊り会場で転んだ時に綿あめの割り箸がのどに刺さったことが原因でなくなった男の子。
駆け込んだ病院で、のどに消毒液を塗っただけで
帰宅させられた。

あの時しっかり看てくれれば助かったかもしれない。
頭蓋骨に残る割り箸に気がつかなかった.医師を
ご両親は訴えた。

お話を聞こうと
T記者とご両親の元に向かった。

それまで私が取材したのは
プロ野球選手やJリーガー、タレントさん
旬なスポットライトを浴びている人たちで、いつでも笑顔で質問できた。

「お子さんを亡くされたご両親にどうやって話をきいたらいいのかわからない。」
そうT記者に告げると

「ご両親は息子さんのためにあえて難しい医療裁判を戦おうとしてるんですよ
事実は話してくれるといってくれていますから。」とT記者は私の背中を押した。

マンションの扉をたたくとお母様が顔を出した
「どうぞ」

中に入ろうとした瞬間、目に飛び込んできた。
奥のリビングの中央、
大きな遺影のまわりにたくさんの花とウルトラマンの人形とお菓子と・・・・

思わず足が止まった

天井からぽたぽたと涙が落ちているような
深くて沈んだ重い空気。

すぐには入れなかった。
ご両親は壁いっぱいのその大きな遺影の前で
毎晩二人で食事をとっているのだ。

「いつも一緒にいてあげないと寂しがると思って」
ひと時も息子のことを忘れたことがないと語るご両親は
時折涙を見せながら
病院への不信をぽつぽつと話し始めた。

遺族はこんな思いを抱えながら日々すごしているんだ。

胸が詰まった。
取材中にハンカチで涙を拭いたのは初めてだった。

私が感じたご両親の無念の思いは、大事な子供を失った事だけでなく
さらに追い討ちをかけるような「病院側のひどい対応」によってさらに増幅させられたものだった。

カルテの改ざん、高圧的な対応、さらに遺族を追い詰めるような行為。
病院は事実を隠蔽しようとしている、そう感じさせてしまう「冷たい仕打ち」が
ご両親を裁判にまで駆り立てていた。


あの取材から4年
今日、判決が出た。
医師は無罪。
適切に処置をしたとしても、命を取り留めることはできなかったという判断。
でも、判決はさらに付け加えた。
「医師のすべき基本的かつ初歩的な作業を怠ったという指摘には謙虚に耳を傾けなければならない」厳しい言葉が続いた。

医師も人間である。
医療界では「人はミスを犯す」ということを前提に、
そのミスを未然に防ぐにはどうしたらいいのか、という再発防止への取り組みが始まった

いくつか取材した病院ではミスの防止と同時に重要課題として、「遺族への誠実な対応」をあげていた。病院と遺族の信頼を構築するべきだと。

医師は無罪。長い裁判の間、この医師は何を感じてきたのだろう
いつか、話を聞いてみたいと思った。

 
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