日経スペシャル「ガイアの夜明け」 3月11日放送 第305回

マネー動乱 第2幕 ~中国バブルの行方とオイルマネー~
アメリカのサブプライムローン問題は、底なし沼の様相を呈している。震源地アメリカの株価や不動産価格に下げ止まりの気配は見えず、リセッション(景気後退)の懸念が高まっている。サブプライムローンの問題とあまり関係が無いはずの日本も、年明けから株価が下がり続けて、巷には沈滞ムードが漂う。いったい、世界経済はどこまで巻き込まれていくのか。問題が表面化した当初から、まことしやかに語られてきた考えがある。それが、"デカップリング理論"―米国が景気後退に陥っても、中国など新興国が世界経済を浮揚させるという考え方だ。しかし1月22日、世界同時株安の渦に中国上海市場も飲み込まれてしまった。誰がこの事態を救うのか…。
短期間で乱高下を繰り返す世界の株式市場の背後で、うごめくグローバルマネー。日本やアメリカから引き上げられたお金はいったいどこに流れているのか?サブプライムローン問題の真相を描いた去年秋の「マネー動乱」に続き、アメリカ、中国、中東・・・3地点同時ドキュメントでマネー動乱の現場を追跡する。
|

次々と巨額損失が明るみに出るアメリカの金融機関。そのあおりを受け、この世の春を謳歌してきたウォール街の金融マンに、歴史的なリストラの嵐が吹き荒れている。
投資銀行ゴールドマンサックスを経て、米銀行2位のバンク・オブ・アメリカ本店に勤めていたアリ・カンター(25歳)さんもその一人だ。いつものように出社すると「君は必要なくなった。今から10分で出て行くように」と、上司に告げられた。そして、その上司も1ヵ月後には追加リストラに。アメリカ金融界のリストラは、1年で15万人以上に上っている。
凋落するアメリカ、そんな右肩下がりの波に乗って儲けをあげている投資家もいた。それが、“空売り屋”。問題を抱える企業を探し出して、その会社の株を売り浴びせて儲けるスタイルのヘッジファンドである。ウォール街では50社程度あるといわれているが、その実態は秘密のベールに包まれている。彼らは、サブプライムローン問題にいち早く目をつけていた。ニューヨークの大金持ちを回り、「間もなく住宅バブルは崩壊し、米経済は大恐慌以来のパニックに陥る。今すぐ投資しなければ、あなたは人生最大のチャンスを逃すことになりますよ」と言い放ったという。ある空売りファンドは、去年1年で6倍にも膨れ上がり、驚異的な儲けを叩き出した。いわば自分の国を売って儲けを出す“空売り屋”、ベールに包まれた実態を、ガイアのカメラが初めて捉えた。
|

去年11月、中国の株式市場は興奮の絶頂にあった。ペトロチャイナ(中国石油天然気)が上場し、この瞬間、時価総額は一兆ドル規模に膨れ上がり、米エクソンモービルを上回り世界最大になったのだ。全体の値動きを示す上海総合指数も2年ほどの間に、5倍にまで急騰していた。「今度マンションを買うわ」「こないだヨーロッパ旅行に行ってきたよ。次は日本かな」…。市民たちも株に狂奔、証券口座の数は日本の人口並みの1億2000万に上った。この中国の好況ぶりに、世界の市場関係者は、「デカップリング」つまりサブプライムローン問題で不透明な世界経済を支えるのは中国だ、と期待したのだった。
しかし、今年1月22日、アメリカ、日本に続き上海市場も同時に大暴落。ピーク時からは3割近くも下がってしまい、1億2000万のか株民たちは奈落の底に突き落とされた。マイカーを買うと意気込んでいた上海の25歳の女性、“株神”と崇められ個人投資家から資金を億単位で集めていた投資ファンド経営者…暴落前と暴落後、中国市場の光と影を取材し、世界経済に大きな影響を及ぼすようになった中国マネーの実態と行方を追う。
|

アメリカが凋落し、中国も黄色信号…世界経済が明らかに勢いを失う中、唯一絶好調な地域がある。中東諸国だ。建設ラッシュのドバイでは世界一高いビルや砂漠の中のゴルフ場などが次から次へと建設され、町が変貌している。史上空前の原油高を背景に中東は今、膨張するオイルマネーで潤っているのだ。サブプライムローン問題で危機に陥ったシティグループやメリルリンチなどに出資して金融不安の連鎖を一時的に止めることに一役買うなど、中東のオイルマネーは今、世界経済のカギを握っている。
その中でも、最も資産と影響力を持つといわれるのが、サウジアラビアのアルワリード・ビン・タラール王子だ。シティバンクへの出資で投資家として一躍有名になり、総資産約240億ドル(2兆5000万円)。世界5本の指に入る大富豪と言われている。そんなアラブの王子が新たな投資先を探していた。アルワリード王子の目に止まったものとは何なのか?!日本で有望な銘柄は!?サブプライム問題後、行き先を探して動き始めた中東のマネーをガイアのカメラが追う。
|

|