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テレ東

2018.6.30

日本を知る、地域を考える@奈良県桜井市:「地域の一番星」を目指す老舗・今西酒造の挑戦~後編

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2014年秋、東京圏への人口集中を是正し、地方の人口減少を食い止め、日本全体を活性化するために設置された「まち・ひと・しごと創生本部」。「地方における安定雇用の創出」や「地方への人の流れ」「地域と地域の連携」などを基本目標にして、人口減少の問題を克服し、成長力を確保するという長期ビジョンを掲げている。では実際に「地方創生」の現場ではどんなことが行われているのだろうか。本企画では、各地方で活躍する"先駆者"や"成功者"に、各地域の魅力や問題点、そして将来の展望、地方創生の未来を聞く。



日本酒ガイドツアーで、地元へ恩返しを!


今回、取材した今西酒造は奈良県桜井市にある。市内には日本最古の神社といわれる大神(おおみわ)神社があり、日本書紀にこのあたりで酒造りが行われたという記載があることから、奈良は日本酒発祥の地と言われている。


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大神神社は酒と杜氏の神を祀る「酒の神様」として知られ、全国の蔵元・杜氏から信仰を集めている。日本酒の蔵元では軒先に杉玉が下げられている光景をよく見かけるが、その杉玉はここ、桜井市の大神神社から全国へ送られているものだという。大神神社のお膝元にある今西酒造との繋がりも強く、秋の新嘗祭に合わせて神社で行われる酒造りにも今西酒造は毎年協力。もちろん、軒先には大神神社から送られたことのしるしである「三輪明神・しるしの杉玉」と書かれた札を付けた杉玉が下がっている。


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桜井市が "酒造り発祥の地"であること、そして自分が蔵主として酒造りをしていることから、「酒を通じて地域を活性化したい」と、今西酒造14代目蔵主の今西将之(34)さんが始めたのが三輪の酒と歴史と文化を学ぶガイドツアーだった。酒の神様である大神神社はもちろん、日本唯一の杜氏の神社である活日(いくひ)神社、大神神社のご神体である三輪山が望める展望台、万病に効くとされ今西酒造の仕込み水と同じ水脈をもつ薬井戸など、"酒造り"をコンセプトにしたこのツアーは、現在、年間の参加者が約3,000名を数えるという人気ぶり。日本全国のみならず、外国人観光客の参加も珍しくないという。


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「恩返しがしたい。では自分に何ができるのか。まずは勉強して、それからガイドツアーを作ったんです」


今西さんはガイドツアーを始めたきっかけを「地元に戻ってきて、あらためて自分はここが好きだと思ったし、自分を育ててくれたこの場所に恩返しがしたい。何かお手伝いをしたい、と思ったんです」と語る。すぐに地方創生とアイデアが結びついたわけではない。跡を継いだ時に一から勉強した酒造りと同じく、彼はまず現実を把握するところから始めた。


前編で述べたように桜井市には、卑弥呼の里、伝統芸能発祥の地、相撲発祥の地、そして酒造り発祥の地、といった様々な特長がある。
「古事記や日本書紀では3分の1くらいの記述が、ここを舞台にしている。日本という国が始まり、芸能が始まり、相撲も始まった場所。そして酒造りもここで始まった。これだけの"特異点"が集中しているのは、ある意味最強です」


それまでひとつひとつの点でしかなかったものを、"酒造り"の目線で繋げ、ガイドツアーという面で展開する。今西さんが生み出したガイドツアーこそが、"酒造り発祥の地"という桜井市の魅力をより明確化し、多くのファンを生み出した要因といえるだろう。


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「地方創生はボランティアではできない」


とはいえ正直なところ、「地元をめぐるガイドツアー」というだけではさほど目新しい取り組みではない。地方創生を目標に掲げる各地では既にガイドツアーが多く存在しているし、「同一エリアの酒蔵を回って飲み比べを楽しもう」といった酒蔵ツーリズムも多数ある。今西さんは2つのポイントを挙げてくれた。


まず、桜井市が酒造り発祥の地であるという点。「酒造りのルーツというだけで、ひとつのエンタテインメントになります」(今西さん)。これは他の地域には真似しようともできないことである。次に彼が挙げたポイントは「収益を出す」ということ。「いくら地域を活性化しようと言っても、お金を落としてもらうことが必要。地域創生というものは、ボランティアだけではできないんです」


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収益を上げなければ続けられない、そのためにどうすればいいか。今西さんはガイドツアーの内容を徹底研究。どこでどんなエピソードを話すべきか、参加者に何を伝え、何を見せれば満足してもらえるのかを検討し、ツアーガイド全員に周知徹底した。また、ガイドに相応の報酬を支払うことで、プロ意識を持たせた。
複数いるガイドの誰が担当しても一定水準のクオリティが担保され、ボランティアではなく、プロとしてガイドするからこそ、ゲストに満足してもらえる仕組みを作ったのだ。


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「地域にお金を落としてもらえるかどうかは、ガイドの力にかかっています。だからうちではガイドさんにプロとしてきちんと対価を払う。その結果、地域が活性化し、うちの酒蔵のファンが増えてくれるというのが理想ですよね」
おそらくこうした発想は、彼が商学部で学び、一般企業に勤務したからこそ得られたものではないだろうか。あえて「社会人として成長したい」という意思を持ち、進むべき道を選んできたからこそ、理想論だけで終わらせずに収益を得る地域創生を具現化できるのではないだろうか。


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成功事例を生み出す地域の一番星が求められている


「地方創生に必要なものは何か」という質問を今西さんにしたところ、返ってきたのは「地域の一番星です」という言葉。
家業を継いだ当初、今西さんは市や町の会議にも積極的に出席していたという。「でもあまりにもスピードが遅い。いいことをいくら言っていても、そのためのリスクを取らない」今西さんが何かを提案しても、物事が進まない状態が続いた。


そして4年前、先代が理事を務めていた町おこしのNPO法人三輪座が自治体からの補助金を打ち切られると、三輪駅前に開いていたカフェの存続が危うくなった。今西さんは、自らリスクを取り地元のために赤字続きのその店舗を引き取った。現在はカフェとして営業するほか、地元の主婦目線でセレクトした名産品をお土産として販売。三輪駅で降りた人をあたたかく迎える憩いの場として定着している。


「地域を活性化するために必要なのは、成功事例」と語る今西さん。今西酒造を赤字経営からわずか数年で立て直し事業目標を達成。補助金を打ち切られた店を引き継ぐというリスクを冒しても、そこできちんと結果を出す。まさに今西酒造は桜井市の「一番星」になろうとしているのだ。


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参道整備計画が来年着工。桜井市の今後の展望は


今後、桜井市はどうなっていくのだろうか。
「奈良県がいま"一市一町(いっしいちまち)プロジェクト"を進めていますが、そのひとつとして三輪神社の参道整備計画が進行しています」(今西さん)


大神神社を参拝する人にとって玄関口となるのは、万葉まほろば線の愛称で知られるJR桜井線の三輪駅だ。取材で訪れたのが平日だったということもあるだろうが、三輪駅から大神神社へと向かう三輪駅前商店街は閑散とし、シャッター店舗も少なくない。参道を歩くと飲食店や土産物店はぽつりぽつりと点在するものの、以前、同じく平日に訪れた伊勢神宮のおかげ横丁で見た賑わいぶりとは格段の差を感じる。


県と市の各種事業者も参加する参道整備計画では、門前町の町並みを保存しながら市民の日常生活の場としての暮らしやすさを維持。年間500~600万人もの三輪神社参拝客にとっては、街並みを歩くだけでも楽しめる賑やかなエリアと、荘厳な古社としての三輪神社の魅力が伝わる神聖なエリアという2つを両立させるという。
というのも、10年以上前から検討されていた参道整備がなかなか実現しなかったのは、生活環境としての静寂性、安全性を求める地域住民と、商業圏として多くの観光客を呼び込みたい地元企業との折衷に時間がかかったからだ。


ようやく来年の着工を控えた今、酒造業、ガイドツアー、カフェといった現在の事業だけではなく、「また新しい形でお客様をおもてなししたい」と事業計画を立てている。


整備計画で様変わりする三輪の未来について、今西さんはこうも語った。


「自分の事業をただ大きくするだけじゃなく、地元に根差した会社にしたい。そして三輪に元気になってほしいんです」と。


今西さんは「一度、地元を離れてみて、その素晴らしさがあらためてわかった」という。そして故郷を愛するがゆえに、活性化を願い、様々な取り組みを続けている。
「地元三輪を表現する酒を造りたい」
「新しいおもてなしの場所を作りたい」
今西さんの口からは次々と「未来への希望」が飛び出す。そのバイタリティ溢れる笑顔を見ていると、今西酒造を拠点として、三輪が賑わい、活性化する日がそう遠くないように思える。


いまから2年後。東京五輪が開催される2020年は「日本書紀完成1300年」の記念イヤーにあたる。東京五輪と合わせて多くの外国人観光客が、古都、奈良を訪れるはずだ。その時、この町がどのように変貌しているのか。そして今西酒造ではどんな酒を出しているのか――楽しみに見守っていきたい。


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今西酒造
奈良県桜井市大字三輪510
電話:0744-42-6022
http://imanishisyuzou.com/


大神神社
奈良県桜井市三輪1422
電話:0744-42-6633
http://oomiwa.or.jp/


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