木曜洋画劇場

ランボー

 『ロッキー・ザ・ファイナル』(06)で、見事復活を果たしたシルベスター・スタローン。彼のもうひとつの大ヒットシリーズが、ベトナム帰りの元グリーンベレー、ジョン・ランボーの活躍を描く『ランボー』シリーズ。その第1作『ランボー』が、HDデジタルリマスター版にて木曜洋画に登場! 2008年5月に公開予定のシリーズ最新作『ランボー4(仮)』(原題:John Rambo)の動向も気になる今だからこそ、改めて記念すべき第1作に目を向けてみたい。

 ロッキー山脈の白い頂を仰ぎ見る田舎町に、アーミージャケットに身を包んだ流れ者が現れる。彼の名はジョン・ランボー。食事に立ち寄ろうとしただけの彼を、町の警察署長ティーズルは「気にくわない」という理由でブタ箱にぶち込む。警官からのいわれのない暴力によりフラッシュバックする戦場の記憶……反射的に警官たちを叩きのめし警察署を脱出するランボー。彼はバイクを奪い、付近の山中へと逃げ込む。怒りに燃えるティーズルたちは犬とヘリを放ち大規模な山狩りを行うが、ランボーは高度なサバイバル・テクニックを身につけた元特殊部隊員、ベトナム戦争の英雄だった……。

 “ランボー”と聞くと、「あぁ、スタローンのマッチョなアクションでしょ~」とほとんどの人が連想するだろう。いや、それも間違いではない。事実、80年代のレーガノミックス(共産主義圏を敵対視するレーガン大統領が推し進めた、軍事費増強等の政策)に呼応するかのように、“ランボー”は右傾化を極め、シリーズ第2作『ランボー/怒りの脱出』(85)ではベトナム軍とソ連軍を攻撃、続く『ランボー3/怒りのアフガン』(88)では、アフガン・ゲリラと共闘してソ連軍を撃退するまでになっている(2作の間の86年には『ロッキー4』でロッキーがソ連ボクサーとモスクワで対決)。こうした経緯から、本シリーズがそうした印象を持たれてしまったのも仕方のない話だ。しかも『ランボー4(仮)』は、描写がさらに残虐になるというのだから。

 しかし、82年に公開された第1作『ランボー』は、明らかに違うトーンを放っている。

 それは、72年に出版されたデビッド・マレルの原作小説「一人だけの軍隊」の影響によるものが大きい。そこでは、完全無欠の戦闘マシーンであるランボーの凄まじさが描かれるとともに、ベトナム帰還兵が社会から捨てられるさま、戦うことの無意味さが見事に描かれる。しかもラストでランボーは、元上官・トラウトマン大佐によって引導を渡され爆死するのである。

 「戦場では100万ドルの兵器を任せてくれたのに、ここでは駐車場係の口もねえ!」

 ラスト近く、ランボーがトラウトマンに涙ながらに訴えかけるシーンはまさに原作テーマの真骨頂。戦争が人間を変えてしまう悲劇、若者が閉塞感から抜け出せない苦しみを描いた点でいえば、『ディア・ハンター』(78)、『イージー・ライダー』(69)などの反戦映画、アメリカン・ニューシネマの流れを踏まえている……とは言いすぎだろうか。(実際に、映画も“ランボーが大佐に銃を握らせ自分を撃たせる”という自殺バージョンが撮影されたが、モニター試写の結果が不評だったことと、スタローンが続編を望んだことで現在のバージョンになったとか。そして、完成度の高い原作を執筆したマレルも、その後は続編のノベライズに手をつけて……と、“おいおい”と言いたくなる展開となるが)

 もちろん、アクション映画としての展開も素晴らしい。冒頭のバイク・アクション、サバイバル・ナイフを駆使したゲリラ戦、トラックでのチェイス、そしてM60重機関銃でたたみ掛ける迫力の銃撃戦。シーンを重ねるごとに装備を増やし、追われる者から追う者へと転じていくランボーの姿から、どんどん目が離せなくなる。製作と脚本にも名を連ねた、当時36歳のスタローンが生身を懸けて挑んだアクションの数々は必見。断崖絶壁から飛び降りるシークエンスには自らも挑戦し、肋骨を3本骨折。入院が長引き『ロッキー3』の完成が遅れた、というエピソードもある。

 監督は、のちに『地獄の7人』(83)で『ランボー/怒りの脱出』(85)へと続く“MIA(戦争時行方不明者)もの”の流れを作ってしまうことになるテッド・コッチェフ。ランボーが唯一信頼する上官トラウトマン大佐には『白いドレスの女』(81)、『サブリナ』(95)のリチャード・クレンナ、ティーズル署長には『アサルト13 要塞警察』(05)のブライアン・デネヒーが扮し、警官の1人ミッチとして、若き日のデビッド・カルーソー(「CSI:マイアミ」)も顔を見せている。

 音楽は『パットン大戦車軍団』(70)、『エイリアン』(79)、『トータル・リコール』(90)、『L.A.コンフィデンシャル』(97)などなど、作品名を挙げたらきりがない映画音楽の巨匠、ジェリー・ゴールドスミス。彼は、哀愁ただよう主題歌「IT'S A LONG ROAD」の作曲も手掛けている。

 “男の教科書”『追撃者』(00)、“男のリトマス試験紙”『コブラ』(86)、“男のカーナビ”『ドリヴン』(01)……近年の「木曜洋画」では、“男の○○”が定番化しているスタローン主演作。果たして今回の『ランボー』は!?

(追記)
その後、今回の『ランボー』には“男の○○”が付かないことが判明……期待していただけに残念な気持ちではあるものの、聞けば、番組宣伝制作担当のディレクターは、「ランボーは1作目だけは遊んではいけない!」という強い信念を持った人物とのこと。“ロッキー”と並び、スタローンの存在証明といえる“ランボー”というキャラクターの誕生に、最大級の敬意を払う男がそこにもいた!

(村上健一)
協力:(株)フィールドワークス supported by allcinema ONLINE