■監修者・中島洋の深読み
中島洋
=MM総研代表取締役所長
1947年生まれ。東京大学大学院(倫理学)修士修了。73年日本経済新聞社入社。産業部で24年にわたり、ハイテク分野、総合商社、企業経営問題などを担当。1988年から編集委員。この間、日経マグロウヒル社に出向し、日経コンピュータ、日経パソコンの創刊に参加。97年-02年慶応義塾大学教授(大学院政策・メディア研究科特別研究担当)。02年-04年、国際大学(グローコム)教授を務める。現在、MM総研所長、日経BP社編集委員、国際大学(グローコム)主幹研究員などを兼務。
「温泉」をコントロールする時代
神奈川県川崎市といっても、多摩川に沿ってさかのぼって田園都市線にぶつかる地域だがが、「有馬温泉」という天然温泉がある。起源は奈良時代までさかのぼる効能も顕な由緒ある名湯だったらしいが、大きな地震を機に温泉が止まってしまったらしい。それを惜しんで地元の人たちが掘削をした末、再度、温泉が復活したといういきさつらしい。
温泉について、最近は多くのことが分かってきたようだ。
竹下内閣の「ふるさと創生」の際に地元で温泉掘削を試みた時期には失敗の案件が山積みだったが、現在では、温泉を掘削する際の成功率は100%に近いものになっている。実際、天然温泉付きのマンションが都内でも販売されているし、天然温泉の「スーパー銭湯」が首都圏でも続々と営業を始めている。地質研究の進展によって、どこで、どの程度の深さまでパイプを掘り下げれば温泉に当たるか、正確に推定できるらしい。パイプの太さによって、毎分、何リットルの温泉が自噴するかも、予測できるのだそうだ。だから、温泉付きマンションなどが自信満々に売り出されるわけである。
筆者は、ニュービジネス協議会の「ニュービジネス大賞」の審査員だったことがあるが、その際に受賞した企業の一つに温泉付きマンションを企画、販売する工務店があった。その経営者が、東京大学の地質学者の研究を利用して確実に「温泉付きマンション」を販売できる、と断言したことを驚きとともに聞いた。
しかし、そうなると、当然ながら、地下にある温泉の湯量は無尽蔵なのか、ということが気にかかる。温泉付きマンションが増えてゆけば、噴出してくる湯量も増大する。スーパー銭湯も大量の湯量を消費するだろう。泉源は地層の間に蓄えられた湯であるとすれば、これは有限なのではないか。そういう疑問が湧く。現に、過去、地震で温泉が出なくなったこともあるくらいだから、予期せぬ現象で湯脈が絶えることも考えられるのではないか。
もちろん、火山脈の地下にある熱源が地下水を熱して温泉となるのであれば、地層を通じて水が供給される限り、これを熱して温泉が噴出するというならば、湯量の限界はない、ということも十分に考えられる。勉強不足でいずれとも判断できないが、「温泉」をコントロールできる時代になった、という新しい時代になっている、と思うのは実感である。
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