KIRIN~美の巨人たち~

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和田三造「南風」

今日の一枚は和田三造作『南風』。明治から昭和にかけて色彩に人生を捧げた画家の、原点ともいえる作品です。当時24歳だった和田は、この『南風』で日本初の官展である第一回文部省美術展覧会の最高賞を受賞しました。
 遮るもののない海の上に、強い陽射しが容赦なく降り注ぎます。舟の上には4人の男。赤い腰布1枚の若く逞しい男の、翳したシャツが南からの風にはためいています。その横に、まばゆい白のシャツの精悍な男が、キセルをくわえて行く先を睨んでいます。甲板には光と影の強いコントラスト、そこに何か話しかけるように身を乗り出す男。そして、力なく座り込んだチェックのシャツの男は、虚空を見つめています。
 じっと見ていると、奇妙な感覚に襲われる絵画です。舞台の上でそれぞれが見得を切っているようで、どことなく、わざとらしいのです。彼らは一体何者で、何故この舟に乗り合わせたのでしょうか?

1883年、兵庫に生まれた和田は、福岡の中学を中退後、画家を目指して上京。東京美術学校校長の黒田清輝の家で書生として雇われます。黒田は和田の才能に気づき、彼を美術学校に入学させました。卒業の翌年には、黒田主催の白馬会賞を受賞。そのさらに翌年に、文展のために今日の一枚を描くのです。
 『南風』は、和田が19歳の時に伊豆沖合で実際に経験した、舟の遭難を元に描かれています。しかし、そこに悲惨さはありません。鮮やかな色彩は、遭難している絶望感よりも、見るものに希望を印象づけます。

和田によると、嵐の時、同じ舟に乗り合わせていたのは、和田や年老いた船長など計5人。舟が転覆しそうになると、老船長は舟を軽くするために荷物を捨てるよう提案しました。和田も、大切な画材の入った荷物を捨てようとします。しかし老船長は、万が一助かれば若い和田の将来に申し訳ないと、和田の荷物は捨てなかったのです。和田はこの事件を境に、一層絵の道を励むようになります。そして、和田は、第一回文展の出品作に、この時の出来事を描くことにしたのです。実際は年老いていた船長を、逞しい体をした青年として描いています。あの夜の出来事をシンボリックにとらえ、まるで舞台で演じられている芝居のように、ドラマチックに構成しました。

その後パリへ留学した和田は、油絵よりもタペストリーなど、産業と結び付いた装飾芸術に心惹かれます。和田は、人々の生活を豊かにする装飾芸術こそが、当時の日本に欠けているものだと考えたのです。その後、日本初の色見本を作り、映画「地獄門」の色彩を指導してアカデミー賞を獲得するなど、日本美術の礎を築きました。その原点となったのが、今日の一枚『南風』だったのです。

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