スミスの本棚 『茶人・千宗屋さん』

将棋棋士・佐藤康光さんからのご紹介。

 

武者小路千家 15代 家元後嗣(次期家元)の 千宗屋(せん・そうおく)さんです。

 

 

表千家・裏千家と並ぶ「茶道三千家」の1つ 『武者小路千家』。

茶の世界でよく耳にする「~流」という数ある流派のなかでも

千利休を直接の祖とする 流儀の1つです。

 

『 宗屋さんにとってのお茶とは、何でしょうか? 』 (森本)

 

『 自分自身、そのものですかね。』 (千宗屋さん)

 

茶碗・茶筅(ちゃせん)・抹茶・お湯

最低限の道具を シンプルな動作で行う 「茶の湯」。

客へのもてなしでも 稽古でもなく、毎日の習慣として

お茶を点てて飲む時間は、自分としっかり向き合い、確認する

                         大切なものだといいます。 

今回は、インタビューの前に 宗屋さん自ら、

               お茶で もてなして下さいました。

 

茶室に入ると、目に飛び込んできたのは、

(このコーナーの趣旨にちなんで ということでしょうか)
かの「吉田兼好」が「書を読む」姿が描かれた掛け軸。

そして床の間には、私の故郷「長崎」のあじさいの花が・・。

 

招く客のことを考えた 趣向をこらした「おもてなし」に

心の底から感動しました。 なんて粋な計らいなんでしょう。

 

客人に満足してもらうための「もてなし」、

一方で、客はそれを理解して応じることが、互いの心を深く通じ合わせ、

茶の湯の喜びに結びつく、といいます。

 

それを 《直心(じきしん)の交わり》 と表現する、と宗屋さんに教わりました。

人間同士の深いコミュニケーションです。

正式な点前なども、ひとつひとつ教えて頂きながら

美味しいお茶を飲むことができました。

 

普段は全く別の人生を歩む者同士が、

ただ、その場のその瞬間だけは、心と心を直に合わせます。

身分や所属など、すべての隔たりを越えた連帯感が生まれます。

 

 

今回、千宗屋さんがご紹介して下さった本が こちら。

 

  【  「待つ」ということ  】     鷲田清一  著

 

 

哲学者である鷲田清一さんが、「待つ」ことの根源的な意味を

臨床哲学の視点から考察します。

 

簡単に理解できる本、ではないかもしれません。

しかし、「待つことができない、待たなくていい社会」に生きる

私たちにとって、今一度、意のままにならないものに対して

どう向き合って生きていけばいいのか・・・考えさせられる一冊です。

 

『 人が生きるということは、待つことなんです 』 (千宗屋さん) 

 

99%の努力と、1%の予期しない偶然の産物。

人が何かを成し遂げるということは、それを待つということ。

努力して期待した結果が得られなくても、それを乗り越えることに

意味があり、絶望の果てに尚も 待つという生き方。

 

どうしても 具体的な結果ばかり気にして決断を急いだり、

前のめりな生き方になってしまっている私たちに、

大きな気づきを与えてくれる一冊です。

ところで、今回お邪魔したこの素敵な空間。

どこだと思いますか?

実は、「東京タワー」を真正面に臨む都心のマンションの一角なんです。

『生活の中に茶の湯を取り戻したい・・』 

その思いで、こちらに茶室をしつらえたそうです。

 

古美術から現代アートまで、様々な芸術にも精通している宗屋さんは

今、欧米など海外にも「茶の湯」の文化を広げています。

500年に及ぶ茶の歴史、コミュニケーションを豊かにする茶の文化を

これからも世界中の多くの方に、もっと知って頂きたいと思いました。