どしゃぶりの雨の中、地面を嗅ぎながら前へ前へと進むシェパードたち。ラブラドール・リトリーバーのエルフもまっすぐ進んでいく。香川県警の捜索隊にあきらめの空気が流れる中、黙って先を進むエルフと訓練士の望月遼一(遠藤憲一)。そして・・・遂に行方不明の女の子を発見! TVでそのニュース映像を見ていた8才の杏子は、母・園子(浅田美代子)に叫んだ。
「おとうちゃんとエルフや!うちな、大きいなったらおとうちゃんみたいになる!」
それから、10年後。成長した杏子(夏帆)は、亡き父のような訓練士になるという希望を胸に「番場警察犬訓練所」の門をくぐった。ところが、早速一日目から寝坊。所長の番場晴二朗(寺脇康文)に叩き起こされた。番場の妻・詩子(戸田菜穂)に笑われ、2人の子供である圭太(広田亮平)と新奈(大野百花)には、いつまでもつか、賭けの対象にされる始末である。
見習い訓練士としての一日が始まった。先輩の訓練士・田代渉(山本裕典)に教えてもらい、まずは「犬出し」である。犬出しとは、犬たちを排便所で用便させ、犬房の掃除をすること。その後は、餌やり、ゴミ捨て、臭気選別の布の洗濯、事務所掃除、家事手伝い、そしてまた犬出し・・・朝5時に起きて、寝るのは夜中!杏子は、ふと、奥の犬房に目を留めた。そこには、エルフと同じきなこ色の子犬、生後間もないラブラドール・リトリーバーがうずくまっていた。体が弱く、餌もよく食べられない子犬が心配でならない杏子は、仕事を終えた後、夜通しなで続けた。「きな子、元気になって一緒に遊ぼな」と呼びかけながら。
翌朝、徹夜の看病のお陰か、「きな子」は自ら餌を食べ始めた。喜ぶ杏子の横で番場は、ここに置いておけるのは警察犬にする犬だけ、この犬は無理だ、と告げる。「私が、きな子を警察犬にします!」思わず口走る杏子。 見習い警察犬「きな子」と見習い訓練士「杏子」。新奈に、漫才コンビ「きな子とあん子」と笑われながらも、杏子は絶対にあきらめるつもりはなかった。
2年目の春―。渉が訓練しているシェパードのジャックと一緒に、きな子と訓練をしている杏子。優秀なジャックに対し、きな子は平均台から落ちるわ、ブリッジも跳ばずに潜るわ、前途多難である。きな子に厳しく接することが出来ない杏子に、番場は、きな子はペットではない、お前は訓練士にならなければならないと厳しく叱る。 そんな頃、犬の訓練計画や、癖などを記した日誌を杏子に残し、渉が突然訓練所を去ってしまう。実家の製麺所を継がなければならなくなったのだ。誰よりも訓練士になりたかった渉の気持ちを察し、杏子はひとりで懸命に犬の世話を続けた。その様子を見ていた番場は、数ヵ月後に開催される訓練発表会に出てみろと告げる。渉の残したノートを元に、きな子の訓練計画を練る杏子。
訓練会当日、警察署長の桜庭(平田満)や番場一家が見守る中、緊張と期待の面持ちでブリッジ競技へと進む。シェパードたちが華麗に障害物を飛び越している。いよいよきな子と杏子の出番だ。一緒に駈け出した一頭と一人は、ブリッジをジャンプするも、きな子は顔面から地面に落下!リードを握っていた杏子もつられて頭からズッコケたのだった・・・。
その夜、テレビでその模様が放送され、すっかり落ち込む杏子。きな子のせいにする杏子を、番場は一喝し、訓練所に連れ出す。ブリッジを前にジャックと飛んでみろと命じる番場。渉とは飛べたジャックが、杏子とは全く飛ぼうとしない。番場が一緒だと、ジャックは見事にブリッジを越えた。「未熟なのはお前だ。そんな奴にきな子を任せられるか!」傍らに佇むきな子を見つめ、杏子は宣言した。「・・・2ヶ月後の試験、きな子を絶対合格させます」
訓練会以来、すっかり「ズッコケ見習い警察犬」として有名になったきな子。警察署の交通安全イベント犬としても声が掛かるようになった。しかし、杏子は以前よりもっと厳しく訓練を重ねていった。全てはきな子を立派な警察犬にするために。
ついに迎えた警察犬試験の日。杏子ときな子は臭気選別に臨むが、4回中4回とも不正解。どうしてエルフみたいに分かってくれないのか、と悔し涙を流す杏子。 その時、きな子が突然倒れた。杏子は、試験で頭がいっぱいで、きな子の体調まで気付かなかったのだ。車で病院に運ばれるきな子を、立ちつくして一人見送る杏子・・・。
病院から戻ってきたきな子に、杏子はそっと近寄った。横たわりながらも嬉しそうに尻尾をふるきな子。杏子はぎゅっと、きな子を抱きしめた。「きな子、私な、子供のころからずっと訓練士になりたかったん。・・・私の夢に勝手に巻き込んでしもたな・・・ごめんな。警察犬にする、言わんかったら、厳しい訓練なんかせんで良かったのに・・・しんどかったやろ・・・」
数日後、杏子は番場に訓練所を辞めると告げる。きな子はみんなに愛されて生きた方が幸せだ。どんなに頑張っても、努力しても出来ないものは出来ないのだ・・・。詩子、圭太、新奈が見守る中、きな子に別れを告げる杏子。訓練所を後にする杏子の背中にきな子の悲しげな声がいつまでも響く。後から後から涙が溢れ出す杏子。
きな子と離れて暮らす日々。生きる道さえも失いかけた頃、ある事件が起こる。
きな子と杏子は再び夢を取り戻す日が来るのだろうか?
(c)2010「きな子〜見習い警察犬の物語〜」製作委員会
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