報道倫理

報道倫理ガイドライン

報道倫理ガイドラインは、テレビ東京の報道番組に携わる社員・スタッフが質の高い報道活動を展開するための指針です。 1994年に「報道倫理綱領」を策定しました。同時に「綱領」を実践するための手引きとしてガイドブックを作成し、これまで数回の改訂をしましたが、これまでは社内資料にとどめていました。 ガイドブックの大幅見直しを機に再構成して「ガイドライン」に一本化しましたが、私たちの基本姿勢を一般の方々にご理解いただくために、ホームページでご覧いただけるようにしました。本文

報道取材・報道規範

社員・スタッフが常時携帯している小冊子の内容です。報道倫理ガイドラインに先立って2001年12月に公表しました。ガイドラインの骨子をコンパクトにまとめたものといえます。用語など表現が異なる部分がありますが、考え方は同じです。本文


テレビ東京・報道倫理ガイドライン

2002年8月

テレビ東京報道局
(2014年4月改定)

第1章 基本姿勢

報道の使命は、真実を広く伝え、市民の知る権利に奉仕し、人権を尊重する自由で平和な社会の実現に貢献することである。

報道の自由は、この使命のために市民からわれわれに委ねられたものであり、あらゆる権力、あらゆる圧力から独立した自主的・自立的なものである。

報道に携わる者は、放送ジャーナリストとしての誇りと責務を自覚するとともに、人権を尊重し、品位と節度をもって、正確・公正・客観的な報道にあたる。

常に積極的な取材・報道を行うとともに、厳しい批判精神と市民としての良識を持ち、取材される側の痛み・悩みに心を配ることも忘れない。

1. 知る権利への奉仕

(1) 市民の知る権利に奉仕し、真実を追求する。言論・表現の自由を妨害するあらゆる圧力・干渉は排除する

(2) 情報社会における判断材料を市民に提供する。特定の個人、団体、企業の宣伝や利益、あるいは誹謗・中傷を目的としない

2. 客観性の確保

(1) 多面的な取材で、事実を正しく伝える。事実の意図的な選択、偏見、不必要な強調や省略などによって事実を歪曲しない。また、誤解を招く断定的な表現をしない

(2) 不偏不党を貫く。さまざまな見解を多面的に提示し、論点を公平に取り扱う。事実と意見を明確に区別し、解説・論評は多角的に行う

(3) 報道内容の真実性を確保するため、実名報道を原則とする。情報の根拠はできるだけ明示する。匿名報道を条件とした取材は、限定的でなければならない

(4) 取材源は厳格に秘匿する。報道目的以外では、取材で得た情報や番組素材などを使用しない

(5) 事実でないことをあたかも事実のように演出する「やらせ」や行き過ぎた演出はしない。報道における表現は、品位と節度を保つ

(6) 取材またはその他の報道に関連する活動により取得した情報(番組素材含む)に関して、不公正な使用・利用は行わない。またその疑いを招きかねない行為は行わない

(7) 金融商品取引法のインサイダー取引規制を順守するのはもちろん、インサイダー取引の疑いを招きかねない行為は行わない

(8) 取材・報道にあたって、金銭の授受があってはならない。また、便宜を与えたり受けてはならない

3. 人権の尊重

(1) 個人の名誉、プライバシー、肖像権を最大限尊重する。報道目的で得た個人情報は厳格に管理し、報道目的外に使用したり外部に漏らしたりしない

(2) 人種、民族、性別、職業、境遇、信条、障害、疾病、性的指向、社会的経済的地位などによって差別しない。信教の自由を尊重する

(3) 実名報道を原則とするが、人権を尊重するうえで必要と判断した場合は匿名にすることがある

(4) 被害者・被害関係者の心情に配慮する。集団的過熱取材や強引な取材によって、被害者やその家族、容疑者の家族などに威圧感を与えない。小中学生や幼児については特段の配慮をする

4. 社会的影響力の自覚

(1) 取材にあたっては、品位を保ち、時と場所を心得た服装と言葉使いに心がける

(2) 誤報や訂正すべき情報は、速やかに取り消し、訂正する

(3) 視聴者からの問い合わせには、迅速かつ丁寧に対応する

5. その他

(1) 取材にあたっては危険を防止し、生命の安全を優先する

(2) 記者クラブなど取材現場では、日本新聞協会が認めている協定を除いて、みだりに協定を締結しない

第2章 行動指針

1. 知る権利への奉仕

知る権利に奉仕し、真実を追求する。言論・表現の自由を妨害するするあらゆる圧力・干渉は排除する

<知る権利への奉仕はテレビ局の責務>

市民の「知る権利」は自由と民主主義を守る上で最も重要な権利である。テレビ報道は、この「知る権利」に応えるものでなければならない。そのためには、官庁や企業・団体の発表を待つだけでなく、常に情報公開を迫り、時には公権力と対峙して真実を追求しなければならない。

<言論・表現の自由を守る>

あらゆる圧力・妨害・干渉を排除して言論・表現の自由を守る。報道の自由は市民から我々に委ねられたものであり、あらゆる圧力から独立した自主的・自立的なものでなければならない。公権力や組織・団体の検閲行為は断固排除する。取材対象者から報道内容の事前チェックを受けるなどの行為は禁止する。

<市民社会の監視機能を果たす>

報道にあたっては常に批判精神を持ち、犯罪行為はもちろん、政治家・官僚・企業などの腐敗・不正があれば積極的に暴露し、市民社会の監視機能を果たさなければならない。公権力の乱用に対峙し権力のチェック機能を果たすためにも、あらゆる取材対象との癒着を避け、適切な緊張関係を保ちながら取材・報道する。

情報社会における判断材料を市民に提供する。特定の個人、団体、企業の宣伝や利益、あるいは誹謗・中傷を目的としない

<情報社会における判断材料の提供>

メディアの多様化や情報公開法の施行などで報道を取り巻く環境は大きく変化している。種々の情報発信が可能となり、情報が氾濫している。こうした時代だからこそ、報道機関の独自の取材に基づく確かな情報がますます求められている。報道では事実を常に正確、公正、かつ客観的に伝え、解説や論評は多角的に行い、情報社会における的確な判断の材料を提供する。

<特定の個人・団体・企業の宣伝などを目的としない>

報道にあたっては、宣伝や不当な目的に利用されないよう注意しなければならない。政府や政党、あらゆる団体や企業の広報機関であってはならない。特に、企業活動を報道する際には、情報の価値やニュース性をよく吟味する必要がある。また報道は、 特定の個人・団体・企業の誹謗・中傷をその目的としてはならない。

2. 客観性の確保

多面的な取材で事実を正しく伝える。事実の意図的な選択、偏見、不必要な強調や省略などによって事実を歪曲しない。また、誤解を招く断定的な表現をしない

<多面的な取材で事実を正しく>

真実に肉薄するひたむきな姿勢を崩さず、可能な限り多面的に取材する。情報が一方に偏ったり視聴者に誤解を与えたりすることを避けるため、常に複数の情報源から取材する習慣をつける。相反する利害関係者がいる事件で、事実を正確につかまないまま、不用意や取材不足から一方の立場だけを報道してしまうというケースがありがちである。「ていねいに取材さえしていれば」と後で悔やむことのないよう、手間を惜しまずに取材する姿勢を身につける。事実の意図的な選択、偏見、不必要な強調や省略などによって事実を歪曲したり、誤解を招く断定的な表現をしない。発表に依拠した報道ではなく、多角的に取材、検証し、公正な報道に努める。

不偏不党を貫く。さまざまな見解を多面的に提示し、論点を公平に取り扱う。事実と意見を明確に区別し、解説・論評は多角的に行う。

<不偏不党、公正・中立を貫く>

政治的に対立がある問題を扱う際には、特定の政党や政治家に偏ることなく、可能な限り多様な意見や反応を伝え、一方的な扱いにならないよう留意する。報道内容は常に公正・中立であるよう留意し、ニュースを客観的に伝える努力を怠ってはならない。

報道内容を取捨選択する作業には、的確なニュース感覚と判断力を必要とする。なんらかの判断を伴う限り、どこからみても客観的という選択は極めて難しい。「問題をできるだけ多面的に捉え、視聴者が自分で判断するのに十分な材料を提供できているかどうか」が、公正さをはかる現実的な目安といえる。公正な報道姿勢はこうした日々の積み重ねを通じ、時間をかけて評価を受けるものである。

<解説や論評は多角的に行う>

解説や論評は、様々な立場の議論を視聴者に示し、判断材料を提供するためのものだ。特に意見の対立している問題については、様々な考え方を示すよう心がける。一つの番組や一つのコーナーで多様な論点を公平に扱うことが望ましいが、番組の放送時間には制約があり、一つの論点に絞って報道せざるを得ないこともある。その場合は一定の期間内に多様な論点を紹介できるよう工夫する。

<出演者の選択や発言に留意する>

報道番組では、司会者やゲストの発言が番組の論調を大きく左右する点に十分留意しゲストの人選などにおいても論調が偏らないように配慮する。

[キャスター(司会者)]

・ ニュースキャスターの発言内容は、局が責任を持つ。

・ さまざまな意見がある問題について言及する際は、プロデューサー・デスクの責任のもとで内容を検討し合意を得る。

[ゲスト]

・ 局はゲストを選択する編集権を持ち、その選択に関し責任を負う。

・ 多様な考え方があるテーマを議論する場合、ゲストの選択には公平を保つよう留意する。

・ 発言に対する責任は原則として本人にあるが、明らかな誤りや差別的な表現があった場合は、局が責任を持って訂正する。

<選挙報道に関しては、特に公正・公平性に留意する>

報道の自由は、選挙報道でも保障されている。しかし、報道の際は選挙結果が市民生活に重大な影響を与えるものであることを常に念頭に置き、公正・公平性に特に留意する。候補者や政党などを紹介する際は可能な限り公平に扱う。報道の目的は有権者に正確な判断材料を提供するものであり、特定の候補者や政党の利益を目的としてはならない。

<世論調査の取り扱いは慎重に>

世論調査は世論の動向をつかむ上で有効な手段である。ただし、常に数値の信頼性や確実性を確保する必要がある。調査結果を公表する際は調査方法などを必ず提示しなければならない。

特に選挙に関わる世論調査では、その結果が有権者の投票行動に影響を与えるだけに、公表する際は慎重を期す。

(1) 選挙公示(告示)後、候補者の支持率の具体的な数字は公表しない。公示前であっても数字を報道する際は選挙への影響に配慮し慎重に扱う。

(2) 出口調査は信頼性を保つため厳密に実施し、データの管理を徹底する。投票の締め切り前のデータの報道、漏洩は厳禁する。

(3) 公職選挙法が禁じる人気投票に該当するような調査は行わない。

報道内容の真実性を確保するため、実名報道を原則とする。情報の根拠をできるだけ明示する。匿名報道を条件とした取材は、限定的でなければならない

<実名報道を原則とする>

主語やニュースの主体を明確にしなければ個別具体的な事実は伝わらず、その客観性や真実性にも疑いが生じかねない。事実を特定して視聴者に伝えるため、人物については犯罪報道を含め実名報道を原則とする。企業名や団体名などについても明示する。

<情報の根拠を明示する>

情報の発信源を明示することは、報道内容の真実性を確保し、客観的な報道姿勢を貫く上で極めて重要である。いわゆる「オフレコ」取材や情報源を隠すことを条件にした取材は極力避けなければならない。真実により迫ろうとすれば、非公式な発言やオフレコを条件とした情報に接する機会が多くなるが、その場合でも情報の発信源については「政府首脳は」「捜査当局によると」などの表現で視聴者に示し、情報の客観性の確保に努める。

取材源は厳格に秘匿する。報道目的以外では、取材で得た情報や番組素材などを使用しない

<取材源の秘匿>

取材源を厳格に秘匿することは、自由な取材・報道活動を可能にする鉄則である。そのためにも、取材メモ、録音テープ、取材・放送用ビデオテープなどは厳格に管理し、報道目的以外に使用したり、公権力を含む第三者に安易に提示してはならない。

事実でないことをあたかも事実のように演出する「やらせ」や行き過ぎた演出はしない。報道における表現は、節度と品位を保つ

<映像表現に細心の注意>

映像による報道は視聴者の目と耳に直接働きかけるため、活字などに比べその訴求力は大きい。ニュース映像は、ニュースの本質を伝え、理解を助けるために必要不可欠なものだが、取材・編集の方法次第で事実からかけ離れたものになる危険性をはらんでいることを忘れてはならない。一方に偏った事実が映像あるいは音声の一部として放送されると、それが全体像として視聴者に受け取られる懸念が多分にあるので、誤解を招かないように注意しなければならない。送り手が伝えようとする意図を超えたインパクトを視聴者に与えることや、思いもよらず人の人格や権利を傷つけてしまうことが有り得る。この点を十分認識し、細心の注意を払って制作に当たらなければならない。

<「やらせ」はしてはならない>

事実をねじまげたいわゆる「やらせ」を行ってはならない。報道では事実をありのままに伝えることが大原則だが、「わかりやすい表現」のため演出方法を工夫することも必要である。しかし、過度の演出によって事実から離れ、虚偽の報道を行なうことは絶対に避けなければならない。

<サブリミナル的手法は用いない>

視聴者が通常の視聴では感知できない映像や音声を挿入することにより、何らかのメッセージを伝えようとするサブリミナル的手法は、潜在意識下に訴えようとする意図のあるなしにかかわらず、用いてはならない。また、細かく点滅する映像や急激に変化する映像手法などについては、視聴者の身体への影響に十分配慮する。

<再現は事実に基づいて>

航空機事故や密室での事件などを伝える際に、演出上の手法として「再現」を使うことはある。この場合は、客観的なデータや当事者の証言など事実に基づいた内容に限る。

事実の確認ができていない事項について、憶測などを交えた「再現」は行わない。内容上、「再現」が必要な場合は、その画面に再現であることを明示する。

<モザイクの乱用は避ける>

映像、特にニュース映像は真実を伝えるものであるから、ボカシやモザイク処理は、映像の真実性を阻害するものとして乱用は避けるべきである。ただし、プライバシー尊重や人権擁護、あるいは経済的不利益を与えないようにするなどの理由から「映像上の匿名措置」であるボカシ、モザイク処理を施すこともある。 匿名を条件としたインタビュー取材などでは安易にモザイクに頼らず、顔を隠すなど撮影方法を工夫することも大切である。

<品位を損なわないように>

テレビ画面の向こう側には子供を含む家族がいることを常に意識する。性や風俗に関する報道は品位を損なわないようにし、興味本位にならないように注意する。

<陰惨な場面の表現は慎重に>

事実の報道であっても、陰惨な場面や残虐な暴力行為をことさら強調することは避けなければならない。こうした場面を取り上げる限度については、事件の性格や報道の及ぼす影響、当事者や家族の人権・感情などを考慮して、慎重に検討する。

<素材の転用は点検が必要>

ニュース素材は一定の条件や状況の下で撮影される。このため、素材を後日、別の番組やニュースで使用する場合は十分なチェックが欠かせない。その後の事実や背後関係に変化がないかどうかなど慎重に見極める必要がある。とりわけ、ニュースの直接的な映像素材が手当てできない場合に使う「資料映像」は誤用を招きやすいので点検を怠らない。

取材等で取得した情報を不公正に使用・利用しない。インサイダー取引規制を順守するのはもちろん、インサイダー取引の疑いを招きかねない行為は行わない

<インサイダー取引やその疑いを招きかねない行為は行わない>

未公表の内部重要情報に基づいて株式などの売買をすることを、「インサイダー取引」と呼び、金融商品取引法で刑事罰をもって禁じられている。記者・ディレクター等は、取材過程で企業の合併・提携や新株の発行、新製品・新技術の開発や経営状態の著しい悪化など、一般の人が接することができない情報を入手することができる。こうした重要情報の公表が完結する(当該企業が2以上の報道機関に情報を伝達してから12時間経過した場合等)までの間に重要情報を基に株式などの取引を行えば、「インサイダー取引」となる。規制の対象となるのは、直接情報に接した記者・ディレクター等だけでなく、ニュース番組及び報道番組関係者全員である。また、未公表の重要情報を第三者に漏らすなど、インサイダー取引の疑いを招きかねない行為もしてはならない。

インサイダー取引の疑いを招かないよう、報道局の社員全員に対して、以下のルールを実施する。なお詳細については報道マニュアルにおいて規定する。

(1) 金融商品取引法で定める、特定有価証券等の取引などを原則禁止とする

(2) その他の金融商品の取引については、その取引内容等を報道局長に届け出る

テレビ東京報道局は経済報道に主眼を置いている。経済報道の内容は、株式などの相場に大きな影響を与えることがある。株式などの有価証券などへの投資は、個人の資産運用の重要な手段のひとつではあるが、報道内容が及ぼす影響の大きさを考えると、報道の公正さに疑いを持たれないようにすることは、テレビ東京報道局員として最も留意すべき点である。

これらの観点から、社員の財産権も考慮しつつ、より高い報道倫理による規制を設け、自らを律することとした(改定:2014年4月1日)。

取材・報道にあたって、金銭の授受があってはならない。また、便宜を与えたり受けてはならない

<現金は受け取らない>

取材先や番組発注先などからの誘惑を厳しく退ける姿勢を保つ。現金や現金に代わる商品券、高価な贈り物などは、車代などその名目の如何にかかわらず一切受け取らない。

取材先とは、常識の範囲で節度を持ってつきあう。報道対象企業と私的な利害関係を持ってはならない。会社の許可を得ずに招待旅行は受けない。取材の都合上、招待旅行などに参加する必要がある場合は上司の許可を得たうえで、交通費などの費用はきちんと負担する。

<取材謝礼は原則として支払わない>

情報提供の動機に疑いを生むことになりかねないので、当事者・ 関係者など取材対象者に謝礼金は原則として支払わない。記念品などの品物を贈る場合も、常識の範囲にとどめる。ただし、学者・ジャーナリスト・評論家などに専門分野に関する見解を聞いたり資料提供を受けた場合、妥当な謝礼を支払うことはある。

<犯罪者や反社会的集団には、金品を絶対に提供しない>

違法行為を助長することのないよう取材方法に十分な注意を払い、いかなる名目であれ犯罪者や反社会的集団のメンバーに金品は一切提供しない。

3. 人権の尊重

個人の名誉、プライバシー、肖像権を最大限尊重する。報道目的で得た個人情報は厳格に管理し、報道目的外に使用したり外部に漏らしたりしない

<個人の名誉、プライバシー、肖像権の尊重>

報道には、人権を尊重する自由で平和な社会の実現に貢献する使命がある。真実に肉薄する果敢で積極的な取材姿勢を崩さず、個人の名誉やプライバシーを最大限尊重して報道する。

(1) 名誉の尊重

報道に携わる者は、メディアによる名誉の棄損が当事者や家族・組織の運命を大きく変えるものであることを自覚しなければならない。事実誤認や不正確な報道でいったん名誉を傷つければ、それを回復するのは極めて難しいことを肝に銘じるべきである。

(2) プライバシーの尊重

プライバシー権は「私生活をみだりに公表されない法的保証ないし権利」と解釈されている。報道の対象となる個人について記述、説明する場合は伝えるべき範囲と表現が適切かどうか十分考慮し、取材上知り得た個人情報は慎重に取り扱う。家族や関係者についても同様である。ただし、政治家・公務員などの公人や著名で社会的影響力のある人物のプライバシーは限定される。その内容に公共性・公益性が認められるかどうかを吟味して報道する。

(3) 肖像権の尊重

肖像権は一般的に「個人の肖像をみだりに撮影・公表されない権利」とされている。

人の肖像にはプライバシーにかかわる人格的な権利と、個人の財産とみなされる経済的な権利(芸能人の場合など)が認められている。人物を撮影する場合は、その肖像権に十分配慮しなければならない。また、建築物などの撮影や放送についても居住者、所有者のプライバシーや財産的価値に配慮する。

<取材で知り得た個人情報は厳格に管理する>

取材で知り得た個人情報には、取材対象者の名誉に関わるもの、不利益につながるものも少なくない。個人情報は、事実の報道に必要不可欠なものを選択して報道すべきである。また、取材者は個人情報を厳格に管理し、報道目的以外に使ったり外部に漏らしてはならない。

人種、民族、性別、職業、境遇、信条、障害、疾病、性的指向、社会的経済的地位などによって、差別しない。信教の自由を尊重する

<差別をなくすことは責務である>

差別をしないことは報道機関にとって最低限の規範であり、差別をなくしていくことがジャーナリズムの責務である。ひとことで差別といっても、その実態は多種多様であり、人々の価値観の多様化や時代の移り変わりに伴って、その内容も変化する。従って杓子定規なマニュアルでは的確な対応はできない。何よりもまず、「何が差別にあたるか」を敏感に意識する姿勢が大切である。差別する意図がなくても結果的に差別につながるケースが現実には起きやすい。こうした事態を避けるためにも、常に差別に対する鋭い認識、感度を持つことが大切である。

<全体の文脈で点検>

ある言葉によって傷つけられたと感じる人がいる以上、いわゆる「差別語」の使用は避けなければならい。またいわゆる「差別語」を使わなくても、差別はあり得る。従って、全体の文脈の中で差別していないか点検すべきである。映像表現にも同様の配慮が必要である。

<宗教に関する報道では信教の自由を尊重>

宗教を扱う場合には、憲法20条で保障されている信教の自由を最大限尊重する。ただし、倫理上・刑法上の問題があり、反社会的と判断されるようなケースでは、その観点から報道することを妨げるものではない。

[参考]

民放連放送基準7章

* 信教の自由及び各宗派の立場を尊重し、他宗他派を中傷・誹謗する言動は取り扱わない。

* 宗教の儀式を取り扱う場合、またその形式を用いる場合は、尊厳を傷つけないように注意する。

* 宗教を取り上げる際は、客観的事実を無視したり、科学を否定する内容にならないよう留意する。

* 特定宗教のための寄付の募集などは取り扱わない。

実名での報道を原則とするが、人権を尊重する上で必要と判断した場合は匿名にすることがある

<被害者の人権に配慮する>

事件・事故・災害の被害者は実名で報道することが原則である。ただし、被害者とその家族の人権や被害感情、プライバシーに十分配慮し、場合によっては匿名とするなどの措置をとる。公共性・公益性と、被害感情やプライバシー尊重のバランスに常に留意しなければならない。

・ 性犯罪の被害者は原則として匿名とする。被害者が死亡した場合は事件の重大性や社会的広がりを考慮し実名とすることもあり得る。その場合も、暴行の状況や方法といった具体的な記述を避けるなどの配慮をする。

・ 幼児や小中学生など未成年の被害者で、心身の被害回復のため特に配慮が必要な場合は匿名とする。

・ 児童買春の被害者は匿名とするだけでなく、住居や学校名が特定されないよう配慮する。

・ 犯行の様態が極めて異常で、被害者の人権に配慮が必要な場合は匿名を選択できる。

・ 詐欺、脅迫、恐喝などの被害者で、実名報道により身体の危険などが予想される場合は匿名を選択できる。

・ 被害者名を報道することで、被害者や家族に不利益が生じる恐れがある場合は匿名を選択できる。

<少年犯罪、精神障害による犯罪の場合>

・ 少年法は、少年が罪を犯した場合、更生を優先する観点から氏名・住所・職業など、その少年を特定する記事または写真の報道を禁じている。少年犯罪の報道は匿名を原則とし、顔写真や自宅の映像も原則として使用しない。仮名を使ったり経歴に触れる場合も、容易に本人を特定できるような表現はしない。

・ 刑法は心神喪失(精神の障害により善悪の判断能力を完全に欠く状態)が認められる者の刑事責任能力を認めていない。犯行時に心神喪失が認められる者の「犯罪」は法的には無罪が前提であり、その人権に配慮する観点から匿名を原則とする。顔写真や自宅などの映像も原則的に使用しない。法律的に心神喪失が認定されていない時点であっても、精神障害による犯行と推定できる場合は匿名報道を原則とする。精神病院での治療や通院、病歴への言及は必要と認められる場合を除いて避け、精神障害者に対する差別や偏見につながらないよう留意する。

<そのほか、匿名が妥当なケース>

実名報道により人権を侵害されたり不利益を被る恐れのある場合は匿名を選択し、映像上も本人が特定されないよう細心の注意を払う。以下のようなケースが想定される。

・ 内部告発者やセクハラ訴訟の原告などで人権侵害や不利益を被る恐れから本人が匿名を希望する場合

・ 人工受精や臓器移植など、実名報道でプライバシーが侵害される恐れがある場合

・ 障害や病気に対する差別などを理由に本人が匿名を希望する場合

<容疑者・被告の人権に配慮する>

・ 犯罪報道においては「容疑者」や「被告」など、当事者の法的立場を明確にした呼称をつけ、その人権に配慮する。

・ 容疑と関係の無いプライバシーを不必要に暴いたり、仮定や憶測で当事者に具体的な容疑があるかのような報道はしない。

・ 警察や検察の発表だけに頼らず、容疑者・被告の主張にも耳を傾ける。容疑者・被告本人の取材ができない場合でも、弁護士や家族、関係者などを多角的に取材する。捜査当局の誤認逮捕や人権侵害の可能性を常に念頭において報道する。

・ 容疑者であっても不必要に前科・前歴を報道することは人権侵害につながる。前科・前歴の報道は、その犯罪事実と密接に関連し事件の真相解明に不可欠と判断される場合に限定される。

被害者・被害関係者の心情に配慮する。集団的過熱取材や強引な取材によって、被害者やその家族、容疑者の家族などに威圧感を与えない。小中学生や幼児については特段の配慮をする。

<被害者などの心情への配慮>

事件・事故・災害などの報道にあたって、被害者やその家族、関係者などへのインタビュー取材は、真実を伝える上で重要な手段である。その場合、当事者の心情を理解し、いたずらに煽り立てることのないように配慮する。取材にあたって、個人のプライバシーに踏み込まざるを得ないこともしばしばある。それは、記者の目前で起きている出来事を正確に伝える作業である。その際には取材される側が直面している痛みを理解し、十分に配慮するのは当然である。犯罪の被害者が、過剰な取材・報道によってさらに傷つけられるケースがある。その人権と被害者の感情に十分留意する。

<容疑者・被告の家族への配慮>

容疑者・被告の家族に対する取材は、事件などの背景を報道する上で欠くことはできない。しかし、容疑者・被告の家族は、時には職を失い転居を強いられるなど、苦境に立たされるケースも少なくない。取材の際はこうした点に留意し、行き過ぎた取材や報道によって、犯罪とは無関係な家族を追いつめたりしないよう常に考えて行動しなければならない。

<集団的過熱取材への配慮>

大事件・大事故の際に、多数の報道陣が当事者や関係者に集中し、取材対象者のプライバシーや平穏な生活が侵されるといういわゆる「集団的過熱取材」に批判が高まっている。特にテレビは、記者、カメラマンなどの一定の人員、中継関連の車両・機材などを展開しなければならず、その媒体特性からくる物理的要因を踏まえ十分な配慮をする必要がある。取材される側の気持ちを十分尊重し、いやがる取材対象者を集団で執拗に追いまわしたり、強引に取り囲むなどして、相手に威圧感を与えないように配慮する。取材対象が容疑者・被告の家族や関係者の場合も同様である。特に被害者が小中学生や幼児の場合は特段の配慮をする。

また、直接の取材対象者だけでなく、近隣の住民の日常生活や感情に配慮し、取材者は服装、飲食や喫煙時のふるまいなどに注意する。さらに、取材の際に、騒音、ゴミ、交通の妨げなどで現場周辺の住環境を乱さないようにする。

取材現場が集団的過熱取材の様相を呈していると判断した場合、取材者は速やかにデスクに連絡し、取材方法などについて指示を仰ぐ。

4. 社会的影響力の自覚

取材にあたっては、品位を保ち、時と場所を心得た服装と言葉使いに心がける

<市民としての良識を持ち、思い上がりを慎む>

報道に携わる者は決して特権階級ではないことを肝に銘じなければならない。一般市民にしろ、大企業のトップ・政治家・政府高官にしろ、記者やディレクターが取材を申し込めばきちんと応じてくれるのは、我々が報道機関の一員であればこそである。思い上がった考え、態度は慎まなければならない。また、社会通念から逸脱する取材方法はとってはならない。

<時と場所を心得た服装と言葉使い>

服装や言葉の使い分けは、取材技術のひとつでもあるが、基本的には報道マンといえども社会の一員としての枠を超えてはならない。取材対象者だけでなく、その周辺にいる人々にも不快感を与えないような配慮が必要である。特に、取材対象者が悲嘆や心痛に見舞われている時は、礼節と同情をもって接しなければならない。

誤報や訂正すべき情報は、速やかに取り消し、訂正する

<速やかにわかりやすい訂正>

誤りには、誤字・脱字・読み違いなど不注意によるミスと報道内容そのものに誤りがある誤報がある。いずれの場合にも、速やかにわかりやすく訂正するのが大原則である。放送中に誤りに気づいた場合は、その番組の中で、何がどのように間違っていたかを具体的に示して訂正する。報道の内容自体に誤りがあった場合は、誤りを率直に認め、訂正のためにそれなりの時間を割いて正しい事実を伝える。

<信用・名誉を傷つけたら名誉回復措置>

名誉棄損、プライバシー・肖像権の侵害などの指摘を受けた場合は、誠意をもって対応する。当該者の信用や名誉を傷つけたことが判明した場合、名誉回復などの措置をとる。

視聴者からの問い合わせには迅速かつ丁寧に対応する

<誠意をもって対応>

視聴者の意見・苦情には謙虚に耳を傾け、誠意をもって対応する。報道活動に対する批判には、報道機関として可能な限りの説明責任を果たす。個人・団体の電話番号や住所についての問い合わせには、事前に了解を得て、極力応じる。しかし、利害の対立する一方の当事者であったり、その活動が社会的に問題をはらんでいる場合など問い合わせに応じるべきでないケースもある。

<放送素材は放送目的以外には使用しない>

報道活動によって得られた放送素材は、原則として放送目的以外には使用しない。ただし、放送により権利の侵害を受けた本人またはその直接関係人から放送後3ヵ月以内に請求があった場合は、閲覧に応じる必要がある。

5. その他

取材にあたっては危険を防止し、生命の安全を優先する

<生命の安全を最優先する>

人命に優先する取材・報道はあり得ない。災害や紛争などの取材に際してはあくまで生命・身体の安全を最優先する。報道の責任を果たしつつ危険を回避するためには、

  • (1) 現場に必要な人員を配置して情報収集する
  • (2) 安全を確保するための装備を整える
  • (3) 現場と本社の間で情報を共有する
  • (4) 指揮命令系統を明確にする

――――などの措置をとらなければならない。

危険が生じた場合は、躊躇なく現場から撤収する。

<災害地域>

災害現場では、常に安全を確保し取材する。現地の対策本部などの危険情報に留意し、警戒地域など通行が制限されている現場では、デスクなど責任者の許可なしに取材しない。ヘルメットや防護靴など必要な装備を整えて取材にあたらなければならない。

<海外の紛争地域など>

政情が不安定な地域の取材は、外務省の海外危険情報などを参考に取材地域を決める。予防接種などの事前の準備は万全を期す。戦争や紛争の取材は、安全が確保できる拠点や緊急時の連絡手段、脱出ルートなどを築いた上で行う。また、行動予定はすべて本社の報道責任者が把握していなければならない

<原子力発電所の事故など>

事故の取材でも安全に配慮することは当然だが、とりわけ原子力施設の事故の取材では、十分な配慮が必要である。放射能や放射線が肉眼では見えないものだけに、現場で取材する者はその危険性を把握することが極めて難しい。取材にあたっては常に線量計などの装備を携行し、立ち入りが禁止された地域には決して入らない。別途定めた「原子力事故取材安全マニュアル」に沿って取材にあたる。

記者クラブなど取材現場では、日本新聞協会が認めている協定を除いて、みだりに協定を締結しない

<記者クラブは報道のための自主組織>

記者クラブは、公的機関などを継続的に取材するジャーナリストたちによって構成される「取材・報道のための自主的組織」(2002年1月、日本新聞協会見解)である。

インターネット時代を迎えて様々な情報の発信が可能になり、ホームページで情報を直接発信する公的機関が増えているが、情報の選択が恣意的になりがちであり、取材に裏付けられた確かな情報が一段と求められている。記者クラブは公権力を監視し、市民の知る権利に応える役割を担っていることを忘れてはならない。

誘拐事件での報道協定など、人命や人権に関わる取材・報道上の調整機能も記者クラブの役割のひとつである。しかし、報道は原則自由であり、自ら手を縛るような協定をみだりに結んではならない。

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テレビ東京 報道取材・放送規範

報道番組に携わる者は、 真実を広く伝え、人々の知る権利に奉仕する社会的責任を自覚するとともに、人権を尊重し、品位と節度をもって、正確・公正・客観的な取材・放送に当たらなければならない。

<知る権利への奉仕>

取材・放送は、人々の知る権利に奉仕するものでなければならない。

1. 取材・放送は、人々の知る権利に奉仕し、 真実を追求しなければならない。

2. 取材・放送は、人々に情報社会における適確な判断の素材を提供するものでなければならない。特定の個人、団体、企業の宣伝や利益、あるいは誹謗、中傷を目的としてはならない。

3. 取材・放送は、人々の知る権利、言論・表現の自由を妨害するあらゆる圧力や 干渉を排して行わなければならない。

<人権の尊重>

取材・放送は、人権を尊重し、不当に名誉を傷つけたり、不当にプライバシーを侵害してはならない。

1. 事件・事故・災害の取材・放送は、被害者及び被害関係者の心情に配慮しなければならない。

2. 事件・事故・災害の取材では、集団取材や強引な取材によって、被害者やその家族、容疑者の家族などに威圧感を与えないように配慮しなければならない。小中学生や幼児については特段の配慮が必要である。

3. 事件・事故・災害の取材では、現場周辺の住環境を乱さないように注意しなければならない。

4. 取材に当たっては、個人の名誉とプライバシーを尊重し、取材上知りえた私事は慎重に取り扱わなければならない。

5. 取材・放送に当たっては、個人の肖像権を尊重し、報道の直接対象とはならない人物については注意深く扱わなければならない。

6. 取材・放送に当たっては、人種、性別、職業、国籍、宗教などによって差別してはならない。

7. 放送目的で得た個人情報を目的外に使用したり、外部に漏らしたりしてはならない。

8. 万一、報道により人権侵害があったことが確認されたら、速やかに被害救済の手段を講じなければならない。

<客観性の確保>

取材・放送に当たっては、正確・公正を貫くだけでなく、客観性を保たなければならない。

1. 多面的な取材によって、事実を正しく伝えなければならない。

2. 事実を歪曲したり、誤解を招く過剰表現や断定的な表現をしてはならない。

3. 放送は、情報の根拠をできる限り明示しなければならない。

4. 取材源を保護することは取材・報道の自由を守る上で欠かせない責務であり、取材源は厳格に秘匿しなければならない。

5. インサイダー取引の疑いを招きかねない行為は行わない。

6. 取材先から利益・便宜供与を受けてはならない。

<社会的影響力の自覚>

放送の社会的影響力を自覚し、品位と節度を保つとともに、視聴者の声には謙虚に耳を傾けなければならない。

1. 取材に当たっては、時と場所を心得た服装と言葉づかいに心がけなければならない。

2. 誤報や訂正すべき情報は、速やかに取り消しまたは訂正しなければならない.

3. 取材・放送に関する視聴者の問い合わせには、迅速かつ丁寧に対応しなければならない。

以上

2001年12月

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