≪出演者≫
・大林宣彦 監督 
・ 若杉小学校
・ 中海テレビ
(HI★JAC・日野川の源流と流域を守る会・米子高専)
・むさしのみたか市民テレビ局
・ 世田谷テレビ
≪ナレーション≫
・槇徳子(テレビ東京アナウンサー)

東京杉並区荻窪の若杉小学校では、授業の一環として
5年生の児童自らが番組を作っています。
取材VTRに解説を加えるニュース形式の生放送。
実はその数ヶ月前から「学校や地域の紹介をしていく」
という課題で、取材内容を話し合ってきました。
中でも子供達にとって一番難しかったのは、
技術的な問題ではなく「何を」伝えるか?
というテーマ探し
だったそうです。
自然食品のお店を紹介するチームの撮影日。
事前に作成しておいた、台本に基づきながら
撮影を進めます。
1月
班・役割決め
スタジオ作り
2月
放送内容を考える
下見をして内容を決定
カメラの使い方
インタビューの練習
カメラの練習
リハーサル
取材
3月
原稿作り
リハーサル
本番

先生の工夫で、後で編集する必要がないように、
コメントを読みながその映像と一緒に撮影していきます。

(パンを撮影しながら)
「それとハチミツを作ったおいしいパンも」
と横でナレーションを録音していきます。
そしていよいよ発表会、生放送の本番です。
(ON)「こんにちは、情報キャッチの高柳です。私達は教会通りにある・・・・」

お母さん方の感想は?
「思ったよりもちゃんとテレビらしく段取りも出来ていて、とてもびっくりしました。」
「準備の段階などを知ることで、テレビでニュースを見る時に、違う見方ができると思いますから、
いい経験させてもらっていると思います。」
指導している宮本先生は
「昔は調べもの中心でしたが、今は自分をどう表現していくか、自分の調べた事をどう人に伝えていくかということを中心に学習を進めています。今回の発表では自分の伝えたかったことが伝わったということが嬉しかったみたいですね」

4回目となる「メディアの嵐」では、一般の市民が番組を制作し、情報を発信している姿を紹介します。
タイトル『メディアの嵐 〜""見る"テレビからら"作る"テレビへ〜』


【テーマの設定】
大林監督コメント:
ままごと遊びというのは、大人の真似をすることによって普段は見えないものが見えてくる面白い遊びといえる。テレビ番組という大人の社会の中に存在するものを自分達が真似て遊んでみる、いわばテレビ番組ごっこをすることで、実はマスコミュニケーションという大きなシステムを通じて、そこには入りきらないような暮らしの中の、細やかな感情というものを学んでいる。またで上手に真似ようと思うけれど、カメラが揺れたり、照れてしまったりして失敗する。でも実はそういう事が面白い。
同時にこの大人の社会の「真似」をする時、大事なことは、「どう」ではなくて「何を」・・・つまりテーマを定めることだと思います。それが大きな社会に参加する力につながる。そういう意味で、マスコミュニケーションである公の場所、市民参加型の番組を作ろうとしているのは面白いことです。

人口およそ14万人の鳥取県米子市に本拠を置く、中海テレビ放送は、一般市民が番組を制作する、『パブリックアクセスチャンネル』の草分けとして有名です。
市民チャンネルを立ち上げたのは、92年11月。現在では年間100本程度の番組を放送しています。
中海テレビ放送では毎年、市民チャンネルで放送された番組の中から、「パブリックアクセス大賞」などを選出し、表彰しています。

「三地直装イワシマン」
市民チャンネルで企画賞や特別賞も受賞している人気番組、「三地直装イワシマン」。番組を制作しているのは米子のアトラクションサークル、HI☆JAC。コスチュームはもちろんすべてが手作り。HI☆JACの活動は、もともとイベントのヒーローショーから始まりましたが、今は番組づくりに生きがいを感じています。
(メンバー竹内さん)
「イワシマン」は地域密着のオリジナルヒーロー。そのほうがお客さんの同意・共感を得られやすい。そこにこだわりたい。
地元の評判を聞くと・・・
「地元で作っているので、知っている場所がでてきたりするし、街中でイマシマンの車をみかけると子供が喜んでいるので、よく見ているなあと感じる」
すべて手作りで制作している中で、テレビ番組ということでスタッフが気をつけている点は、
「子供が見ているので、悪い言葉は使わないようにしている」
「死ね!などということばは使わず、柔らかいことばを選んで使うようにしている。」

「日野川の源流と流域を守る会」浦木さん
喫茶サロンユーの店内に流れているのはマスター浦木さんの制作した番組。浦木さんは、鳥取県西部を流れる日野川の環境を守る「日野川の源流と流域を守る会」のメンバーです。
浦木さん:
「活字や写真では表現できない部分を伝えたかったので番組を作りました」
日野川の源流から河口まで、77キロを3日間で歩き、その記録を番組にして市民チャンネルで放送しました。日野川を撮り始めてから、2年間に3回の放送をしています。その地道な活動が、昨年の米子市の文化奨励賞を受賞しました。
浦木さん:
「アマチュアには時間や機材などの面でさまざまな制約があるので、気張らず、自分の身近なものから撮り、少しずつ行動範囲を広げていくのがいいと思います。そこに自分の考えを入れていけばいいのではないでしょうか?
番組内ナレーション
「日野川への千のメッセージを、万の人に届けたい」

米子高専の「いきいき技術発信」
理数系の甲子園と呼ばれている、全国高等専門学校ロボットコンテストの上位入賞校、
米子高等専門学校は中海テレビの市民チャンネルの常連でもあります。
理科離れが話題になっている子供たちに、米子高専では公開授業を行っています。放送部はそれを市民に伝えるために「発信いきいき技術」という番組を制作しています。
半年間の作業の末、第25回の完成試写会にこぎつけました。見た先輩の意見は「作った人たちの感想もあったほうがよかったのではないか?」「何を聞くか?を先に考えておいたほうがよい」などなかなか厳しい意見も聞かれたようです。
指導している酒井先生は「番組作りはコツコツとした地道な作業が必要なので、普段の授業などでは経験できないことが学べるのではないか」
部員達がテープを中海テレビに届け、その場で放送日がきまりました。
そして中海テレビでは・・・・
中海テレビの上田さん「納品されたテープに対して手を加えない、というのが原則ですが、放送する以上、暴力的・倫理的などの問題があっては困るので全ての番組をチェックします」
1.著作権や肖像権の侵害など、個人のプライバシーの問題。
2.直接的な金銭に絡む宣伝。
の2点が大きなチェックポイント。市民が番組を作り、テレビ局が、問題が起こらないよう、それをサポートしています。その内容や目的は違っても自分たちが情報を発信することで、テレビの新たな可能性が広がりつつあるといえます。

【テーマを伝えるためには】
大林監督のコメント:
ここに参加しているのは、アマチュアである前にまず市民です。それだけに、むしろ一人の人間として、面白い、楽しいと思うような伝えたいこと、つまり『番組のテーマ』が非常にはっきりしてくるのですよね。
「三地直装イワシマン」についても、お子さんの反応からみても、ああいうところから、郷土愛というものが生まれてくると感じます。単に、風景の美しさをきれいな技術で伝える、ということを越えたふるさとへの愛。これはふるさと人としてのひとつのメッセージですね。
さらには自分達の大好きなロボットの工業を、伝えていこうという高校生の熱意。やはり好きなものを自由に表現できるということが素晴しい。
ただしこの自由も、やはり伝えるメディアは公共のものであるからせめぎ合いはあるけれど、こういう市民のために、門戸を開いたということが素晴しいわけで、そこでの問題は解決できると思う。
つまりそれは公であろうと個人であろうと表現者にとって大事なものは常識・・・社会人、人間としてのチャーミングな常識。好きなこと、誇りに思うことを、伝えようとする気持ち。これは表現者の基本です
つまりテレビがどんどん人間に近づいて来たと言えるのではないでしょうか。

東京の武蔵野市と三鷹市で、6万5千世帯が視聴できる、『むさしのみたかケーブルテレビ』では、2000年から市民グループ『NPO法人むさしのみたか市民テレビ局』が制作した30分の番組を毎月1本放送しています。ケーブルテレビ局からの運営費は制作費、事務所の家賃、機材代、交通費などに当てられていますが、60人ほどのメンバーは無給ボランティア。その多くはリタイヤした人や主婦です。
市民テレビ局では、今年1月から「町を考える」というコーナーで、町に関係するテーマを掘り下げた番組を制作していこうとしています。
2月はゴミ問題。見た主婦の反応は「他の県ではなく、自分の地域の事だと、切実に感じます。」
4月放送予定の番組のテーマは交通安全について。
その中で、「自転車」に絞り、約13分の番組を制作することに。
撮影で気をつけることは・・・
リーダーの水野さん
「なかには、異常な乗り方をしている人もいるのでプライバシーに配慮して、撮影しています」
取材を重ねているある日、月一回市民テレビで開かれる企画会議で、制作途中の4月番組について、「町を考える、というのがテーマですから、自転車の乗り方を提案することがどうリンクするのでしょうか。」という厳しい意見がだされました。
急遽、素材を見直し街の問題であることを強調するためも再検討
追加も撮影も終えたところでパソコンによる編集を行います。
最初の会合から2月半、他のメンバーも加わって完成試写会。危ない乗り方の実例を見せた後、市内で起こる自転車事故の件数や発生地域を紹介して街の問題であることを提起。最後は安全な乗り方を提案しました。
見たメンバーからは「問題点をうまく抽出していると思う。ただ表現から言うと、もっとインパクトがあったのではないか。」などの意見が。
制作した水野さんとしては「見た人に、なんらかの考えるきっかけは、与えられたのかなとは思っています。」
開局以来、市民テレビをサポートしてきたケーブル局の佐々木さんは
「制作は安定してきましたが、市民の目線ならでは、の強いメッセージ性や独自性が中に込められてくるともっと特徴がでてくるのではないでしょうか。」
市民テレビ理事長の川井さんは
「最初はカメラワークとか編集作業などの技術的なことが難しいと思っていた。実際、易しいわけではないが、そういうことよりもどういう番組を作るべきか、この街に暮らす人達にどういう番組を提供したらいいのか。この方が実は難しい。今後の課題です。」
と同じ点を指摘しています。

今やパソコンでテレビ番組が見られる時代。
「世田谷テレビ」は木曜日、夜の7時30分からレギュラーで生放送中です。世田谷区の話題を中心に、告知・飛び入り大歓迎という極めて自由なテレビ番組です。
仕掛け人の中山さんは、唯一、番組制作プロダクションにいた経験者です。
中山さん:
昔は表現をするのに、自主映画などしかなかったが、今はインターネットとパソコンとカメラがあれば発信者になれることを証明したかった
放送当日。昼に出演交渉をした今日のゲスト、
居酒屋「味とめ」の女将さんも本番30分前に駆けつけ、
番組スタッフの司会者と、内容の打ち合わせを行います。

司会者:
「質問は、どんなお客さんがくるのか、とか世田谷の今と昔とか・」
女将さん:
「え?ちょっと待ってよ・・・・。」
そして
「あ、サンダル?」「え?足うつるの?」
などとのやりとりがありつついよいよ生放送開始。
(ON)
「お店は10時から夜12時30分くらいまで営業しています。
こんな時代ですから、時間もメニューもちょっとひと工夫。大手のチェーンではない部分で勝負しないとね」
スタジオの外に置かれたモニターは電車からも見えます。 インターネット放送は地球の裏側でも視聴することが可能ですが、彼らはあくまで地元の情報にこだわります。
中山さん「マスコミはあまりに早くに情報をくれるのでそこに気をとられてしまう。でも、遠くの国や遠くの町の事件より、そこの角のおばさんが・・という話のほうが自分たちの生活には大事なのではないか」
初めてテレビを発信する側に立ったスタッフはどう感じているのでしょう。
佐々木さん「発信者の気持ちがわかるようになった、テレビの見方が変わった」
辻村さん「誰が見ているかわからない、反応がわからない怖さと責任の重さを感じるようになった」
中山さん:
みんな情報の受け手に慣れてしまっていて「テレビが言うことは本当だ」とか「テレビに出ているから有名だ」という価値観でいることに気づいていない。自分で発信することで初めて気づくのではないか
たとえば誰かがいいと言っているとそれに同調してしまいがちで、自分では違うと思っていても言えないでいる。テレビで言っている意見と違っていても自分の意見を言える勇気が必要だと思う。

大林監督:
それぞれに異なる考えや幸福感を持っている人間同志がいかにお互いを理解しあって、その違いを尊み合うかというところで、市民社会の幸福が醸造される。
その為の手段がテレビというマスコミュニケーションであった訳ですが、どうしても一方通行になる。『最大公約数』的なひとつの社会のあり方、正義をドーンと伝えられたもので、私達は社会を理解しているつもりだったけれども、そんな容易なものなのか?もっと一人一人の声の中からこそ、見えてくるものが本当の社会じゃないかという、私達の渇望があり、それを手繰り寄せる力として、メディアを使うという試みにつながっているのではないか。
様々な考え方を持っている人間が、どうすれば考えが伝わるのかということを、考えることによって、テーマから技術が生まれる。
つまりここでの技術は『最大公約数の文法』ではなく、むしろ『会話上の礼儀』。お互いが学ぶことによって、メディアをリテラシーするだけではなくて、人間同志が判り合える力を知るのではないか。
そういう意味では、パーソナルな言葉が、そのまま世界の全ての個人に届いていくという時代が来た。
私はこれからは大きな正義を伝えるのではなくて、一人一人のむしろ小義を伝えるメディアとして、テレビやパソコンが使われると思う。
幸せを手繰り寄せることのできる21世紀の道具を、私達がいかに上手に使うか。楽しくて、素晴しくて、そしてまた責任の重い、表現のしがいのある時代が、今近づいてきているのではないだろうかと思います。

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