ナンパ事件

週末ワシントンの友人のところに遊びにいった

平日番組があると
どうしても行動範囲は制限される

「いろんなアメリカを見たいんだよね」
「じゃあ、これぞアメリカっていうとこにつれてってあげるよ」

彼女はNHKの敏腕記者。

会話も
「バーナンキ議長は次どうするだろうね」
「金利据え置きになるんじゃない?」

とても独身女たちの会話と思えないねえ。どうなのよ。
笑いながら
ホワイトハウス、リンカーンメモリアル、いろいろ連れて行ってもらった。

地下鉄がすごい。
大江戸線もびっくりの地中深く
宣伝のポスターも広告も何もない暗くて巨大なエスカレーターだっ
ワシントンへの旅。11.17 028.jpg

なに、この地下鉄、こわくない?
なんでこんな広くて深いの?

ああ、これは核シェルターになってるんだよ
米ソ冷戦時代にワシントンが狙われたときここにみんな避難できるように造ったんだってワシントンへの旅。11.17 030.jpg



ひょええ。核?
これってシェルターなの?

確かに重厚なコンクリートの壁、暗く長いエスカレーターに乗っていると
「冷たい戦争」の残像をじんわり感じ取ることが出来る。




午後、彼女が会社に行くので
私は有名なスミソニアン博物館に行くことにした

すごいなあ
美術館に博物館・・・ここはすべて寄付で運営されているから入場無料。やった!
モネにピカソにゴッホ・・いつでも気軽にどうぞ。
写真だって撮っていいんだよ。懐が深いね、アメリカは。
ワシントンへの旅。11.17 011.jpg





航空博物館に行こうと地図を広げていると
ダンディーな男性が声をかけてきた(推定年齢45才くらい)
「スパイ博物館はどちらですか?」
ごめんなさい。知りません。
自分の目的地だってたどり着けるかわからないこの私に聞かないでくれっ

さまようこと15分。あったあったここだ。
すんごいなあ。入り口から巨大な飛行機が展示されている

すると
おっさっきの男性

「ああ、君もここにきたんですか、よかったら一緒に見ませんか?」
ときた

んんん?まあ、いいですよ。(結構かっこいい)

聞けばこの人イラン人。
アメリカで輸入会社のCEOをしているという。
でも、なんだかこの名刺・・・手作りっぽいなあ・・。

でも、中東情勢に関心がある私としてはちょっと興味深々。
すごい、なまなましい話がこんな身近で聞けるなんて。

一日に6回、モスクの方向に向かって祈りをささげるとか
ラマダン(断食月)が終わったばかりとか。
イスラム教は戒律が厳しいから
女性にオクテなんですよ、はにかむように笑った。
へえそうなんだ。

ある一角で、第二次大戦で日本人が蹴散らされる映像が流れていた。
アメリカ国民の歓喜の表情に重なる沈む日本の戦艦。
あああ・異国の地ではこう伝えられていたんだ。
いたたまれない気持ちでじっとみていたら

彼が静かにきいた
「あなたの宗教は何ですか?」
えっ?
突然の質問に驚いた。
彼らの前で即答出来るほどの強い宗教観を私は正直もっていない。

「天皇は信じていないのですか?」

むむむむ。
日本の歴史をどこまで私は説明できるだろう。



彼がいった。
お茶でもしませんか?
はあ。
友人との待ち合わせまで一時間ある。
日本を知りたいと言ってるし、使命感に燃えてきたぞっ。

ワシントンの町のカフェにはいって
お互いつたない英語で頑張って会話をしていると

イスラム教の説明に熱が入ってきた。
ちょっと手を出して・・・
はあ。

手にふれると言った
僕のまねをして話してごらん。

はあ?

さあ、早く。簡単だから僕についてきて。○×△□×△・・・。

怪しい。この呪文みたいなアラビア語、何か意味があるんじゃなかろうか。
「もうそろそろ待ち合わせのレストランに行かなきゃ」と席をたった。

じゃあ、そこまで送りましょう
いやいや大丈夫です。

必死で断るも、帰る方向が一緒だから気にしないでときた。
はあ。

私はNOといえない日本人の典型である。


しかたがなく暗闇の中、歩き出すと、ぬおおおおおおおお。
突然、手を握ってきたではないかあああああああ。
ひゃああ
これはやばい。これはNOといわなければっ

だけどこういう場面ではなんていったらいいのかっ
思わずさけんだ。
「NO!ノーサンキュー」

―これで正しいのだろうか?
この場合・・・ノーサンキューなのだろうか?

ところがこの人「日本人の女性はシャイですね」
そういってさらにギュウとつかんできた。
あなたはオクテだったんじゃないのかあああああ???
こんな場面で日本女性を分析しないでくれっ

そして始まった。
あなたのような人に出会えてよかった
また会いたい。来月NYに行くから会えるか?
・・・えーん。誰かたすけてくれえ

必ずメールを出すからと説得し
手を振り切ってレストランに逃げ込んだ。

すでに待っていた友人は
涙を浮かべて笑い転げた。それはいい経験だったね。
イラン人からナンパ・アメリカっぽいじゃないっ
そういってまた、がははは笑っていた


見た目は立派な人そうだったしさあ。国際親睦だと思ってさあ。

そんな私を
お人よし日本人と友は笑い、説教する。


できるだけいろんなアメリカをみてみたいが、聞けばなるほどいろんな「危険」が転がっている。
NOといえない私は特に、わきをしめたほうがよさそうだ。