スパーリングで軽快な動きを見せるWBC世界Sフライ級王者、佐藤洋太選手。
その変幻自在なファイトスタイルから“マジカル・ボックス”の異名を取ります。
試合中に突然、トリッキーな動きを挑発的に繰り出してみたり。
芸術的なディフェンス技術で相手の攻撃を無力化してみせたり。
焦れた相手が攻めてくるところで鮮やかなカウンターを取ってみせたり。
まさに魔法のボクシング。何が出てくるか分からないビックリ箱。
魅せるボクシングが出来る、そして結果も出している世界チャンピオンなのです。
5月3日に佐藤チャンピオンが臨む3度目の防衛戦の舞台が、タイ。
ボクシングに詳しい方なら、すぐにピンと来るとは思います。
チャンピオン自ら敵地に乗り込んで行くというのはもちろんのこと。
タイは、伝統ある日本ボクシング界にとっての鬼門なのです。
17戦して16敗1分け。
タイで行われた世界戦で、日本人男子ボクサーは一度も勝ったことがありません。
今回の防衛に成功すれば、日本ボクシング史上初の快挙!
意気込みを聞いてみると・・・
「いや、普通ですよ、普通。海外行けてラッキー、くらいな感じです」
あれ、これは・・・
「相手がウィラポン(世界王座14度防衛、タイの国民栄誉賞を4度受賞の英雄)みたいな歴史的選手に、敵地で勝ったらすごいですけど」
と、言って悪戯っぽく笑います。
「オレ、爬虫類好きなんで、タイでいろいろ見られたらいいなぁ、って」
完全に期待していたようなコメントとかけ離れていて面喰います。
しかし、よくよく聴いてみないと彼の本音は出てきません。
「ボクシングって、いかにいつも通り出来るかだと思うんですよ。
タイでやるからって、変にナーバスになり過ぎるから、力を発揮できないんです。
いろいろ、慣れない外国ですから。上手く行かないことがたくさんある。
そう思っていけば、いいんですよ。」
コンビを組む新井トレーナーも同様なスタンス。
「もちろん、準備できることはしますよ。水とか、ジムで用意します。
ただ、想定外のことも起こり得るからといって、全てには備えられないですし。
一つ一つにイライラしていたら、リングに上がる前に疲れちゃいます。
佐藤は非常に対応力もあるので、自然に臨めば大丈夫だと信じています」
チャンピオンは、こうも言っていました。
「自分のボクシングに、自信はありますよ。
でも期待したり、気負ったりしちゃいけないんですよ。
一番ダメなのが、欲を出すこと」
サラッと聴くと、真意を掴みかねるコメントが並ぶ佐藤チャンピオン。
突っ込んで聞いてみると、非常に合理的であったり、物事の真に迫っていたり。
常識に囚われることのない思考が紡ぐ言葉は痛快なものが多く、もっといろいろ聴いてみたい欲求が湧きました。
同時に“マジカル・ボックス”の源泉に少しだけ触れた気がしました。
新井トレーナー「前回よりも甘いことはしない、そういう意識の高さがあるんです。」
試合の度に評価を上げ、国内屈指の安定王者と言われるようになったチャンピオン。
「この階級最強を目指す、それを実証する」とプライドを覗かせます。
さて、5月3日にタイで、どんな“マジカル・ボックス”を見せてくれるのか?
この模様はBS-Japanで夜6時55分から放送します!
番組HP<http://www.bs-j.co.jp/official/boxing_130503/>