「ゲロゲ〜ロ。ゲロゲ〜ロ。ガマの王子はわがまま王子。」
パコは毎日同じ絵本を読んでいて、その絵本を大貫と一緒に読もうとします。しかし、大貫はそんなパコすらも自分が座りたかったベンチに先に座ってたというだけで突き飛ばしてしまいます。でも、翌日になるとパコはケロっとした顔でまた元のベンチで絵本を読んでいます。何だか調子が狂わされる大貫ですが、あるとき自分が忘れた純金のライターをパコが自分の物のように持っていたことに腹を立て、遂に殴ってしまいます。
なぜパコは大貫のライターを自分の物のように持っていたのでしょう?
実はパコは交通事故の後遺症で記憶が1日しか保てなくなっていたのです。明日になると今日を忘れてしまう、ダ・カーポな女の子だったのです。しかも、その事故で両親を亡くしていたのですが、そのことさえも知らずに毎朝枕元に置いてある絵本をママからの誕生日プレゼントだと思って、毎日毎日読んでいたのでした。だから、前日にライターを拾ったことも忘れてて、たまたま自分のポケットの中に入っていたライターを大貫に渡していたのでした。そんな女の子を大貫は殴ってしまったのです。さすがの大貫もこのことを知って反省をし、それからパコと触れ合おうとします。そして、大貫が謝ろうとパコのほっぺに触れたとき、驚くべきことが起こります。
「おじさん…昨日もパコのほっぺに触ったよね?」
昨日のことを覚えていないはずのパコが大貫のことを覚えていたのです。
医者の浅野もそれはありえないと言いましたが、確かにパコは大貫のことを覚えていました。他の誰のことも覚えなかったのになぜか大貫だけ。よりにもよって大貫だけ。
そこから大貫は他人を押しのけてきた自分の生き方に疑問を感じ始めます。そして、ママはもういないのに来る日も来る日も絵本を楽しそうに読むパコの姿を見て、大貫は人生で初めての涙を流します。次から次へと溢れ出てくる涙に戸惑い、どうしたらこの涙は止められるんだ?と訊く大貫に、浅野は一言答えます。
「簡単です。いっぱい泣けば止まります。」
大貫は子供のように泣きじゃくります。
そうやってありったけの涙を流したあと、大貫はパコのために何かしてあげられないかと思い始めます。胸の発作が激しくなってきてどうやら自分はそう長くはないと覚悟し始めた大貫は必死に考えます。そして、病院で毎年夏のクリスマスイベントとして行われる演劇でパコが読んでいた絵本「ガマ王子対ザリガニ魔人」をみんなで上演することを思い付きます。
ところが、もちろん他の人たちは大反対。それもそのはず、それまでさんざんワガママ放題を尽くしてきた大貫にそう簡単に賛成してくれるわけがありません。特に室町は演技の経験があるにもかかわらず猛反対。
「意味ねーだろ!どーせ、すぐ忘れちまうガキのために何で芝居なんか…。」
でも、それまで誰の心にもいたくなかった大貫が、ただパコの心に残りたい一心で、一人頑張って何とかみんなの協力を得られるようになります。大貫に首を絞められた木之元も、かわいいメダカちゃんの役を嫌がっていたタマ子も、本当は役がなかった堀米も、そして演技に自信を持てなかった室町までも、み〜んなみんなやる気になります。
「私はただ、この子の心にいたいんだよ。」
そして、ついにサマークリスマス「ガマ王子対ザリガニ魔人」が始まります。
すると、劇が進むうちにパコの目には絵本の中と同じ衣装を着たみんなが本当の絵本のキャラクターのように見えてきます。ワガママ王子のガマ王子。ママはガマ姫、お池の仲間のアメンボ家来やミズスマシ君、タニシにサカナにメダカちゃん。ヤゴも出てきてこんにちは。コワイコワイ沼エビの魔女に大きな大きなザリガニ魔人。
さぁ、どーする?ガマ王子?!どーなる?お池の仲間たち?!
ワクワクドキドキ♪
でも、その舞台の裏で、悲しい運命がすぐそこまで来てるのでした・・・。 |