木曜洋画劇場

フライト・オブ・フェニックス

 1965年の傑作脱出アドベンチャー『飛べ!フェニックス』のリメイクとなるのが本作『フライト・オブ・フェニックス』。砂漠に不時着した輸送機の10人の生存者たちが、暑さと疲労の極限状態のなか、墜落した機体の残骸から新たな単発飛行機を作り出す脱出作戦にすべてを懸ける。果たして、彼らのプランは成功するのか!?

 閉鎖された油田発掘作業員を乗せた、双発の輸送機C-119が巨大な砂嵐に遭遇。操縦不能となった機体は、ゴビ砂漠のド真ん中に墜落する。無線は壊れ、携帯の電波も届かない無人の荒野。歩くこともままならない灼熱地獄に、機長のフランクをはじめ生き残った9人の乗客たちもあきらめを見せかけていた。そんなとき唯一の一般人だったエリオットは、破損していない片方のプロペラエンジンを使い単発機への改造を提案する。「自分は飛行機の設計技師だ」と名乗るエリオットの提案に、フランクはただひとり反対するが、わずかとなった水と食糧、そして一向に来る気配のない救援隊に10人は団結。最後の望みを懸け単発機への改造を開始するが、そんな彼らを砂漠の盗賊たちが狙っていた……。

 『攻撃』(56)、『特攻大作戦』(67)ほか、男臭いアクション映画を撮らせたら右に出るものがいない巨匠ロバート・アルドリッチ監督が65年に発表した傑作アドベンチャーを、自称ヒコーキ大好き『エネミー・ライン』(01)のジョン・ムーア監督が完全リメイク。ストーリーラインはオリジナル作を踏襲しつつ、『マイノリティ・リポート』(02)のスコット・フランクと、『プライベート・ライアン』(98)、『コンフィデンス』(03)で俳優としても活躍しているマルチ人間エドワード・バーンズが現代的アレンジを加えて脚本を完成させた。アルドリッチ組ルーカス・ヘラー(『燃える戦場』(70)、『特攻大作戦』)のオリジナル脚本への敬意もしっかりとうかがえる。

 本作のキャストは、男の体臭がムンムンする(ジェームズ・スチュワート、リチャード・アッテンボロー、アーネスト・ボーグナインなど)メンバーから一転。主人公の機長フランクには宇宙(83年の『ライトスタッフ』)から人体(87年の『インナースペース』)まで、あらゆる場所へ飛んだ経験を持つ(?)、『デイ・アフター・トゥモロー』(04)、『オールド・ルーキー』(02)のデニス・クエイド。また、脱出の鍵を握る謎の乗客で飛行機の設計技師を名乗るエリオットには、『プライベート・ライアン』(98)のジョバンニ・リビシが扮している(彼はオリジナル版のハーディー・クリューガーに敬意を払い、服装から髪の色まで真似ているが、その姿はどちらかというと……97年にブルース・ウィリスが怪演した金髪『ジャッカル』に見える(笑))。さらに、前作では登場しなかった唯一の女性として、『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』(03)で“盾持つ乙女”エオウィンを熱演したミランダ・オットーが登場。何かにつけてフランクに反発する、油田技師ケリーを好演している。

 さて、今作における真の“主役”といえば、やはりそれは銀色に輝くフライングボックスカー(空飛ぶ貨車)、軍用輸送機C-119。“スーパートラック”とも呼ばれるフェアチャイルド社製軍用輸送機で、1950年代に登場し、その後20年間にわたって世界各地で使用され、朝鮮戦争やベトナム戦争などでも活躍した名機だ。製作陣は、レアアイテムと化したこの機を求めて世界中を駆け回り、ついにアリゾナ州トゥーソンにある飛行機の廃棄場で3台を発見。さらにケニアで、政府によって没収されていた4台目を突き止め、ロケが行われたナミビアまで運び込んだのだった。

 開巻一発、ロック・ナンバーにノッて飛翔するアルミ機体の銀の姿は、空の青、砂漠の赤とあいまって、それは見事な美しさ!(ちなみにそのロック・ナンバーは同じFOX映画の『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』(05)で半生が描かれた、ジョニー・キャッシュの「I've Been Everywhere」)。さらに、巨大な砂嵐への突入~脱出、墜落シーンは迫力のVFXと音響効果が相まった本編最大のスペクタクル。『サンダーバード』(04)、『エネミー・ライン』(01)で撮影を務めたブレンダン・ガルヴィンとのタッグは、ジョン・ムーアの面目躍如といったところだ。

 また、今回話題となったのが、オリジナルの監督アルドリッチのひとり息子、ウィリアム・アルドリッチが製作を買って出たこと。親の背中を見て育った彼は62年『何がジェーンに起こったか?』で俳優兼プロデューサーとして映画界入りし、『カリフォルニア・ドールズ』(81)では親父の映画資金を集めるなど、孝行息子の一面も見せる。父親の死後はベルトルッチの『シェルタリング・スカイ』(90)などのラブ・ストーリーにも挑戦していたが、06年8月この世を去り、本作が遺作となってしまった。

 オリジナル作が見せた名優たちの濃密なドラマとテンポとはトーンが異なりながらも、国籍、性別、そして宗教の違う10人がお互いの利害を超えて、一致団結して飛行機作りをはじめることから、物語はがぜん面白くなってくる。ラストに用意された“衝撃の真実!”も、観る者にとってはまた嬉しいサプライズ(これは見てのお楽しみ)。最新VFXによる迫力の映像と、トラブルの連続で途切れることのない緊迫感。さらにマルコ・ベルトラミ(『ダイ・ハード4.0』)のサウンドトラックは、必ずや視聴者を感動のラストに向けて誘い、最後は思わずテレビに向かって「飛べ!フェニックス!」(オリジナルの邦題じゃん)と叫んでしまうはず! ちなみに飛行シーンの一部は、デニス・クエイド自らが操縦したとのことだ。

(高嶺紀章)
協力:(株)フィールドワークス supported by allcinema ONLINE