テレビ東京の強みとは

最初に、テレビ東京の変わらない良さ、強みについて教えてください

伊藤看板となる番組・企画を持っているところです。「経済報道」「旅・グルメ」「アニメ」などの看板番組をたくさん持っています。一般視聴者が出演する番組も特徴の一つですね。誰も気付かなかった小さな穴を一生懸命広げて、しっかりイメージをつけている。また、それがブランドになっています。派手なパフォーマンスはないけど、信頼感をもって見てくれている視聴者が、ちゃんといますから。

大庭竹他局に比べて「テレビ東京らしい番組」と言える番組は山ほどあります。「NHK」と「民放」という分け方をした場合、「テレ東」っていうジャンルがひとつできるぐらい。でもそこは強みではありますが弱点でもあり、同じフィールドにお金を持って飛びこまれたら負ける可能性もありますよね。一朝一夕にまねできない制作をしている自負はありますが。

長友財力の面もあり、とにかく知恵を使わないといけないことから、長年オリジナリティや独創性のある企画がいろいろ出てきたのでしょうね。

伊藤身内では「竹槍部隊」と言っています。他局はバズーカ砲を持っていますけど(笑)。でも、大切なのは切っ先の鋭さ。言い方を変えると、この竹槍そのものが企画力です。たくさんの武器があっても、鋭い切っ先にはかなわない。どんな番組も、一本の竹槍に負けることがありますから。逆にバズーカ砲で木端微塵になることもありますけどね(笑)。

大庭竹気持ちが良いのは、他局が予算5,000万円かけて作った番組に、1,000万円で勝った時ですよね。竹槍が急所を突くような感覚です。

長友番組以外では会社の規模ですね。社員数約700人は、他局と違って、ほぼ全員の顔と名前がなんとなくわかる。だから社員同士がフランクに情報交換したり、相談できる風土があると思います。そこも良いところですよね。

伊藤私も家族的だと思います。一長一短はありますが、人数が少ないと仲間意識が芽生えますから。

大庭竹戦う相手がはっきりしているので、一体感は生まれやすいですね。

その「テレビ東京らしさ」やコンパクトな組織が、強みになっていると

伊藤でも苦労もありますよね。「テレビ東京らしさ」って、視聴者の方々が思っている印象はあるにせよ、体現するのは大変なことです。置き換えるなら、他局とは違うということなんでしょうけど。

長友個性的だとか、漠然としたイメージということですね。

大庭竹いろんなことをトータルで考えると、結果として「テレビ東京らしさ」につながったという部分もあると思います。意識の底で「テレ東らしさってこういう感じ」っていう感覚を持っている人が多いでしょう。あくまで奥底になんですが、その感覚があるから我々も仕事がやりやすい。他局さんがやったとか、やっていないとかは、あまり意識しませんから。

伊藤我々社員がリスペクトする番組に、『開運!なんでも鑑定団』や『出没!アド街ック天国』、『TVチャンピオン』などがありますが、人の家の蔵にあるものを鑑定して、ゴールデンタイムに放送しようと最初に考えた人はすごいですよ。

長友『開運!なんでも鑑定団』は、放送1,000回の長寿番組ですもんね。

伊藤『TVチャンピオン』も、出演者は一般の方です。うちの番組制作は、着眼点を変えて、オーソドックスの逆へ向かうんですよね。それがハマるかどうかは難しいことですが、あえてそこにチャレンジする遺伝子を持っています。

大庭竹僕も以前『TVチャンピオン』にかかわっていましたが、テレビ東京の番組って、ワンコンセプトでフォーマットを使えば誰でもつくれるというものはありません。演出をするディレクターの腕がものすごく問われるVTRが多い。ひとつの出来事をどう編集するか、出演者をどう描くかという部分で、ディレクターの腕がすごく重要になります。

長友確かに、ディレクターの腕は重要ですね。『TVチャンピオン』は海外ではいまだに大人気で、海外の現地放送局も同じような番組を制作したいって言うんです。でも、まねできないんです。そこにはテレビ東京の作り手の徹底的なこだわりがあるから。それは教えても、簡単に表現できるものではないのだと思います。

まねが難しいこだわりの部分はどのように伝承するのでしょうか?

大庭竹伊藤さんが『愛の貧乏脱出大作戦』を担当していた時も、そのこだわりで大変な思いをされたと聞いています。僕も『TVチャンピオン』の時は本当につらかった。撮ってきたもの全部を、上司にダメと言われたこともありましたから。

伊藤編集したものを1分だけ見て「全然わからない、やり直し」って言われましたよね。最初だけ見て「全然面白くない、何これ」って。

大庭竹僕も40分ぐらいのVTRを1分間見てもらって、「お前、これの何を面白いと思ってんの?」って言われて。僕としては「いや、ここから面白くなるんですけど」って反論するんですけど(笑)。でも、よく考えたら視聴者は、1分見て面白くなければチャンネル変えますよね。だから最初の1分が勝負だと。

伊藤工夫がないと、確かにつまらないですよね。例えばラーメンを撮るにも、何百通りの撮り方があるわけです。先輩からすればそれを考えたかってことなんです。『TVチャンピオン』なんて、言い方は悪いですが最後にはくだらない勝負するじゃないですか。「積み王」とか。

大庭竹冷静に見れば、サイコロ50個ぐらい積み上げる勝負ですからね。

伊藤そのちょっと変わった出演者に、視聴者が感情移入できるよう描くことが重要なんです。ものを積んでいるだけでも、勝者は感動してその場で泣くわけです。それを見てテレビの前で泣いてくれたら、テレビ東京の勝ちです。

長友その辺が、海外の放送局がやろうと思ってもまねできないところですね。そこには日本のお国柄というか、日本人の緻密さという部分もあるとは思うんです。でもその中でも際立っているのが、テレビ東京だと思いますね。お二人はそれを後輩たちに教え込んできたのですね。

大庭竹僕らは、厳しい先輩からそれを叩き込まれて、同じように後輩に「お前、これのどこが面白いの?」ということを言いながらVTRを見る(笑)。それを後輩が引き継いでくれていますね。

昔と今とを比べて、若い人たちの受け止め方に変化はありますか?

伊藤人それぞれですね。でもそうしているうちに、だんだん屈強になってきて、すごく面白い後輩がいっぱい出てきています。

大庭竹ダメ出しだけじゃなく、ちゃんと褒めるようにしています。「今回面白かったよ」というのは、はっきり言います。

長友お二人も褒めてもらったことはあるんですか?

伊藤ほとんど無いかな(笑)。

大庭竹年に1回ぐらいですかね。いろんな番組やっていたから、一年に40本から50本ぐらい作りますけど、たまに「今日の面白かったね」って、視聴率が出る前に言ってくれる人がいるんです。中にはちょっと面倒な先輩もいて、電話で「お前あれ、つなぎの順番が違うだろう」って。それを放送された後に言われても(笑)。

長友でもそれは、関心を持って見てくれている証拠ですよね。「あいつが作っているんだ」って。

伊藤そうですね。愛情を持ってちゃんと番組を見てくれるし、こいつが作った番組だという見方をしているから「こうした方が良いんじゃない」っていう指摘もされる。番組が好きなんでしょうね。そういう先輩は、ありがたいですよね。

大庭竹部署が変わったり、業務が変わったりすると、一般的には関係が薄くなると思いますが、うちは違うと思います。どこの部署へ行っても、声をかけられますから。

長友温かい人が多いんでしょうね。人が良いんですよ皆さん。それはすごく感じます。

伊藤そんなテレビ黄金期を知っている先輩たちの教育を、最後の方に受けている世代が我々なので、強引な部分は持っているんです。だから、若い人たちにももっとのびのびやってほしい。最近はコンプライアンスの重要性が増していることもあって、番組制作は昔に比べて難しくなっている部分はありますが。

テレビの未来を生み出すための挑戦

そのコンプライアンスへの対応も含め、今後テレビ東京が変わるべき部分はどこだと思いますか

大庭竹完全な私見ですが、今のようにテレビに対する制約が多い方が、とんでもないものが生まれると思います。幕府から制限を受けていた時代に歌舞伎ができたように。テレビ東京みたいな会社は、変わったことをやって突出するチャンスじゃないかと思っています。僕は今、制限をかける方の部署なんですけど、その間を縫って何か面白いことができないかと常に考えています。

伊藤竹槍を持っている我々には、チャンスですよね。良い意味で開き直れば良いんです。番組を作っている人間が「限界だ」と言ってしまうとおしまい。うちはもちろんですけど、各局のテレビマンにも泣きごとは言ってほしくないですね。

長友コンプライアンスが重要なのは当然ですが、汲々になってはいけないですよね。モラルは持ちつつも冒険はしていかないと。

伊藤「若者のテレビ離れ」を、チャンスとして捉えられれば何かを考えます。新しい企画や戦略、事業は、そこに生まれると思います。だから変えなきゃいけないのは、対応力。世の中は常に動いているのですから。特にネットの世界。ここ2~3年のスマートフォンの進化なんか、こんな風になるとは思わなかったでしょう。

長友SNSなんかもそうですよね。すごく変わりましたよね。

伊藤ただ我々は「こんな風になるとは思わなかった」では、済まされないんです。そういう意味で視聴ターゲットについても、各世代がテレビに望むことを、しっかり見極めなければなりません。今テレビが衰退しているのは、テレビが持つ力の上に、長い間、あぐらをかいちゃったからでしょうね。

長友新しいことが起きたり、環境が変わったり、いろんなツールが出てきたりするなかで、それに対して何かを「やってみよう」という勇気や冒険心は絶対必要ですよね。新しいチャレンジは大変だから、冒険心を持って楽しまないと、パワーは出てこないと思うんです。ただ、テレビ東京にはそういう考えを持った人がたくさんいるので、次の50年に向かうポテンシャルは、十分にあると思いますね。

新しいチャレンジのために、取り組むべきことはどんなことでしょう

伊藤立場を超えて、頑張った社員を、もっと褒めてあげることですね。頑張った人を、偉い人がちゃんと褒めて、背中を押してあげるような、チャンスの増やし方をしてあげたいですね。だから若手も自分からもっと踏み込んでコミュニケーションをとってほしい。相手に踏み込むことで自分も変われるし、頭角を現す若手ももっと出てくるのではないでしょうか。

長友若い世代は、デジタルメディアの分野とかで我々にない感性を持っていますから、これからが楽しみですよね。

大庭竹昔はある意味で破天荒(笑)な人が結構いましたが、そういう先輩は結果を残しています。だから、今の若い世代も、もっとはじけて、自分を出してほしいと思います。

伊藤萎縮しないでね。自分の個性はどんどんアピールすれば良いんです。そうしないといろんな番組ができない。番組の振り幅は、もっとあった方が良いですから。

長友若い世代から「これをやりたいんだ」っていう元気いっぱいの子たちが出てきて、次のエースに育ってほしいですよね。若者のエネルギーってすごく大事だと思うので、それを生かせてあげられる環境は、もっと必要なんでしょうね。

大庭竹そういう環境を作るのが、僕らの仕事という気はしますね。だから、われわれが「これで良いんでしょ」というような適当な仕事をしていたら駄目なんです。それじゃあ、若手も「これがやりたい」なんて考えないでしょうし。

伊藤番組づくりもそうですが、プロデューサーは環境づくりが仕事です。20代のADが、この番組とどうかかわって成長したのか、そこで何を経験したのかは、見ていてあげないといけないと思いますね。それは会社も同じ。やっぱり環境が大事なんだと思います。

これからのテレビ東京に込めた想い

最後に、これからのテレビ東京をどんな会社にしていきたいですか

大庭竹僕が思うのは、とにかくテレビを好きな人が、入りたいと思える会社にしたいということです。「あそこで一旗揚げるとカッコイイ」とか、「ヒット番組を作って、女性にもてたい」とか、動機は何でも良いんです。あの会社に入ったら、なんか面白いことができるんじゃないかと夢を持ってもらえる会社にしたいです。

伊藤僕自身は、やっぱり50年間不動だった視聴率最下位からの脱出です。我々の世代でできるとすれば、その違う景色を見ることなんじゃないかと思います。難しいこともありますが「勝てる」と思える時に、勝ち方を考えておいた方が良いと思う。それを野心として持っている会社になりたいですね。勝つ戦略を常に考え、「らしさ」から「勝つ」方向へ向かう。それが必要なんだと思います。最終的には「テレビ東京らしく勝つ」ということです。ちょっとカッコつけすぎましたか?(笑)。

長友さすが、カッコイイこと言う(笑)。強制的に同じ方向へ向かうのは、テレビ東京の風土にはなじまないと思います。現場同士がぶつかりながら、「最終的に、目指すのはそこだ」という意思を共有する。そういう風土をこれからもずっと持ち続けていたいです。