木曜洋画劇場

ブレイド3

 人気ヴァンパイア・アクションのシリーズ最新作『ブレイド3』が地上波初登場。この機会にそのルーツをチェックしてみよう。

 この主人公『ブレイド』は、もともとは『スパイダーマン』で知られるマーベル・コミックスのキャラクター。1973年刊行のホラー・コミック「Tomb of Dracula(ドラキュラの墓)」第10話にサブ・キャラとして登場したのが初出。ちなみに『ブレイド2』でノーマン・リーダス演じるスカッドが読んでいるのがこのコミックだ。ブレイドはこの作品で人気を集め、彼が主人公のシリーズ『ブレイド』が生まれた。ブレイドの基本設定はコミック版も映画版とほぼ同じ。ブレイドは彼を妊娠中の母親が吸血鬼に噛まれたために、吸血鬼の能力の一部を持つようになってしまう。ただし細部の設定には違いがあり、コミック版では出身地は英国ロンドン、1929年10月24日生まれ。かなりの高齢だが、吸血鬼の性質ゆえに外見は若く見える。映画版では生年月日は不明だが、アメリカのシカゴ生まれ。コミックでは少年期をジャズのトランペッターでもあるヴァンパイア・ハンターと共に過ごしたため、彼もジャズ・トランペットを演奏するが、映画では音楽の能力はなさそうだ。しかし、トレーニングによって超人的な格闘能力を身につけたこと、そして、出生時の事情からヴァンパイアを憎んでヴァンパイア・ハンターとなったのは、コミックも映画も同じだ。

 この「吸血鬼もの」と「ハードな格闘アクション」の融合という本シリーズの魅力は、コミックも映画も共通。この魅力は、吸血鬼映画の進化という観点からみても興味深い。

 吸血鬼映画の歴史は古く、1922年にF・W・ムルナウが監督した『吸血鬼ノスフェラトゥ』に始まるが、元々はブラム・ストーカーが1897年に出版したゴシック小説「吸血鬼ドラキュラ」が原型的イメージ。ユニバーサル・ホラーでベラ・ルゴシが演じた『魔人ドラキュラ』(31)を筆頭にゴシック・ホラー的な作品が多かった。が、モダン・ホラー小説の流行に呼応して、85年に現代の普通の町を舞台に少年と隣に住む吸血鬼の戦いを描く『フライトナイト』が登場。これをターニングポイントに、87年には3人の少年たちが吸血鬼集団を退治する『ロストボーイ』や、町から町へ移動する吸血鬼たちの集団を描く『ニア・ダーク/月夜の出来事』などが公開され、その後は現代的なヴァンパイア映画が続々製作された。

 そして、99年の『マトリックス』がクンフー・アクションをハリウッド・アクションに融合させるのに先駆けるように、これらのモダン・ホラー系ヴァンパイア映画に、クンフー格闘技アクションの魅力をプラスして進化させたのが98年の『ブレイド』だともいえるだろう。この進化はここで途切れたわけではない。『ブレイド』の格闘アクション路線を継承しつつ、女性を主人公に据えたのが、03年に始まったケイト・ベッキンセール主演の『アンダーワールド』シリーズなのではないだろうか。

 しかし、なによりもこのシリーズの魅力といえば、『エイリアン』シリーズ同様、3作とも監督の個性が反映されたそれぞれ異なるテイストの作品になっていることだ。

 98年の第1作『ブレイド』は英国出身のSFアクション『デスマシーン』のスティーブン・ノリントンが監督、敵はスティーブン・ドーフが演じる母の仇の吸血鬼フロスト。フロストが倒そうとする旧世代の吸血鬼役でウド・キアが出演。ノリントン監督はAphex TwinやJunkie XLなど当時人気のテクノ系楽曲を用いてクールでスタイリッシュなアクションに仕上げた。深夜のテクノクラブに血のシャワーが降るなど、当時34歳の英国監督らしいクラブ・カルチャーの熱気を反映させたシーンも印象的。後にこのノリントン監督は、03年の『リーグ・オブ・レジェンド/時空を超えた戦い』が主演のショーン・コネリーのわがままのために思うように撮れず、監督引退宣言をしてしまうのだが。

 02年の『ブレイド2』の監督はメキシコ出身、幻想的な怪奇譚『デビルズ・バックボーン』(01)や超常現象ネタのアメコミ・ヒーローもの『ヘルボーイ』のギレルモ・デル・トロ。この秋日本公開の新作『パンズ・ラビリンス』(06)はアカデミー賞で3部門(撮影賞、美術賞、メイクアップ賞)受賞の快挙。『ブレイド2』もチェコのプラハでロケして、デル・トロ好みのダークで東欧的な装飾を施し、その一方で格闘場面の振付けと敵の一員役にアクション俳優ドニー・イエンを起用。近親相姦モチーフを含めて東欧の闇と、クンフー系アクションを融合させた。

 そして今回放送の『ブレイド3』の監督を務めるのはデビッド・S・ゴイヤー。『ブレイド』シリーズ全作の脚本を担当、第2作以降は製作も務める彼は、『THE CROW/ザ・クロウ』(96)、『ダークシティ』(98)、『フレディVSジェイソン』(03)の脚本を担当、『バットマン ビギンズ』(05)の原案と共同脚本を務めた人物。ゴイヤーが本作で試みたのは、前作『ブレイド2』とは対極にある現代的なハード・アクション。現代都市を舞台に、カー・アクションや銃撃戦がド派手に展開していく。

 本作のもうひとつの見どころは、多彩な共演者たち。まず、ブレイドに魅力的な相棒が2人登場。ひとりは、前2作でも相棒だったウィスラーの娘アビゲイル。このキャラを演じるのが『テキサス・チェーンソー』(03)、『ステルス』(05)のセクシー美女ジェシカ・ビール。彼女は現在、キャメロン・ディアスと別れたばかりの人気ミュージシャン、ジャスティン・ティンバーレイクとの交際も話題になっている。もうひとりは原作コミックにも登場する武器の達人ハンニバル・キング。このキャラが語るドライなジョークも今回の新テイスト。演じるのは『悪魔の棲む家』(05)、『スモーキン・エース/暗殺者がいっぱい』(07)のライアン・レイノルズ。こちらも人気ミュージシャンのアラニス・モリセットと交際していたが、昨年破局している。

 そして今回の敵キャラ、吸血鬼の始祖ドレイクを演じるのが、映画公開時は無名だったが、今やTVシリーズ「プリズン・ブレイク」で主人公の兄を演じて人気者になったドミニク・パーセル。本作ではスキンヘッドではなく長髪の彼の姿が見られる。そして女吸血鬼ダニカを演じるのは『スクリーム3』(00)のパーカー・ポージー。彼女が『スーパーマン リターンズ』(06)でケビン・スペイシー演じるレックス・ルーサーの愛人キティ役に抜擢されたのは、本作での怪演が評価されたからとの噂もある。こうして3作それぞれのテイストの違いを比較しながら見ると、このシリーズがもっとおもしろくなるはずだ。

 ちなみに、『ブレイド』シリーズと「木曜洋画」は縁が深い。まず、3作とも「木曜洋画」が地上波初登場。次に注目なのは「木曜洋画」オリジナルの吹替版キャスト。ウェズリー・スナイプス=大塚明夫、クリス・クリストファーソン=大塚周夫の親子競演が泣けると大評判だった。そこで『2』では、ブレイドと愛し合う敵族のヒロインに沢海陽子(大塚明夫夫人)まで起用、これがまた声優ファンに大好評だったのだ。さらに、ブレイド役のウェズリー・スナイプスを“アクション番長”と命名したのも、実は「木曜洋画」の『ブレイド』(2度目のオンエア時)。これ以降、『ブレイド』シリーズ以外でも、「木曜洋画」はウェズリーのキャッチフレーズといえば“番長”ひとすじ。ウェズリー・スナイプスは『ブレイド』によって“アクション番長”となったのだ。

(平沢薫)
協力:(株)フィールドワークス supported by allcinema ONLINE