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古の時代から「湯治場」は、治療や療養の場としてだけでなく、そこに集う人々のコミュニティーとして、庶民の生活に密接した存在だった。しかし、昨今の温泉ブームの到来と共に、温泉が本来果たしてきたはずの役割が失われつつある。
そこで今回は、改めて"湯で治す”温泉のあり方を再確認しよう!ということで、昔ながらの「湯治場」としての温泉にスポットを当てる。そこに集う人々や、現代に甦った新しいスタイルの湯治などを紹介する。
「秋田県・玉川温泉」
リポーター:角 盈男
八幡平の西端、焼山の山麓に湯煙を上げる玉川温泉は、これぞ日本の湯治場!の代表格。日本屈指の強酸性泉を誇るこの一軒宿の温泉には、全国各地から様々な難病患者が集う。
計695名を収容する229もの客室は常に満員状態で、半年後の予約を取るのも難しいほど。
そんな玉川温泉には、食事付の旅館部と長期滞在者の多い自炊部がある。
さらに、男女別の大浴場の他に、地熱で熱せられた地面で体を温める岩盤浴があり、玉川の効能を信じて、治療に訪れるガン患者もいる。
「山形県・肘折温泉」
開湯1200年、古めかしい旅館が狭い通りに軒を連ね、湯治場の雰囲気が今も色濃く残る肘折温泉。木造3階建ての老舗「三浦屋旅館」は、ご飯に味噌汁、簡単なおかずも何品か付くという半自炊もでき、湯治宿で、長年通いつめる常連客に愛されている。
ここに20年通っている佐藤夫妻は、親の代からこの旅館を利用しており、毎年春・秋はこの地を訪れている。そんな佐藤夫妻に湯治の魅力について話を聞くと共に、若い湯治客にもスポットを当て、現代風の湯治風景も追いかける。
「山梨県・増富ラジウム温泉」
リポーター:田中 健
金峰山の西麓、山深い渓谷沿いに湧く増富ラジウム温泉は、武田信玄の隠し湯のひとつと言われ、古くから湯治客を癒している温泉である。増富の特徴は、ラジウムを大量に含有しているその泉質。また、20℃~35℃と比較的冷たい増富のお湯は万病に効くと伝えられており、肝臓病や糖尿病の他、最近ではガン患者も多く、湯治に来るという。
旅館「不老閣」を営む八巻秀夫さんは、ラジウムをこよなく愛する3代目主人。観光宿泊の対応に移行する宿が増える中、「不老閣」ではあえて湯治客の受け入れに力を入れ、ラジウム温泉の普及に努めている。
「鹿児島県・口永良部島」
リポーター:森末慎二
屋久島からフェリーで2時間、人口わずか160人程の口永良部島は、3つの温泉が湧く夢の湯治場。その一つ、寝待(ねまち)温泉は島の中心地から車で30分の場所に位置する湯治中心の温泉。車道が整備される昔から、島の人々が湯治のために別荘を構えた場所である。また、その泉質の良さを聞きつけて訪れた島民以外の湯治客が利用する、木造平屋の自炊宿もある。
一方、島のはずれにある公共浴場・湯向温泉。この地区では内湯を持つ家がなく、住民たちは仕事を終えると温泉に集う。
さらに、西ノ湯は、昔ながらの佇まいを今に残す混浴の絶景の半露天風呂。湖の干満により、温泉の涌出量が変化する。
「静岡県・中伊豆温泉」
リポーター:橋本 志穂
「ごぜんの湯」は、冷川河畔に建つ中伊豆の温泉宿。人情と心配りが女性にも嬉しい、家族経営の手作り湯治宿である。
ご主人の杉野佳則さんは、脱サラした元丸の内の営業マン。伊豆には数少ない湯治宿を造ろうと決意し、実家の土地に湧いた温泉を受け継いで1999年に開業した。
自分の農家の池を改造した、自慢の手作り露天風呂。源泉を100%利用し、一切循環させないかけ流しの湯。料理は天然素材を使用し、無農薬で米や野菜を栽培する他、自ら捕った海山の幸を湯治客に提供している。
「群馬県・草津温泉」
言わずと知れた天下の名湯・草津温泉に古くから伝わる温泉療法が"時間湯"。しかし、その入浴方法は秘された部分が多く、一般にはあまり知られていなかった。その時間湯が、アトピーで苦しむ患者たちに注目され、特に若い人たちが草津に集まっている。
指示と号令が絶対とされる湯長の下で行われる時間湯は、48℃という高温の湯に3分間じっと浸かるというもの。草津に数ある共同浴場において、現在でも時間湯を行っているのが「地蔵の湯」と「千代の湯」で、それぞれの湯長が伝統を引き継いでいる。
湯治に人生を捧げた湯長や、時間湯でアトピー治療を行う患者たちの生の声を取り上げると共に、積極的に湯治客を受け入れるためにウィークリーマンションを作るなど新しい湯治のスタイルを確立させようと活動する「湯治の会」グループなどにスポットを当て、これまで公開されることのなかった本物の"時間湯"の風景をお送りする。

