KIRIN~美の巨人たち~

TVTOKYO:毎週土曜 夜10:00-10:30
BS JAPAN:毎週日曜 夜 7:30 - 8:00

バックナンバー

  • 一枚の絵
  • 取材風景
  • 美術館情報
  • 音楽情報

山下清「長岡の花火」

夏の夜空に打ち上がる大輪の花火。下に目をやると川面に反射した光が、静かに揺れています。川原には、何万ものひしめき合う群衆。その歓声までもが聞こえてきそうです。一体何人いるのでしょうか。数えようとして近づいたその時、驚くのです。これが貼り絵であったことに。しかも、画面奥に行く程色紙のピースはどんどん小さくなっていきます。指先が生み出す驚異の世界。今日の一枚は、放浪の画家と呼ばれた山下清の最高傑作『長岡の花火』です。

千葉県市川市にある八幡学園。昭和3年頃に子供たちの自立を目指して建てられた知的障害者の為の養護施設です。軽い知的障害と言語障害を持っていた山下清がこの学園に預けられたのは、12歳の時。ここで、清は貼り絵と出会いました。
指先の訓練と情操教育の一貫として取り入れられた貼り絵に、清はのめり込んでいきます。学園の日課だった掃除や庭仕事が得意でなく、一人でぼんやりしているのが何より好きな彼にとって、貼り絵は唯一のお友達。はじめは単純なものでしたが、作品は次第に緻密さを増していき、色紙の裏を使って濃淡を表すなど様々な工夫も凝らすようになりました。
少年の小さな指先から生み出される豊かな世界。清の作品を、洋画壇の巨匠・梅原龍三郎はこう絶賛しました。「その美の表現の烈しさ、純粋さはゴッホやアンリ・ルソーの水準に達している」と。孤独だった清の周囲が急にざわざわと騒ぎ始めました。ところが、その最中清は突然姿を消してしまうのです。

清の放浪の旅が始まりました。といっても、彼は絵を描くために放浪していたわけではありません。足の向くまま、気の向くまま。あちこちで食べ物や小銭などを恵んでもらいながら、日本中をただ旅して回ったのです。寝泊りするのは、たいてい駅舎。そんな暮らしが数ヶ月、時には3年近くに及ぶこともありました。決して楽な日々ではありませんが、そこには誰にも邪魔されない自由がありました。そしてふらりと学園に戻ってくると、驚異的ともいえる記憶力をもとに、その漂白の日々をまるでアルバムのように作品に留めていくのです。清が出会った情景を、清が感じたままに…。中でも、何より好きだったのが「花火」でした。

最高傑作『長岡の花火』は、山下清28歳の時の作品です。一年前に見た花火の光景でした。それにしても、精緻を極めたこの一枚が何故こんなにも美しいのか。そこには、山下清の恐るべき技巧が隠されていました。

PAGETOP

  • 解説
  • 今後の放送予定
  • バックナンバー
  • テーマ曲
  • よくあるご質問
  • ご意見・ご感想
  • TOPへ戻る
書籍販売情報 CD販売情報 ビデオ化待望の第二弾 豪華BOXセット発売中!