3月26日(水)放送
五木 寛之
作家

1932年福岡県生まれ。教師だった両親とともに朝鮮半島にわたる。敗戦後引き揚げて、1952年に上京。早稲田大学露文科中退。その後、作詞家、ルポライターなどを経て、66年「さらばモスクワ愚連隊」で第6回小説現代新人賞、67年「蒼ざめた馬を見よ」で第56回直木賞、76年「青春の門 筑豊篇」ほかで第10回吉川栄治文学賞を受賞。代表長編作に「デラシネの旗」「風の王国」「親鸞」など。代表エッセイに「風に吹かれた」「百寺巡礼」「大河の一滴」など。20年前に執筆し累計600万部の「生きるヒント」の新版を去年暮れからシリーズで出版中。

手ぶくろを買いに
手ぶくろを買いに
新美 南吉 作 黒井 健 絵
(偕成社)

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五木寛之さんが今なお読み続けている絵本「手ぶくろを買いに」。小さいころ、学校の図書館で手に取った方も多いのではないでしょうか。

寒い冬、母狐が子狐を気遣い、人間の街へ手袋を買いに行かせる物語。子狐は母の注意に従って、警戒しながら店へと向かいますが、最後は無事に手袋を手に入れ、母のもとへと戻ります。子狐が「人間は怖くなかった」と報告すると、母は「ほんとうにそうかしら」とつぶやいて、物語は終わります。

この不思議な余韻こそ、この絵本の魅力だと五木さんはいいます。
「何かわからないものが残るとか、喜びとかうれしさの背景に何か不安が尾を引くというのが、本当の童話ではないか」

五木さんはさらに、この物語に新たな読み方を見つけだします。

手袋を買うため、子狐と人間とが直接話をする緊張の場面。店の主人は子狐が化かしにきたのだと疑いますが、お金が本物だと分かると、手袋をすぐに子狐に持たせてやります。ホッとする場面のはずが、五木さんが感じたことは...

「資本主義みたいなものが 作者の気が付いていないところで、後ろに影を落としている。お金を手にしたら相手が人間だろうと狐だろうとタヌキだろうと狼だろうと大事なものを渡すかもしれないという怖さが入っている」

作者の新美南吉はこんな読まれ方を考えもしなかっただろうという五木さん。作者の意図を超え、読者が好きに読み解く「無意識の領域」こそが、本の醍醐味だというのです。

「無意識の領域が多い作家ほど豊かな才能の作家だといえる。自分の意図してないところで読まれて感動を与えている」「読み手の体験にあわせて、その人その人の読み方ができること」こそが、本の魅力なのです。


五木寛之氏 ウェブ限定ロングインタビューー

関連書籍

新版生きるヒント2

新版生きるヒント2
五木 寛之
(学研パブリッシング)

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五木さんが20年前に執筆し、累計600万部という「生きるヒント」。新版を去年暮れからシリーズで出版しています。五木さん自身が生きる中で感じたことを、淡々と綴り、人の心のマイナスの部分にも光をあてています。

「嘆くとか、泣くとか、涙するとか、悲しむとか、いろいろある。歌謡曲的なセンチメンタリズムもすごく大事だと昔から言い続けてきて、今もそう思う」と五木さん。

「感傷的であること、思い出にふけるということ・・・他日な生きづらい時代で生きていくには、そういう気持ちをしっかり持っていないと 心がぽきっと折れるのではないか」

「『元気元気』だけでなく、心から悲しむとか 心から泣くとかいうことは、とても大切です」

森本智子キャスターからのご挨拶(約2分半)
3月26日放送で、「スミスの本棚」は最終回を迎えました。取材前にはいつもほぼ徹夜で本を読み込み、本にたくさん付箋をつけてインタビューに臨んだ森本キャスター。その準備があったからこそ、ゲストの方々も心を開いていろいろな話をして下さいました。森本キャスターの「スミスの本棚」への思いと、視聴者の皆さまへの感謝の気持ちを、自らの言葉で語ります。どうぞご覧ください。


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