脚本家 ・ 北川悦吏子さんからのご指名は、この方。
同じく脚本家の 山田太一さんです。
インタビュー場所は、なんと山田さんのご自宅。
優しい奥様に、美味しいお茶菓子まで頂いてしまい・・・
実家に戻ったような温かい雰囲気中で、インタビューは行われました。
どうして脚本家になったのでしょう?
『 当時は就職難で、他の会社がボロボロ落っこちて
採用してくれたのが映画会社。』
え? 意外です。
『 才能的に行き詰ることはしょっちゅう。
いつも自分をしかったり、なだめたりしながら生きてきたっていう気がする。 』
飾らない。自然体。 そして優しさの中のぶれない強い芯。
私達の記憶に残る数々のストーリーは、
こんな山田さんの内側から生まれてきたのだな、と しみじみ・・。
山田さん、昨年19年ぶりに長編小説を出されました。
【 空也上人がいた 】
「死」「老い」そして「宗教」がテーマになっていますが、
この本で伝えたかったこととは?
『 人間努力すればなんとかなる、っていう最近の考え方が私達を苦しめている。
人生は努力ではどうにもならないことばかり。
一人一人、限界だらけですよ。 万能ではないんです。 』
こぼれ落ちる一言一言が、
私自身の情けないプライドを少しずつほぐしてくれるようで・・・
もしかすると、この現代を生きる多くの人は、
こんな言葉を待っていたんじゃないかって、思います。
現実的に自分の限界をみて、
その中で、努力すればできること。
あるいは、限界を突き破ることが出来るかもしれないものを見つける・・・
そういった超越性のようなものを意識することも大切なのではないか、と。
この本の中で山田さんは、常にご自身の感じている事を、
「空也上人」を通して 表現してみたのだと言います。
そして、今回。
山田さんがお薦めして下さった一冊は、こちら。
【 短編小説礼讃 】 阿部 昭 著
その題の通り、短編小説の面白さが100%詰まっています。
礼賛というべきか・・ 「これまで長編ばかりに走って 申し訳ありません!」
と猛省したくなるような、それほど短編の魅力満載の本です。
モーパッサン、チェーホフ、マンスフィールド、ヘミングウェイ
菊池寛、志賀直哉、魯迅・・・
代表的な作家の 数々の短編が、いいとこ取りで少しずつ。
この本を片手に様々な短編を読むと、更に世界が広がりそうです。
無駄も緩みも無い文章。
終わりが無いから、閉じない。
最後は読者に委ねられる部分が多いから、人生を考えさせられる。
『 言葉で全部を仕切らなくていい 』
という山田さんの一言が、短編の大きな魅力を表しているのではないでしょうか。
猛烈な印象の断片の積み重ね・・・
短編って、まるで人生そのもののようです。
今回のインタビューでは
素晴らしい人生の勉強をさせて頂きました。
山田太一さん、ありがとうございました!
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