漢方・丁 宗鐵先生が語る、漢方薬の役割と付き合い方。「主治医が見つかる診療所」レギュラー医師に健康相談!~

医師や病院の選び方のコツや、無理なくできる健康法など、医療に関するさまざまな疑問に答える、知的エンターテイメントバラエティ「主治医が見つかる診療所」。2006年にレギュラー放送開始以来、毎回テーマに沿った情報を現役で活躍中の医師たちがわかりやすく解説しています。
今回の「主治医の小部屋」では、レギュラー医師として出演中の漢方専門医・丁 宗鐵先生を直撃!より身近になってきた漢方薬とのつきあい方についてお聞きしました。そもそも漢方とはどんな医学なのか、基礎的なところから質問開始です。
Q:近頃、病院で漢方薬が処方されるようになりました。漢方薬は、今まで飲んでいた薬と何が違うのでしょうか?
丁先生:漢方というと、一般にはまだまだ特殊なイメージがあるようですね。ただ、アンケートによると、現在およそ32万人いる医師の約9割が日常診療に漢方薬を使っていると答えています。それだけ漢方は身近で、当たり前の医療になりつつあるんですね。日本の医療の特徴といえば、国民皆保険制度が筆頭に挙げられてきましたが、こうした西洋医学と東洋医学(漢方)の融合も大きな特徴といえるでしょう。

西洋薬と漢方薬にはそれぞれ得意分野があります。感染症やがんなど病変がはっきりしているもの、検査や分析から診断がつくものは、西洋医学が得意とするところで、体を細分化して異常が起きている部位を局部的に治療します。
ところが、病んでいる人には割り切れない部分も多い。中には病院に来ても恥ずかしさなどで症状を正直に伝えられない患者さんもいます。漢方はそういったところも含めて総合的に診ることができるんですね。経験に頼った医学ではありますが、現代医療の中でまだまだ使い道はあるわけです。
特に、心と体の両方を病むような病気の場合には、漢方薬が合っていることが多いんですよ。更年期障害などの根底にはホルモンのバランスの乱れがあるのに、表面に現れるのは心身症のような症状だったりする。こういうのは漢方が得意とする分野です。

また、漢方は天然物を利用してつくられる比較的安全性の高い薬です。併用することで、西洋薬の副作用を軽減したり、相乗的に効果を上げたりします。自分で自身に合った漢方薬を見つけて使うことができる、セルフメディケーション(自主服薬)ができることも特徴といえるでしょう。
これらの違いや特徴から、その人を全身的に診る漢方は「個の医療」、統計学などを大事にする西洋医学は「集団の医療」といわれています。洋服に例えると、西洋医学が既製品、漢方はオーダーメードというイメージですね。
Q:漢方には「未病」という言葉があるそうですが、どんな状態をいうのでしょうか。体調が悪くて検査したところ異常はないと言われました。これも未病ですか?
丁先生:西洋医学では診断がつきにくい状態に「未病」があります。未病とは、病気ではないが健康でもない、すでに病気に向かっている"動的な状態"を指します。漢方の考え方では、健康な人が一足飛びに病気になるということはありません。病気になるまでに未病という病気に向かっている状態があると考えるんですね。
これは、健康な人があるとき急に病気になると考える西洋医学にはない概念です。自覚症状はないけれど、健康診断などで検査をすると異常が見つかる。自覚症状はあるのに検査では異常がない。西洋医学的には何ともないといわれる状態、それも立派な未病であり、漢方では治療の対象となります。
わかりやすいように、病気を火事に例えてみましょう。火事もボヤ(未病)のうちなら消防車を呼ぶ必要はありませんよね。コップ1杯の水(弱い効果の薬)でも確実に火を消せば大火は防げます。逆に、ボヤの時点で消防車を呼んで放水したら、後処理(副作用など)で家中が大変な状況になることも。穏やかな作用で体質そのものを改善して病気の芽を摘む、それこそが漢方の極意なんです。
実は最近、こうした漢方の考え方が見直されてきています。がんや脳梗塞、心筋梗塞など、どんな病気にも未病はあるからです。しかし現在、保険が適用されるのは病気になってから。本来なら病気になる前の疑わしい時期に何らかの手を打っておけばよいのですが、その段階で通院したり、薬を飲んだりする人はほとんどいませんよね。それでは医療費がかかり、治療時間もかかる。病気になった本人もつらくなります。ならば未病のうちに治せばよいのではないか、こうしたパラダイムシフトが医療を取り巻いています。
今後は健康に関する啓蒙活動によって、自覚症状が現れた時点で未病のうちに対策を講じるようになっていくでしょう。それが病気の重症化を防ぎ、なおかつ日本全体の医療費を抑えることにつながるわけです。健康を守る上で、漢方の得意とする未病の考え方をもとに、漢方的な生活習慣を見直すことがますます重要になると思いますよ。
丁先生、ありがとうございました。今後は、漢方での体質や生活習慣の見直しについて具体的に伺っていきたいと思います。

今回お話を聞いた丁先生も出演する「主治医が見つかる診療所」は、毎週木曜夜7時58分から放送中。「テレ東プラス」編集部では、今後も健康にまつわるさまざまなお役立ち情報をお届けします。次回放送もお楽しみに!
