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テレ東

2018.10.18

「勉強」がAIで激変!?テクノロジーで挑む”教育革命”

「ワールドビジネスサテライト」 (毎週月曜~金曜 夜11時)では、新企画「イノベンチャーズ列伝」がスタート! 社会にイノベーションを生み出そうとするベンチャー企業に焦点をあてる。そこで、気になる第13回の放送をピックアップ。



長崎県長与町にある学習塾「能開個別ホロン 長与教室」。ここで今、あるベンチャー企業が教育業界に起こそうとしている"革命"の兆しを見ることができる。


夕方、大学受験を控えた高校生たちが教室に次々と吸い込まれていく。その入口には「AI」(人工知能)の文字が。受講する高校3年の女子生徒に話を聞くと「以前は数学が31点だったんですけど、受講してから75点まで上がりました」。彼女だけではない。この教室全体で見ても、AI講座を受講した生徒の平均点が20点ほど上昇したというのだ。(センター試験数学ⅠAの2016年追試験と、16年本試験の過去問を解いて比較)。


塾の講師は「1人や2人の成績が上がることはあっても、受講した大多数が一気に上がることはなかった」と、驚きを隠さない。


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※教室全体で点数が大幅アップ...一体何が?


去年の年末に始まったという"AI講座"では、生徒たちは黙々とタブレット端末の画面を見ながら、イヤホンで何かを聞いている。その中の1人に音声を聞かせてもらうと「次にcos(α+β)を...」。受けていたのは数学の"授業"だ。別の生徒の画面には、物理の内容が表示されている。実はこの講座、AIが生徒1人1人の苦手分野などに合わせたカリキュラムを提案し、生徒に別々の内容を学習させるのだという。


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※AIが各生徒に合ったカリキュラムを提案


では、塾の「先生」は何をするのか。担当の女性講師が持つタブレットには、生徒1人1人が「何を学習していて」「どういう状況か」のリアルタイム情報が並んでいる。「合格間近です!」と表示された生徒がいると、女性講師はそっと生徒の近くへ。彼が合格、つまり学習を終えたのを見届けると、すぐさま「合格したね!」と声をかける。つまり先生は生徒の「やる気を引き出す」ことに徹し、その「声かけ」のタイミングをAI講座のシステムが助言しているのだ。


受講した生徒も先生も支持する、この学習システム。開発したのは、去年4月に創業したばかりのベンチャー企業「アタマプラス」だ。


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※「アタマプラス」創業者の稲田大輔CEO(右)


創業者の稲田大輔CEOは2017年3月まで11年間、三井物産に勤務。その半分近い5年間はブラジルに滞在し、現地で教育事業を手掛けていた。日本の教育ノウハウをブラジルで広めようと奔走していた稲田氏は、現地で思わぬ光景に遭遇する。「テクノロジーを活用した教育が、どんどん進んでいた」。


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そうして2017年4月、アタマプラス創業に至った稲田はこんなビジョンを描いた。「テクノロジーを活用して、基礎学力の習得にかかる時間を半分以下にする。そうすると子供たちに時間が生まれるので、余った時間で、"社会で生きる力"を身に付けてほしい」。これからの子供たちには、昔ながらの学習は効率的に済ませ、部活動といった課外活動など、社会で生きるために必要な力を身に付ける時間に充ててほしいという考え方だ。


そのアタマプラスのAI講座、強みはどこにあるのか。取材に訪れたWBSの相内優香キャスターが体験してみた。まずは「診断テスト」。数学コースを選んだ相内キャスターだが、因数分解の問題に頬を膨らませて苦戦する。すっかり数学から遠ざかっていただけに「8問中4問が不正解でした...」。


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※AI講座に挑戦する相内キャスター、因数分解に苦戦


アタマプラスのシステムが本領を発揮するのは、ここからだ。実はこの診断テスト、単に生徒の「できる、できない」を把握するだけが目的ではない。「何が分からないから、つまずいているか」という、弱点の「根本的な原因」をAIで突き止めるのだ。例えば「1次関数が分からない」と思っている生徒について、テスト結果から原因をさかのぼり、「比例と反比例」、さらに「比」の概念が分かっていないことが原因だと把握する。それを踏まえて、「比と比の値」という単元までさかのぼった専用カリキュラムを作り、弱点を根っこから1つ1つ克服していくのだ。


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※分からない「根本的な原因」を突き止め、対策を打つ


そしてAIが作ったカリキュラムでの学習が始まる。映像と音声で5分前後の"授業"を受けた後、問題を解く形式だ。ここで相内キャスターが気付く。「先生が話しているのに、問題しか映っていないですよね?」。実はここにもノウハウがあるという。「先生が映っていると、意外とそっち生徒の目線が持って行かれる。色々と検証した結果、これが最も生徒の集中力が高まるんですよ」(稲田CEO)。


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※ 生徒の気が散らないよう、授業の動画は「先生の顔抜き」


教材を作って音声で説明するのは、名前は明かさないが、全国の学校や予備校の指導経験が豊富な先生たちだという。その教材は継続的に改善している。コンテンツ担当チームが動画の平均再生回数をチェックし、回数が多い動画は「生徒がどこかでつまずいている可能性がある」として、内容を分析し改善点を探るのだ。


アタマプラスのAI講座は着実に世の中に広がりつつある。すでに「Z会」や「学研」グループの学習塾で採用されているほか、「駿台」グループの塾でも2019年度からは通常授業で、年間を通して採用される予定だ。


今後こうしたAIを使った学習が広がれば、教育の現場が大きく変わる可能性があると、稲田CEOは指摘する。「AIが得意なところはAIが教える。そして、コーチングして励ますとか、勉強のし方を見てあげるとか、そうした人間にしかできない役割に先生が集中していくという時代が作れればと思う」。


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※ AIの浸透で「先生の役割」は大きく変わると話す稲田氏

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ビジネスや生活に役立つ「自分につながる」経済ニュース番組。ヒット商品を先取りした「トレンドたまご」、経済の最新情報を伝えるコーナーなど。

放送日時:テレビ東京系列 毎週月曜~金曜 夜11時

出演者

大江麻理子、滝田洋一、山川龍雄、相内優香、須黒清華、片渕茜、北村まあさ

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