フェルディナン・シュヴァル「シュヴァルの理想宮」

フランスの静かで穏やかな田舎町オートリーヴに、広さ100坪ほどの石を積み上げた摩訶不思議な建造物があります。その名は『シュヴァルの理想宮』。細かい石や貝殻で作られた「生命の泉」、高さ8mに達するエジプト風の三巨人の像、東南アジアの寺院を彷彿とさせる「自然の神殿」…様々な様式が混在し、城のようで寺院でもある、東洋的で西洋的でもある…そんな奇妙奇天烈な建築ですが、あのピカソもここを訪れ絶賛!素描を残したほどです。

手がけたのは、フェルディナン・シュヴァル。王でも建築家でもありません。郵便配達人です。今から100年前、たった一人でこんな建物を造り上げてしまったのです。普段無口でちょっと変わり者な彼は、43歳の時、配達中ある石につまずきます。奇妙な形をしたその石に、シュヴァルは何かを感じ、とりつかれてしまったのです。

それから33年という歳月をかけて、理想の宮殿を完成させました。偶然出合った、たったひとつの石が夢の始まりとなり、このような宮殿を生んだシュヴァル。建築やデザインを学んだことがないのに、いかにして一人で完成させたのでしょうか?そこまで情熱を注いだ理由は?
田舎町の郵便配達人の壮絶で美しい物語をひも解きます。