■監修者・中島洋の深読み
中島洋
=マルチメディア総合研究所所長
1947年生まれ。 東京大学大学院(倫理学)修士修了。73年日本経済新聞社入社。産業部で24年にわたり、ハイテク分野、総合商社、企業経営問題などを担当。1988年から編集委員。この間、日経マグロウヒル社に出向し、日経コンピュータ、日経パソコンの創刊に参加。97年-02年慶応義塾大学教授(大学院政策・メディア研究科特別研究担当)。02年-04年、国際大学(グローコム)教授を務める。現在、マルチメディア総合研究所所長、日経BP社編集委員などを兼務。
産業再生機構が見せた「やる気」
率直に言って、産業再生機構がここまで本気でやってくるとは思わなかった。「5年間」という有期限で臨時に存在する機関。どこまで人材が集まってくるのか、半信半疑だった。しかし、この1年間、産業再生機構が動いた軌跡には驚かされた。極めつけは、この5月6日に発表した人事だ。再建のシナリオに入ったカネボウ化粧品新会社に、産業再生機構は余語邦彦執行役員を会長兼CEOとして送り込むことを決めた。
今回、新聞で取り上げた福島県郡山市を拠点にしたうすい百貨店も、同社への支援決定、同社債権者からの債権買い取り、さらに経営陣の交代、社内体制の再構築と矢継ぎ早に施策が打ち出され、すでに業績は上向き、再建軌道に乗せている。
なぜ、こんなに動きが早いのか。取材を進めて見ると、決め手は「人材」である。再生機構には発足と同時に弁護士、会計士、投資ファンドの専門家など、当該企業が抱え込んだ過大な債務の処理に必要な法律・財務のプロ、債務の問題が片付いた後に経営を軌道に乗せるビジネスのプロなど70人が集まった。こうしたプロの集団がチームを組んで次々と案件を処理してゆく。現在では、その人数は100人を超えているという。
聞けば、実際に破綻した金融機関などで、その処理に実際に当たってきた経験者もいるし、投資ファンドなどで破綻処理に関わってきたプロもいる。皆、「企業再建」に生きがいを見出して、知恵と気力をぶつけて破綻しかけた企業を蘇らせることに、まい進している。彼らの信念は、優良な経営資源を内部に抱えながら、バブル期に過大な投資をしてそれが足かせとなって行き詰まった企業は、その重石を取れば優良な経営資源を再び生かす可能性がある、それが日本経済を活性化させる道である、ということだ。日本の産業界がもつ「底力」への確信が、その根底には横たわっている。
産業再生機構は実質的には政府がバックアップしているにも関わらず、株式会社として創設された。株式会社は、設立が簡単で、運営も機動的にできるからだ。こうした組織があっという間に創設された日本の官僚たちの知恵、これに呼応して集まる能力ある人材の層の厚さ。そして、てきぱきとしたスピード感あふれる仕事の進捗。日本復活のバイタリティはまだ十分に残っている。日本再生の日が間近であることを実感した。
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