■監修者・中島洋の深読み
中島洋
=マルチメディア総合研究所所長
1947年生まれ。 東京大学大学院(倫理学)修士修了。73年日本経済新聞社入社。産業部で24年にわたり、ハイテク分野、総合商社、企業経営問題などを担当。1988年から編集委員。この間、日経マグロウヒル社に出向し、日経コンピュータ、日経パソコンの創刊に参加。97年-02年慶応義塾大学教授(大学院政策・メディア研究科特別研究担当)。02年-04年、国際大学(グローコム)教授を務める。現在、マルチメディア総合研究所所長、日経BP社編集委員などを兼務。
ユニクロの復活とクロスプラス
ユニクロが中国で生産する低価格の衣料品を引っさげて国内に急速に店を展開していった時には、正直に言って全く、理解できなかった。流通問題の専門家、日本経済新聞社時代の先輩でもある井本省吾編集委員に何度もその成功の秘訣をいろいろなアングルから解説してもらったが、ついにユニクロの店内に足を踏み入れるチャンスがなく、その解説に得心するだけのものがなかった。
ちなみにユニクロに足を踏み入れる機会がなかったのは、ロードサイドの店に入ろうと車で立ち寄っても、いつも大渋滞で駐車場にたどり着けなかったからだ。そういうピークの時期に行こうと思ったのがいけなかったのだろうが。
その後、中国野菜の輸入の話が出たり、一転して国内の高級トマトの販売の話が出て、残念ながら、急速に興味を失った、というのが本音だ。中国野菜も高級トマトも、衣料で話題になったユニクロのイメージと違いすぎる。実は、筆者は、ユニクロの成功は、広告の巧みさと店舗展開のシンクロが功を奏したところにあるのではないか、と思っていた。中国野菜やトマトと、あのファッションセンスとはミスマッチであるという違和感をもったからだ。
案の定、筆者の違和感が的中した形だったが、その後、ユニクロを展開するファーストリテイリングは番組にあるように、社員の教育、徹底的な意識改革によって見事に復活した。
趣が違ったのは、4月中旬に株式を公開して話題になっているクロスプラスだ。
クロスプラスは、量販店に婦人物衣料を中心に出発してその分野で断然トップの位置を確立している「櫻屋商事」が3年前、社名を変え、業態も衣料の製造・小売まで拡大した企業である。これまでの量販店の「黒子」としての地味な事業展開から、大きな決断である。この2、3年、量販店が次々と行き詰まり、同社の主力チャネルが先細りするのではないか、という危機意識から、チャネル拡大を決断したわけだが、小売分野への進出は、危険が伴う。それは、うっかり進出すると、衣料品を卸している小売業界と直接に競合し、小売店を敵に回す懸念があるからだ。
そこでクロスプラスが取った戦略は、百貨店への進出。それも思い切り高級なブランドを標的にするのだ。現在、クロスプラスは大都市型の百貨店の中に、輸入ブランド品の販売店を展開している。しかし、取材して気がついたのは、こうしたブランド戦略は同社の成功要因ではないということだ。これらの事業はまだ緒についたばかりで、業績への影響がはっきりするのはもう少し先だ。同社が成功しているのは、採算責任をもつ小ユニットにグループ分けしてアイデアを競い合わせる「事業部戦略」である。給料も成果主義にして、業績を上げたチームは方程式に従って成果配分を受ける。これまで、その成果配分だけで2000万円もの報償を獲得したリーダーもいるそうだ。
歴史の古いファッション業界は、つくづく、奥が深いと感じ入ったしだいだ。
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