スミスの本棚 『劇作家・倉持裕さん』

女優・鈴木砂羽さんからの ご紹介。

 

その眼鏡の奥で、

                どんな思考をしているのか覗いてみたい・・という     

                                       劇作家の倉持裕さんです。

 

 

様々な舞台を演出し、自らも劇団を主宰する 倉持さん。

独自のシニカルな視点の舞台でも、注目されています。

 

 

倉持さんの第一印象は・・

   まさに「冷静沈着」。

   そのクールな眼差しの奥に潜む「感情」が、全くつかみきれない。 

   何とか揺さぶりたい! 俄然、興味が湧いてきたのでした。

 

 

目の前の倉持さんは、

一言一言、丁寧に言葉をつむいでいきます。

感情を、きちんとご自身の心のフィルターにかけた上で、

その瞬間に 最適な言葉を選別しているかのように。

 

 

そんな倉持さんが、

『 作家として、最も影響を受けた作品かもしれない 』

                       と紹介して下さった本が、こちら。

 

 

 

    【  幽霊たち  】    ポール・オースター 著

 

 

怪談小説?

 

「ポール・オースター」 というアメリカの作家を知らなかった私は

恐る恐るページを開き、そこから 約1時間。

何かに取りつかれたように、夢中で読んでしまいました。

 

その勢いで、ポール・オースターの作品を手当たり次第

ネットで注文してしまったほど。

彼の作品は・・

《 事件の起こらない探偵小説、犯人のいない推理小説 》

なのに、なぜか面白い。 世界に引き込ませる力がある。

 

作品に共通して感じたのは、

ミステリー作品でもあり

「自己の内面と対話し、考えぬくことを強いられる」

純文学的要素も兼ね備えている、ということ。 

 

 

 

『 作家の共通の悩みでもある、始まりと終わりの処理の仕方

  真ん中の展開の転がし方が、素晴らしい。

  余計なものはそぎ落とされていて、とてもクールなんです。』 (倉持さん)

 

20代後半、自分の創る作品が 「分かりにくい」 と言われることに

悩んでいたとき、この本に出会ったそうです。

 

ポール・オースターの本は、正直分かりにくい部分も多い。

だけど、常に事態も心理も展開し続け、何か気配がどんどん進むことによって

読者は、「何だか分からないけど、面白いぞ!」 という気になるのでしょうか。

 

『 詳しい事情は理解できなくても、過程が、展開が面白くて

  動いている気配があれば、それでいいんだ!って気づきました。』 (倉持さん)

   

主人公の心理も 物語も、コロコロと展開していきます。

最初は、モヤモヤと 本筋を見失ってしまうような気になる読者も、

次第に、そして再読する度に、

オースターの世界観に浸りきっている自分に、気づくのではないでしょうか。

 

 

『 どんな方に、どのように読んでほしいですか? 』 (森本)

 

『 普段 急ぎ足で生活しているような方に、

  久しぶりに丁寧に、じっくりと本と向き合ってみませんか?

     という感じですかね。 』 (倉持さん)

 

ひとりの時間、孤独な時間が豊かに感じられる・・・

そんな一冊です。

 

 

結局最後まで、私の揺さぶりに微塵の動揺もみせることなく(笑)

冷静沈着であり続けた倉持さん。

「中庸」 という言葉が好きだと教えて下さいました。

世の中の流れ、自分の作品、自分の興味の方向、

両極の異なるものを知った上で、どちらでもない・・どちらにも行かない

そこが一番豊かな気がするのだ、と。

 

『 一方に傾こうとすると、自然にゆり戻す。

  そんな生き方を、これからも続けていくのではないか。』 (倉持さん)

 

 

豊かな時間を作り出す ポール・オースターの世界に。

そして「倉持ワールド」にも引き込まれてしまった・・・

そんなインタビューでした ☆