ひき肉事件

鳥のひき肉を買おう。

近くのスーパーでレジに並ぶと、いつものごとく
ヒスパニックのおばさんが、左手にコーヒーを持ってピーチクパーチク
レジ仲間と話している。


・・・・大笑いをしている。
・・・・・楽しそうだ。



すでに4−5人が並んでいるが
そんなことはまったく意に介さない。



でもここで、「早くしろーっ」と怒ってはいけない。
怒ればむしろ非難の目は私に向けられる。



だれかが言っていたが、この街は「かっこ悪い」のが嫌い。
器の小さい人間・短気な人間・みんなかっこ悪い。
だからみんな寛容なふりをする。


じーと待つのだ。
おしゃべりに満足したおばさんが仕事に戻ってくれることを期待して。



辛抱辛抱・・・。
そしてようやくレジを打ち始めてくれた。


しかし・・・・・・・


「プチっ」


ん・・・・?

今、「プチ?」って音 しましたか?




ぬおおおおおおおおおおおおおおおお



あなた、私の鳥ひき肉のサランラップ、その親指で破りましたか?
穴が開いていませんか?




見てほしい
これはどうやったって、親指の形である。
あなたがあけた穴である。

こ、これはさすがに言わせてもらいますよ



「あのっ破きませんでした?」

するとおばちゃんは、振り返って言い放った。


「はあん?」


はあんってあなた。見てみて、そこ。破いたでしょう?今。

「ああ、なによ、どうすんの?いやなの?」



なんていう、開き直り。
しかもなぜ、あなたは客に対してそんなに「高圧的」なのか?

「いやだったら取り替えてくれば?」



ぬおおおおおおおおおおおおおおお


自分で取りに行くんですかああああああ?!
あなたがとってきてくれるんじゃないですか?

この時点で軍配は上がっている。


後ろはすでに長蛇の列
ここで、一旦離れたら自分の番はいつくるかわからない。
しかも、ひき肉売り場はかなり遠い。



指は・・・ひき肉には触れていない。

・・・・・見つめあう。



「すいません。いいです。そのままで・・・・・。」


ああ、私はなんて気弱な日本人なのか。

が、しかし
一発なにか食らわさねば気がすまない
それもかっこ良くだ。


笑顔で言ってみた。
「あなた、封を開けちゃったんだから、ディスカウントしてくれる?」

「はあん?」


鼻の穴が膨らんだっ
白い目がぎろりと光った


そして

レジの横においてある
チョコをつかむと
にっと笑って差し出した。


あれ?
・・・・・・・・・嬉しいねえ。
うん。なんだか嬉しい。



単純なことだけれど、どうせなら怒って過ごすより、楽しく笑って生きたほうがいい。


NYの街角は
そんな前むきな生き方を教えてくれる。