• #
  • トップ
  • グルメ
  • 「ヤバい奴らのヤバい飯」から見えるものは何か?:ハイパーハー...

グルメ

テレ東

2018.4.8

「ヤバい奴らのヤバい飯」から見えるものは何か?:ハイパーハードボイルドグルメリポート

ハイパーハードボイルドグルメリポート#3

「ヤバい奴らのヤバい飯」から見えるものは何か?:ハイパーハードボイルドグルメリポート

大反響を呼んだ「ヤバい奴らのヤバい飯」を通して世界のリアルを見る番組「ハイパーハードボイルドグルメリポート」(4月9日月曜深夜0時12分〜、4月16日月曜深夜0時27分〜)の新作がついにオンエア! 前回は、リベリアの元少女兵、対立する二つのLAギャング、台湾マフィアたちを取材しましたが、今回はいったい、どこで何を食べてきたのか? 番組を企画から立ち上げた上出遼平ディレクターに話を聞きました。



ロシアで食べたボルシチは美味しかった!


Hyper_hard_boiled_Gourmet_20180407_01.gif


そもそもこの番組の企画を作るきっかけから教えてください。


きっかけになったことは二つあります。入社してから長いこと、世界中の僻地にばかりいく番組をやっていました。そのロケ中、面白い"飯"をしょっちゅう目にしていたんです。例えばトンガ(オセアニアの島国)の家に招かれた時。家の主人がおもむろに庭に穴を掘って焚き火をおこし、そこにエンジンのスクラップを放り込む。鉄くずが真っ赤になったところで、ココナッツミルクと合わせた豚肉をバナナの葉にくるんでつっこみ、土をかぶせる。1時間待って土を掘り起こすと、ぷるっぷるに火の通った蒸し豚がココナツミルクにくるまれて現れる。これが衝撃的にうまいんです。子豚の丸焼きを作る時も、焼きながらただひたすら、何時間も刷毛でココナツオイルを塗り続けるんです。そうして焼きあがった子豚の表面は、滲み出た脂とココナツオイルがカリッカリの飴状になって全体を覆っている。歯を入れると、割れた飴の間からジューシーな脂が溢れてくる・・・思い出すだけでほっぺたが落ちそうで。トンガは豚だらけの国だけに、豚の扱いがすごく上手。他にも、アフリカの貧国マラウイで1日3食全てトウモロコシの家の食事や、南米コロンビアのスラム街で食べた100円の「お米スープ」もめちゃくちゃうまくて・・・など、ちょっと人に話したくなるような"飯"がたくさんあったんです。しかし、当時の番組ではその部分はおまけにすぎないか、基本的には本旨ではないのでカット。せっかく面白いのになぁと思っていました。


もう一つは、同じく世界の様々なところを訪れる中で、特に貧しい場所に入った時のこと。こんな言い方をすると気持ち悪い偽善者に聞こえるかもしれませんが、本当に明日食うものも不確かな状況の家族が、馬鹿笑いしながらボールを蹴っていたり、僕のことを「ジャッキーチェンが来た!」と言って笑い転げていたりするんですよ。そういうのを見ていると、その国で自殺する人があんまりいないっていうのがわかるというか。金がそんなにたくさんはなくても、こんな風にしてみんなで笑って生きていける。それこそ、日本のいろんな人に見てもらいたいなと思っていたんです。テレビこそこういうものを見せていく義務があるよなーと。本当は修学旅行で、こういうところに行ったら幸せの感じ方を教えてもらえるのに...と。それがこの番組をやろうと思った2つ目の理由です。だから、この番組に出てくれている世界中の人々は、"希望の持ち方を教えてくれる先生"みたいなものなんですよ


前回放送した西アフリカ・リベリア共和国では、露店で買った肉や闇カレーを「おいしい!おいしい!」と食べていた上出D。あれは本当に美味しかったのでしょうか?(笑)


リベリア(他の西アフリカ諸国も同様に)は、干した魚の臭いとパームオイルの臭いがすごくキツいのですが、全部本当に美味しかったです。というか、よく聞かれるので言いたいのですが、あの状況では「美味い!」以外の答えはほとんどありえないです。山奥で飲むインスタントコーヒーとか100円のチョコパンがめちゃくちゃ美味しいのと同じで。もしかしたら、あの状況が味覚的に「まずい」というセンサーを停止させている可能性もあります。だけど本当は、彼らが限りなく純粋な善意で"一口どうぞ"と言ってくれたものを食べた時に"あぁ、ちょっと魚の臭いが気になりますね"はありえない。もう「美味い!最高!ありがとう!」しかないんですよ。それが本当のリアルなんです」


今回はロシアということですが、実際のご飯はどうでしたか?


間違いなく味覚的にも美味しかったです。ロシアでは、シベリアの山奥で1千人以上が暮らすカルト教団の村に行きました。彼らは外界と隔絶した自給自足に近い暮らしをしています。ヤギを飼ってチーズを作り、温室を作って野菜を育て、山に入ってナナカマドを取ってきて紅茶を淹れる。
そんな人たちの作るボルシチのなんとおいしいことか・・・。


Hyper_hard_boiled_Gourmet_20180407_02.jpg



危険じゃない【ヤバい】を伝えたい!


ロシアの山奥にあるカルトな宗教団体は、なぜ取材することになったのでしょうか?


この番組は、どこまでいってもグルメ番組なので美味いもの探しに行きますが、行く場所を選ぶ時にはざっくりとした目的意識がある。2週にわたって放送できるので、僕としては前編後編みたいな感覚で、全体を通して何を語ることができるのかを考えたいと思っています。前回の放送では「悪」というものをもう一度考えたいと思って取材をした結果、出て来る人全員が人殺しという強烈なラインナップになりました。「人を殺す」ということが、我々の考えうる「悪」の中でも明らかに大きかったからです。今回も、結局は「善と悪」みたいなものに行き着いてしまうかもしれませんが、前回は「ヤバい」が「危険」と同義になりがちで、本質が少しブレました。今回は現代日本人が生み出した「ヤバい」という曖昧な言葉を、"危険"とは少し違う角度で目指したかった。


結果、この第2弾の裏のテーマは「異端」「少数」です。
「異端」と言われ、「カルト」と虐げられる集団は、果たしてどんな顔でどんなものを食っているのか。
彼らの存在が誰を不幸にし、誰を幸福にしたのか。
そして、どんな集団や組織も、元々はごくごく小さな人間の塊に過ぎなかったはずで、その意味では、"勝てば官軍"じゃないけど「多数派」であることと「正常」「正義」であることが混同しているような感覚に、何かの違和感を与えられないかなと思って...。わかりづらいけど。


実際、カルト教団の村人たちは幸せに暮らしていますか?


村に着くと、教団経営の2食付き6.000円の民宿が待っていました。完全な「おもてなし」です。
あぁ、カルトと言われる教団には、こんな風に客を受け入れる体制ができているんだなぁというのもいろいろ考えさせられて面白いのですが、そのままでは何も見えてこない。ロケでは流れに乗るのも大切ですが、どこかでその流れから身をよじって脱出しないとならない。そうじゃないと、彼らが見せたいものだけ見ることになってしまうから。教団のPRビデオを撮ってきても誰も興味をもたないので。取材中、この場所で生まれ育った子どもたちは何をどう考えているのかなぁということを考えていました。もう、おじさんやおばさんは「教祖サイコー!」しか言わない。そりゃ、自分たちで選んでここにきているからきっとそうなんでしょう。でも、子どもは違うかもしれない。そう思って、教団を案内してくれていた信者をうまく巻いて、13歳の少年の家について行くことができました。彼に、カルトについて聞いた時、彼が言ったことには、やっぱり色々考えさせられました。人生いろいろ。


信者だらけの村でたまたま立ち寄った商店で、教団の信者じゃない方と出会いました。きっと教団としては、信者以外の住人と僕が出会うのは避けたかったはずなので、本当にたまたまでしたが、その人の話からは、やっぱり善悪二元論では語れない事象が見えてきました。「私たちは最高に幸せだ。誰にも迷惑をかけずに、自給自足で生きていきます」という、一見何も悪くなさそうな教団。そして、彼らに家を追われた元々の住民たち。自分の幸せを追求した時に、見えるか見えざるかを問わず、どこかで不利益を被っていたり、不愉快に感じたりしている人がいるかもしれない。それは、この有限の地球に暮らしている以上、不可避かもしれない・・・。


2週目のセルビア編では、中東諸国から国を追われてヨーロッパを目指す道中の青年たちが主役です。彼らは、自分の幸せを求めて、というよりもっと切迫した「生きる権利」を求めて何年間にも及ぶ、無慈悲な暴力に満ちた旅路に就きます。しかし、彼らを遮るのは、自国の安全を守ろうとする「正義」。果たしてどちらが正しいのか。「正しさ」とはなんなのか。


興味深く"ヤバい場所"を見ていたところから、果ては「幸せとは何か?」まで考えさせられてしまう「ハイパーハードボイルドグルメレポート」。今回も、結局アポ無しで出会った人たちが主にオンエアされているとのことですが、実際"ヤバい事態"に遭遇したりしないものなのでしょうか?


"ヤバい=危険"と思うかもしれないけど、他にもいろんな意味があるじゃないですか。『危険なとこに行ってすごいだろ!』といったテレビディレクターのチキンレースには興味がない。主役はあくまでも現地の人。彼らへのリスペクトが大前提の番組です。危険じゃないヤバさ、人間の、世の中の根本的なバさを感じてもらえたらと思います。


Hyper_hard_boiled_Gourmet_20180407_03.jpg


上出ディレクター曰く「ロシア編、セルビア編を見て頂けたら、きっと1+1が3以上になっています!」とのこと。ファン待望の最新作! 「ヤバい人たちのヤバい飯を通して、ヤバい世界のリアル」を、ぜひその目でたしかめてみてください。

この記事を共有する

関連記事

関連タグ

ハイパーハードボイルドグルメリポート

ハイパーハードボイルドグルメリポート

食うことすなわち生きること。 食の現場に全てが凝縮されている。 これは、ヤバい人たちのヤバい飯を通して、 ヤバい世界のリアルを見る番組。

放送日時:4月9日(月)深夜0時12分

出演者

小藪千豊

カテゴリ一覧