例えば、地方に出張していた人が、東京に戻って来ます。
「これからまた電車はしんどいや、タクシーにしようか」
と丸の内の方に回ります。
振り返れば、東京駅。
「ああ、帰ってきた」と思う人も多いでしょう。
新しい丸ビルで、ランチを楽しむとします。
窓の外には赤レンガの駅舎が見えます。
その姿に、旅情をかきたてられる人もいるでしょう。
今日の作品は、そう「東京駅」です。
住所、千代田区丸ノ内一丁目九番一号。
この地に東京駅が誕生したのは、90年前の1914年、大正3年の事です。
駅舎の全長は、320メートル。
煉瓦の建造物では日本最大。
向かって左側は、丸の内北口。
かつては、降車口専用の建物でした。
完成当時とは、装飾や様式が、違っていますが
ドーム型の天井は、当時の姿を伝えています。
駅舎に沿って歩いていくと、ステーションギャラリーの入口が見えて来ます。
駅の喧騒とは無縁の空間。
駅舎の中央に構えているのが、車寄せを持つ「正面玄関」。
皇室専用の出入口ですから、一般の人は立ち入り禁止です。
花崗岩と漆喰の白が、静謐さを保っています。
正面玄関の右手には、大正4年創業の「東京ステーションホテル」。
古き良き時代の香りを湛える日本を代表するクラシックホテルの一つ。
人気のお部屋は、こちら。
窓から見えるのは、南口の改札ホール。
一つの街並みのような東京駅。そのデザインを決定しているもの・・・。
それが赤レンガと花崗岩です。
丁寧に積み上げられた赤い化粧煉瓦。
腰回りや窓枠、壁面の化粧柱には、堅牢な花崗岩が使われています。
その赤と白のコントラストは、見る度に表情を変えます。
ある時は生真面目、ある時はあでやか。
厳めしい訳でもなく、悪戯に庶民的でもない。
まるで老いた哲学者のように、時に、渋い名優のように、この地に佇んで来たのです。
100年近い歳月を生き抜いて。
この東京駅を設計したのは、建築家の辰野金吾。
明治の建築王と呼ばれた男です。
彼の業績を物語る一枚の油絵があります。
手掛けた建築群が、一つ都市のように、凝縮して描かれています。
「辰野式」と呼ばれた煉瓦を基調とした独特の西洋建築で日本という国家を、近代化しようとした建築家でした。
辰野金吾が、生涯を賭けた最高傑作。それが、東京駅の駅舎なのです。
では、一緒に探ってみましょうか?
国家のテーラーと呼ばれた建築家が描いた、煉瓦の夢を・・・。
東京駅の美の秘密を。
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