スミスの本棚   『 イラストレーター ・ 宇野亜喜良さん  』

ブックデザイナー 名久井直子さんからのご紹介です。

 

日本を代表するイラストレーター、宇野亜喜良さん。

 

78歳にして、このダンディーな出で立ち。

常に斬新なイラストで世間をあっと驚かせ、

時代の先端を走ってきた宇野さんは 「これぞ大人の男!」

そんな印象です。

 

 

イラストレーターという仕事は、常にテーマを与えられて描く作業。

若い頃は、自分の主張で描けないことに劣等感を抱いていたそうですが、

今は、「この上なく楽しい作業」 だと 宇野さんは言います。

 

『 注文されたことへの 何%かの裏切り。 

  自分なりの変化を加えること。

  それが生き方としても楽しいし、(絵の)幅を広げることも出来る。』

 

 

そんな宇野さんが、子供の頃 模写していたのが

竹久夢二と藤田嗣治の作品。

 

今回お薦めして下さった本は、

日本人の画家として 初めて海外で成功した「藤田嗣治」の伝記です。

おかっぱ頭にロイド眼鏡( ↓ )  ・・・ 独特の風貌が印象的ですよね。

 

 

フランスでは、ピカソらと並ぶ「5大巨匠」の1人に数えられるほど

名声を得た藤田。 しかし最後まで、

祖国日本から認められることはありませんでした。

日本を心から愛していた彼は、結局 「日本に捨てられた」 と

晩年 フランスに帰化します。

 

 

今でも謎の多い、そんな芸術家の生涯を追った物語。

かなり読み応えのある一冊です。

 

 

著者はNHKのディレクター(当時)なのですが、

作品の核となる、藤田の5人目の妻への取材に

交渉も含めて10年以上も費やすなど、

誰も成し得なかった努力によって 初めて明らかになった事実も数多く。

 

・・・なぜなら、藤田の死後、妻は彼の作品を貸し出す事を

頑なに拒んできた為(日本に対しての疑念)

彼の記録や作品は、日本でほとんど出回っていなかったのです。

 

『 正しく評価しない以上、忘れてほしい。』 

             (未亡人であり著作権者でもあった夫人の言葉より)

 

 

藤田の代表作は、素晴らしい乳白色の裸婦像ですが、

宇野さんの心に深く響いたのは 『アッツ島玉砕』 という戦争画でした。

 

国民を戦争に駆り立てる為に、軍から依頼された戦争画。

しかし藤田は、次第に軍の思惑を通り越して

とても戦意高揚とは結びつかない、

戦争の真実(目の前に広がる悲惨な状況)を描くようになります。

 

結局、藤田は 絵によって戦争に加担した責任を1人押し付けられ、

日本画壇から追放されることに。

 

 

『 日本人として、祖国を思う日本人がしただけのことです。

  したことは、後悔もしていません。  』  藤田嗣治

 

 

「戦争画」というテーマを与えられた藤田は

言われたこと以上のところまで踏み出し、

感じたまま、筆が動くままに描いた。  だから、後悔はしていない・・・

 

 

そんな彼の絵に対する想いが、イラストレーターとして

これまで自分が感じてきた想いと通じるところがあり

共感できるのだと 宇野さんは話します。

 

 

『 計算通り描けてしまうのはつまらない。

  思いもかけぬ方向に 自分が変容していく・・快感でもありますよね。

  これからも、絵が描けなくなるまで ずっとやっていきたい。』 (宇野さん)

 

 

いつまでも、そのカッコいい生き方 貫いて下さい !


「スミスの本棚」ホームページで宇野さんのインタビューが見られます。

http://www.tv-tokyo.co.jp/wbs/blog/smith/