2017年6月5日

『WBS』の新テーマ曲、骨組みとなるのは「切なさ」 作曲・新井誠志さんインタビュー

wbs_op_01.jpg

 毎週月〜金曜日夜11時から放送中の経済ニュース番組『ワールドビジネスサテライト』(以下WBS)のオープニングテーマ曲が、iTunes Store、Amazon Musicにて配信されている。このテーマ曲を作曲したのは、『ガイアの夜明け』や『カンブリア宮殿』などのサウンドデザインを手掛けた新井誠志さん。『WBS』のテーマ曲はどのように生まれたのか、どんな思いが込められているのか──。同番組の野口雅史プロデューサーを交えて、お話を伺った。


wbs_op_02.jpg

■世界中のニュース番組の音楽を研究


──昨年11月から番組で使用されている『WBS』のテーマ曲の配信がスタートします。そもそも新井さんと野口さんは長いお付き合いなんですよね。


新井:僕が音楽を担当した『ガイアの夜明け』(野口さんがチーフプロデューサーを務めていた)が今年で15周年だから、それくらいの付き合いになりますね。


野口:やっぱり長年の付き合いのなかで築いてきた信頼関係というのも大きいんですよ。だからこそ去年の11月に『WBS』をリニューアルするにあたって、テーマ曲は新井さんにお願いしたいなと番組改編チームのメンバーとともにそう考えました。


──どういう形でオファーをなさったんですか?


野口:スタジオセットやオープニング映像も含めて、全体的にリニューアルするタイミングだったので、トータル的な世界観を作り上げていく中でテーマ曲をお願いした感じです。具体的には、グローバルな広がりを感じるものにしたいという点と、経済ニュースだからといって、無機的なものにならないように、人間らしいあたたかみを感じるようなものにしたいという点。そして、夜のニュース番組なので、なんとなくリラックスできるようなイメージでお願いしました。あと、印象に残るようなフレーズにして欲しいと。


新井:これまでいろいろな番組の音楽を担当してきたんですが、毎日放送されるニュース番組のテーマ曲は初めてだったんですよ。その時点で結構プレッシャーがありましたね。すごく楽しい挑戦ではあったんですけど、自分にできるのだろうかっていう怖さもあって。やる気満々なんだけど、どこから手を付けていいか分からない、みたいな感じでしたね。


──実際にはどういった作業から始めたんですか?


新井:「ニュース番組の音楽ってどうなってんだ?」ということを知るために、まずはいろいろなニュース番組を録画して見ました。それは日本の番組だけじゃなく、BBCとかCNNとか、海外の番組もチェックしましたね。今放送されているものだけでなく、過去の番組も調べましたよ。とにかく最初は曲を作るということではなく、ニュースの音楽を研究するということに専念しましたね。


──具体的にニュース番組の音楽はどういう傾向にあったのでしょうか?


新井:ニュース番組に対してなんとなく固定観念を持っている人も多いと思うんですよ。使われる音楽も無機質で、それこそ「お知らせ音」みたいな音と単調なリズムで構成されている音楽──というイメージですね。BBCとか欧米のニュース番組は確かにそういうものが多かったです。でも、近年「日本のニュース番組では、ものすごくポップな楽曲が使われている。オープニングテーマがモロにジャズな番組もありますしね。最近の傾向から考えると、かつての「お堅いニュース番組」みたいな固定観念は取っぱらったほうがいいのかなっていう迷いはありましたが、あえてWBSには、そういった固いニュース的な要素も必要だと思いました。イントロのモールス信号的な音や、提供部が、そういったフレーズにあたります。煽るつもりはないですが、フレーズのどこかに緊迫感も要素として必要だと思いました。災害情報や緊急速報もあるわけだし、ただ親しみやすくポップではいけないと考えました。やはりニュース番組ですから。


wbs_op_03.jpg

■骨組みとなるのは切ないメロディー


──作曲するにあたって、いちばん意識した部分はどういうところですか?


新井:ニュース番組っていうものは、毎日いろいろな映像が目まぐるしく畳み掛けてくるわけじゃないですか。だから、せめてオープニングのテーマ曲は、激しすぎないもののほうがいいのかなという気持ちはありましたね。基本となっているのは、どこかあたたかい雰囲気で、なおかつ切なさを感じるメロディー。完成した楽曲はリズムも入って、楽器もたくさん乗っているので、元気な印象になっていますが、骨組みとなるのは切ない旋律。その部分は、強く意識しました。


──完成したテーマ曲を聞いて、野口さんはどう感じましたか?


野口:まず、新しくなるWBSのイメージにぴったりだと思ったのと、冒頭のフレーズがすごく印象的だなと感じましたね。この部分を聞くだけで「『WBS』が始まったな」と感じられるというか。やはりプロデューサーとしては、テーマ曲でいかに番組を強く印象づけるかということを考えるんですよ。実質、番組のオープニングで流れるのは15秒くらいですが、その15秒のフレーズがスッと頭に入ってきたので、これはバッチリだなと。


新井:頭の15秒でインパクトを残すというのは、いちばん苦労した点でしたよ。その15秒でグルーバルな雰囲気とか、あたたかみとか、番組の上質感とかを表現してほしいというのが野口さんのオファーだったわけですからね。これは本当に大変でしたよ。


──相当高いハードルを設定されてしまったという感じですね。


新井:まあでも、製作期間は意外といただいていので。3か月くらい...。


野口:...そんなにはなかったと思いますよ。


新井:ですね。意外とタイトなスケジュールでした(笑)。でも、実際に作曲の作業を始めたのはレコーディングの直前でしたよ。その前の研究の時間がとにかく長かったですね。


wbs_op_04.jpg

■テーマ曲が作り上げた番組の世界観


──ご自身で作ったテーマ曲も含めて、リニューアルした『WBS』はいかがですか?


新井:とても落ち着いた世界観ですごく好きですね。大江(麻理子)さんと大浜(平太郎)さんの安心できる雰囲気も大好きです。いろいろなニュースがあるけど、決して煽るようなことはなく、冷静に伝えていると思うんですよ。それってニュース番組としてはすごく大切なことだと思っていて。そういう雰囲気作りにテーマ曲という形で関われたのはうれしいですね。


野口:番組の世界観作りという点では、テーマ曲の存在はとても大きかったと思います。新井さんには、仮で作ったオープニングCGを見ていただいて、そこからイメージを広げていただいたんですが、テーマ曲が完成したら、曲に触発される形でオープニングCGも少し変わりましたからね。


新井:テレビ番組の場合は、やっぱりプロデューサーがどういうイメージを抱いているかということが、何よりも重要なんだと思いますよ。確かにそれを形にするのは難しい作業なのかもしれないけど、野口さんとは15年間一緒に仕事してきたなかで、解り合える部分がたくさんあるから、今回のテーマ曲もいいものになったんだと思いますね。


wbs_op_05.jpg

■戦士の逸品はストラトキャスター


──新井さんはかつてテレビ東京で放送されていた『戦士の逸品』という番組の音楽の担当をなさっていましたが、新井さんがお仕事をするにあたってこだわりを持っている"逸品"を紹介していただけないでしょうか。


新井:やはりギターですね。(取材場所となった新井さんの仕事場)ここには10本弱くらい置いてあって、ほかにもまだまだあるんですけど、特にお気に入りなのは、このピンク色のフェンダーのストラトキャスター。大量生産品ではなくて、ギター作りの職人さん(ビルダー)が作ったもので、作曲するときも必ず使いますし、今回のテーマ曲のレコーディングでも使っています。


野口:最初にデモ音源を作った時は、このギターでしたか?


新井:デモはストラトキャスターではなく、フラメンコギターですね。僕は、普通のクラシックギターとか、アコースティックギターではなく、フラメンコギターが好きなんですよ。音にパンチ力があるのが、お気に入りです。あと、逸品ではないけど、こだわりというか、民族音楽の要素も好きなんですよ。


野口:WBSのテーマ曲でも入ってますよね。


新井:バックにコーラスというか、ボーカルが入っているんですけど、それはまさに自分が好きな民族音楽をイメージしています。「ブルガリアンボイス」みたいな雰囲気です。『ガイアの夜明け』のエンディング曲の『夜空の花』でも、民族音楽の要素は入れていますね。そういう僕のこだわりも感じていただけたらうれしいですね。


●新井さんプロフィール
新井誠志 Satoshi Arai
東京都大田区出身
オリジナル作品には「ガイアの夜明け」エンディングテーマ『夜空の花』 、「未来世紀ジパング」テーマ曲、「ルビコンの決断」テーマ曲、「パリ マルモッタン美術展特別番組 『印象派 ベルトモリゾを訪ねて〜』」テーマ曲等がある。
近年、サウンドプロデュース、サウンドデザインを手がけた作品には「ガイアの夜明け」、「未来世紀ジパング」、「カンブリア宮殿」、「市川海老蔵にござりまする」、「新しい皇室の時代へ〜両陛下58年の軌跡〜」、「ノンフィクションW」、「情熱大陸」、「NNNドキュメント」、「BS世界のドキュメンタリー」、「J.League オフィシャルアンセム THE GROLY」、「J.League Awards」等がある。


●番組情報
『ワールドビジネスサテライト』
放送日時:毎週月曜日~金曜日 夜11時~放送中
出演者:大江麻理子、大浜平太郎、相内優香、北村まあさ、片渕茜
番組HP:http://www.tv-tokyo.co.jp/wbs/


●配信情報
※外部サイトにリンクします。
iTunes Store
Amazon Music

関連カテゴリー

この記事を共有する