スミスの本棚 特別編 『水墨抽象画家・篠田桃紅さん』

今回のスミスの本棚は 『特別版』 です。

 

「気がついたら、生まれて100年経っていた・・」 というこの方。

《水墨抽象画》 で世界的に有名な芸術家、篠田桃紅さんです。

 

生まれは、なんと大正2年。

戦中・戦後の混乱期を経て、自ら確立した「水墨画」のアートは

世界的にも高い評価を得ています。

 

そしてこの春、満百歳を迎えられました。

 

初めてお目にかかる桃紅さんの印象は

「なんと美しい方・・」 

百歳のおばあちゃんと言うには、あまりにも艶っぽく かつ気品にあふれています。

頭の回転も速く、次から次に的確な言葉が返ってきます。

 

桃紅さん。 生誕百年を記念して、随筆集 【桃紅百年】 を刊行しました。

『 目標も計画も立てたこともなく、気がついたら100年経った・・ 』(桃紅さん)

 

常に気負うものがない、自然体の生き方。

『 書もうぬぼれ、創作すること自体が 自信とうぬぼれなのかも 』(桃紅さん)

常に俯瞰で世の中を、そしてご自身をも見つめ続ける

強靭でしなやかな精神こそ、長生きの大切な要素なのでしょう。

 

( 世界でも珍しい、こんなに巨大なすずりを使っています ↓ )

 

『 長く生きてきて、つらいことは? 』 (森本)

『 たくさんあります。

  でも、ちょっとしたことに面白がる、感動できる性質をもっているから

    生きていることができた。』 (篠田さん)

 

本当にいいもの、美しいものにふれたとき、

それに素直に感動することが生きがいであり、

そのちょっとした感性を持っていたことが幸福だったと話します。

生きていて良かった・・そう思える感動に いかに出会えるかが

大切なんですね。

 

そんな桃紅さんがお薦めしてくださったのが こちら。

 

【 侏儒の言葉 】     芥川龍之介  著

一番驚いたのは、桃紅さん自身が

帝国ホテルで 実際に芥川龍之介に会っていたこと。

 

圧倒的な存在感。 素敵な人だと感じていただけに、

その後の自殺のニュースには、とてもショックを受けたと言います。

 

 「侏儒の言葉」は、芥川龍之介が、

自分の死を確信しながら書き連ねたという 箴言集です。

 

芥川らしい皮肉でユーモアな表現の中にも、

やはり 精神が燃え尽きてしまった空しさや切なさも

露呈されているように、私は感じました。

晩年の 彼の苦悩が読み取れる作品です。

 

 中でも、桃紅さんが一番心に響いたという芥川の言葉が こちら。

 

  運命は性格の中にある  》 

その人の性格というものが運命を作り上げている、ということ。

 

既存の範囲内だと窮屈で、常に何か新しいものを求めてしまう性分。

規則にしばられない生き方を好む、その桃紅さんの性格が

彼女の人生を作り上げてきたのだと言います。 

 

何でも運命のせいにするのは無責任。

自分の努力次第で人生はどうにでもなる、

 

『 自分で切り開かないと 運命はしょうがないじゃない。』(桃紅さん)

 

 

芥川に負けず劣らず、桃紅さんの言葉には含蓄がありますよね・・。

 

 

身の丈のもの(自身の作品)を示されながらも、「まだいけるはず!」

と思い続ける「うぬぼれ」や、作品への不満が

生きることの誘いになっている、という桃紅さん。

まだまだ高みを目指して、もう少しだけ・・筆を揺らし続けて下さいね。