幸せな笑みを湛える花嫁、ドレスを着飾ってはしゃぐ女友だち、事務的にビデオ・カメラを回す業者のカメラマン…。マンハッタンのクラシックなホテルのバンケット・ルームで、今夜はウェディング・パーティが開かれていた。
少し場違いな雰囲気を漂わせて、退屈そうにテーブルに着いている彼女。壁にもたれて彼女を眺めている彼。席を立ち、喫煙可能なエリアを探して、やっとひと気の無いホールを見つけて煙草に火を点けた彼女に、シャンパングラスが差し出される。先ほどの彼だ。「お酒は飲まないわ」。「煙草は吸うのに?」。
「招待客の男とワケありなの」。「聞きたいな」。「退屈な話よ」。他人のふりをして会話を楽しむ二人は、10年ぶりに再会した元カップル。今はロンドンで暮らす彼女。彼は、ここNYで弁護士として成功していた。「どうしてここへ?」と彼。「ひとつは好奇心。もうひとつは“来るべきじゃなかった”と悟るためかしら」。
花嫁がブーケを投げる儀式も済んだ。バンケット・ルームからラストダンスを告げる声が聞こえてくる。「踊らないか?」。「ここでなら」。誰もいないフロアで、二人だけのスローダンス。配膳係が片付けを始め、パーティは終わった。「去年までずっと、街角で君の姿を探してたよ」。
「明日の朝、6時の飛行機でロンドンに帰るの」。彼女の客室に向かうため、エレベーターを待つ二人。「乗ったら引き返せないわ…」彼女と彼。夜明けまでは数時間…。