スミスの本棚 『僧侶・作家 玄侑宗久さん』

役者、高泉淳子さんからのご紹介。

 

福島第一原発から西へ45キロ、

福島県 三春町にある福聚寺の住職であり、作家としても知られる

玄侑宗久(げんゆう そうきゅう)さんです。

 

出家するまでの間、作家を目指し修行を続けながらも

様々な仕事を転々とし・・その体験を元に書いた「中陰の花」で

芥川賞を受賞。

玄侑さんは、私がずっとお会いしたかった方です。

「スミスの本棚」のご縁で、素晴らしい機会に恵まれました。

 

 

初夏の緑が眩しい 5月。

鳥のさえずりが響く中、三春町のお寺を訪れました。

 

 

原発事故の後、住民が次々と町を離れる中でも

玄侑さんは 寺に居続けると決意。

 

町に人も戻り、少し落ち着いているように見えますが、

今なお、様々な風評被害と闘いながら、

原発と放射能問題は「 冷静に 切り離して考えて欲しい 」 と

玄侑さんは、発信し続けています。

 

今回は、特別に寺の本堂にインタビューセットを組み

お話を伺わせて頂きました。

 

 

玄侑さんが、お薦めして下さった本は

 

     【 茶の本 】     岡倉天心 著   

 

この本は1906年、アメリカで出版されました。

もちろん英語での出版です。

その後 欧州でも刊行され、岡倉天心の名を世界に広げました。

 

天心は、他にも英文による著作を残していますが、

一貫しているのは、近代の西洋文明に対し、

アジアの(日本の)文明や美、宗教等の素晴らしさを伝えていること。

 

この本では、「茶道」の哲学を通して、日本の素晴らしさを訴えています。

 

『 茶道は、日常生活のむさくるしい諸事実の中にある美を  

  崇拝することを根底とする儀式である。 

  それは、純粋と調和を、人が互いに思いやりを抱くことの不思議さを

  ・・・・(中略) 心に刻みつける。 』

 

日常の生活の ごく普通の振る舞いの中に「美」を見出す素晴らしさを

四十代にして、世界に向けて発信していたことに 感嘆します。

 

 

中でも、特に心に響いた一節です。

 

『 真の美は、不完全を心の中で完全なものにする人だけが

  発見することができる。   

  人生と芸術の力強さは、伸びようとする可能性の中にある。』

 

 

そして天心は、

 

『 いつになったら 西洋は東洋を理解するだろうか。

  理解しようとするだろうか・・ 』

 

隔たりのある東西の人情の融合を、常に願っていたのだと思います。

 

 

玄侑さんは、 茶の文化が消えゆく危機感と共に、

今の日本人に対しても、危機感を抱いています。

 

茶道の根底に流れる 「禅の精神」「日本の素晴らしい文化」 を

見つめなおす意味でも、今、日本人にこそ読んで欲しい、と言います。

 

 

西洋の模倣を続けてきた日本。

そして、今直面するエネルギー問題、自然との共生の仕方、

更には国のあり方に至るまで。

日本人が、これから世界の中で どう生きていけばいいのか

もう一度根っこを見つめて、深く考える・・・

その答えを探すヒントが、この本にあるのではないか、と。

 

 

玄侑さんと話していると、いつもより素直な気持ちになります。

胸にしまい込んできた様々な想いが 思わずどっと溢れ、

涙で顔がぐしゃぐしゃになってしまいました・・

 

「うん、うん、」 と 全てを受け止めて下さった玄侑さん。

最後に、心がふっと軽くなる ありがたい言葉もかけて下さいました。

 

また、必ずここに(三春町)戻って参りますね。