フェルメール「手紙を読む青衣の女」
今日の1枚は、ヨハネス・フェルメール作『手紙を読む青衣の女』。2010年に修復を施され、当時の輝きを取り戻したばかりの作品です。縦46cm、横39cmの小さな絵。タイトルにある通り、静けさが漂う部屋の中で、青い衣服をまとい少しふっくらとした女性が手紙を読んでいます。女性の背後に飾られているのは大きな地図。青色の生地が張られた椅子が二脚あり、テーブルの上には木箱と真珠の首飾りが置かれています。奥にあるのは、読み終えた手紙でしょうか。どこにでもありそうな日常の風景。その密やかな瞬間をそっと盗み見たような、不思議な感覚にさせられる作品です。
ヨハネス・フェルメールは、オランダ美術の黄金期を代表する巨匠です。しかし、資料が少ない上に自画像も無く、現存する作品もわずか30数枚だけしかありません。1632年にオランダ中部に位置する街デルフトに生まれて以来、亡くなるまでこの小さな街で暮らし続けたフェルメールは、デルフトの庶民の暮らしや何気ない生活のひとコマを描いたのです。その中で、手紙をモチーフにしたフェルメールの作品は、この絵を含めて世界に6点現存しています。なぜ画家は、手紙にこだわったのでしょうか?
フェルメールが生きた17世紀、オランダは他国に類を見ない海運技術で7つの海を制覇し、世界的な金融・商業の中心地として発展していました。そこで生まれたのが、近代的な郵便制度。フェルメールは、このニューメディアが人と人とのドラマを生むものであることを敏感に感じ取り、自分の作品に取り込んでいったのです。
今日の1枚も、相手から来た手紙を熱心に読みふける女性の姿が描かれています。とりわけ目を引くのは、修復によって甦った女性の服の鮮やかな青。“フェルメールブルー”と呼ばれる色です。この鮮やかな青の原材料は、天空の破片と呼ばれた「ラピスラズリ」。金と同等の価値を持つほど貴重で、普通の画家は限られた部分にしか使わない特別な顔料でした。しかし、画家はその高価な青を惜しみなく今日の1枚に使っています。フェルメールは手紙を題材にした作品を6枚描いていますが、実はその中で青い衣服を着た女性は彼女一人だけ。この女性に対して特別な思い入れがあるように感じられます。一体彼女は誰なのでしょうか?そして、気になる手紙の送り主や内容は?実はフェルメール、そのヒントを絵のそこかしこに散りばめているのです。





