※文中曲名のリンクをクリックすると「タワーレコード」
の商品ページに移動します
「歌で生きて行く……」
独りの女の決意があった……
果たしてソレは、ソレ相当の覚悟と勇気が必要だったはずだ。
そして、女には……その二つがあったのだ。
彼女の名…………それは、大黒摩季。
腕っ節だけで稼ぐパウンサーのごとき、「隙のなさ」……
てめぇの腕だけを信じる頑固職人のごとき、「一本気さ」……
己の生き様に対して覚悟を持ち続ける者特有のオーラを放つ、プロフェッショナルの輝きが彼女にはあった。
大黒摩季は……肝が座っている。
果たして、番組内ハナウタ湯にて彼女が歌った「デスペラード」/イーグルス
![]()
その情感豊かな歌声は、聞く者の心を震わせるに十分であった。
Desperado, why don't you come to your senses
「ならず者よ、目を覚ましなよ」
西部のどこかの牧場で、絶望的に独りの……ならず者。
そいつは、フェンスにもたれかけて、遠くを見つめていた。
トランプをすれば、デカ目ばかり狙い、いつまでたっても勝てやしない……
そんな野郎。そんな、生き方をしてきた野郎。
感情なんてモノはとうに失い、愛なんて言葉もすっかり忘ちまった男に語りかける歌……ソレがこの歌だった。
乾いた絶望感が漂うアウトローへの鎮魂歌。
……形容詞のdesperate (絶望的な~、捨て鉢な~、自暴自棄な~)と、
同じ語源を持つ「デスペラード」
果たして、歌い終わった大黒は……あの頃を思い出すかの様に、話しだした。
「北海道から出てきて……、この東京って街で、歌で生きていこう!! って思ったら…………、仕事はないわ、バイトは安い給料で、オロオロしてて、チャンスもなく。
……とかっていう、そんな朝方に、たまたま山腰先生に言われて『テーク・イット・イージー』をコピーする為に、聞いていたイーグルス。ベスト盤なもんだから、丁度寂しい地区を歩いていたときに『デスペラード』が流れてきて……。思わず涙が…ヴァーーーーーーーーーーーーみたいなね(苦笑)」と。
あぁ……
放送を未見の読者にとっては、『山腰先生』が非常に気になるトコロではあろうが、その説明は後に譲るとして。
……ときには傷つき、ときには自暴自棄になりつつも、己の歌声だけで世間と渡りあってきた女の生き様がそこには在った。そして、そんな彼女だけに歌える「デスペラード」が……、今夜、確かに、在ったのだ。
大黒摩季…………あなたは素敵だ。
果たして
ガツーンときた曲……Communication Breakdown/Led Zeppelin
![]()
![]() |
4才にしてツェッペリンに目覚めた摩季姫 |
【フジヤマ・グレイテストヒッツ】
ジャニス・ジョプリンが紹介される。
「生き方も憧れたし、ホント好きですよ。頂点のときに、お亡くなりになられて…。私も、同じ年齢の頃、太く短く、がーっといってバタッと倒れて伝説になるはずだったんだけど、ライブをやったことがなくて、
やり残したことが多すぎて (笑)、倒れられなかった」と、大黒。
……あぁ、そうだった。
かつて大黒摩季は、謎に包まれた歌手でもあった。
「実は存在しない」なんて噂さえ、あったっけ……。
大黒摩季…………その人間性にこそ、惹かれる存在であるのに……。
ともかく
そんなことも思い出される大黒のトークが繰り広げられたわけだったが、
ソレをいきなり遮る男がいた。
無類のJ-POPファン……マーティ・フリードマン
「実は話全然変わるんだけど、ボクも(大黒さんの)大ファンで、
相川七瀬の曲なんですけど、作詞は大黒さんがしている(CD)、
サインして欲しいんですけど……」
と、番組中にもかかわらずサインを貰いだすマーティの暴挙。
確かに「話は全然変わった」わけだが、変わりすぎだとツッコミたくもなるような展開。
果たして、サインを貰ったマーティは満面の笑みで
「じゃぁ、もう帰りまぁす!(ニコニコ)」……。
素敵なシーンであった。
ところで……
「次、グラムロックやりたいなって思っていたの」とは、T-REXの紹介時の大黒。
あぁその言葉に、…………兄貴は素早く反応した。
つづいてのコーナー……
【ハナウタ湯】
「お待ちっな! ……グラムでいくわよ!」
兄貴登場時の今宵の台詞。
グラムといえば、兄貴! 兄貴といえば、グラム!
反射神経の良さを垣間みる。
さて、ハナウタ湯にて、大黒がハナウタった三曲をまずは紹介しよう。
Rosanna/TOTO
![]()
Long Train Runnin' /The Doobie Brothers
![]()
Take It Easy/Eagles
![]()
今夜、彼女が選んだ三曲にはある人物との思い出がすべて含まれていた。
その、人物とは……恩師「山腰先生」。
先生が大黒に注入してくれたもの……それは、アメリカン・ロックの血であった。
北海道のヤマハ音楽教室でギターの先生だった山腰先生。
高校を卒業してプロになるため東京に出てきた大黒。
それに先んじて、上京していた先生は、
東京にひとりぼっちで。もがき苦しむ大黒を、
何かにつけて面倒を見てくれる存在だったと言う。
ときに……、ジンギスカンを食べさせてくれたり……。
もちろん!「ベルのたれ」で!
あぁ、山腰先生の人となりを感じさせる絶妙な三曲!
あぁ、ご本人を存じなくとも、山腰先生の雰囲気がわかる魅惑の三曲。
トトにドゥービーに、イーグルス!!
スティーリー・ダンとかはどうなの? 先生!!
ともかく
「それまで、こういう曲は私の血になかったですからね(笑)」と大黒。
さて、
おかげさまの山腰先生とのバンド修行によって、
「こんなのも歌えるんですよ」と、なにげなく話す大黒。
果たして歌姫のあげたその曲とは……
【山腰先生に捧ぐ イーグルス「デスペラード」】
いやはや、ぶっちゃけた話を書く。
このコーナー…………、まったくもっての
ホントのホントに「急遽」できたコーナーであった。
その経緯はこうだ……。
ハナウタ湯のコーナー中、「デスペラード」の名前が、
大黒の口から発せられる。それに呼応したマーティが、
メロディを弾く。今度はそれに呼応する大黒……するりと歌い出す。
ささやかなプチセッションが、ステージで垣間みえた。
ワンフレーズほど披露して、ふたりは終えて、笑い合う。
まさにそんなかんじだった。そんな展開だった。
もうちょっと聞きたかったけどな……誰もが、そう思いつつも諦める展開だった。
番組だもの…、仕方ない。誰もがそう思った。
しかし、この男は、そうは思わなかった。
マーティ・フリードマン。
「どう? ちゃんとやりたくない?? ちゃんとやりませんか?」と、
当番組演出家に直訴する。
むろん大黒も、やぶさかではなかった。
ふたりのプロフェッショナルに火のついた瞬間だった。
そんな言葉に、スタッフも素早かった。
進行上は、なかったはずのコーナーへの、準備をしだす。
「どうせなら……」
プロフェッショナルなテレビ屋たちの、本気が煌めく瞬間だった。
演出家は素早く頭を切り替え、指示を出す。
照明さんが、明かりをつくる……
せっかくだからとADたちも、歌詞を大きな紙に書き出す。
いやはや、もちろん、まえもって準備なんてされてないんだぜ!
CDだって用意されちゃいないんだ。
だって、やるはずじゃなかったんだもん。
だけどさぁ
テレビのスタッフさんたちはすごいね。
どこかから、入手するんだ。なんでも……、なんとしてでも……。
どうせなら……完璧にやろうよ。そんな心意気の結晶だったのだ。
私は、ただただ、感心した。
健全なる深夜番組特有の、ユルさがいい意味で産み出した奇跡のコーナー。
そして、その「ユルさ」を支える驚異的な機動力。
音に関するプロフェッショナルなやつらの想いを、
テレビ屋としてのプロフェッショナルなやつらが答えた心意気!
![]() |
思い出の曲、イーグルスの「デスペラード」を熱唱! |