■監修者・中島洋の深読み
中島洋
=マルチメディア総合研究所所長
1947年生まれ。 東京大学大学院(倫理学)修士修了。73年日本経済新聞社入社。産業部で24年にわたり、ハイテク分野、総合商社、企業経営問題などを担当。1988年から編集委員。この間、日経マグロウヒル社に出向し、日経コンピュータ、日経パソコンの創刊に参加。97年-02年慶応義塾大学教授(大学院政策・メディア研究科特別研究担当)。02年-04年、国際大学(グローコム)教授を務める。現在、マルチメディア総合研究所所長、日経BP社編集委員などを兼務。
介護保険について最も驚いたのは、新しい職業別の労働組合ができたことだ。日本介護クラフトユニオンである。介護士の資格をもつヘルパーさんを中心に、介護サービス業界で働く人の産業別の労働組合だが、資格をもつ専門職業人を、横断的に組織した職業別の労働組合は、日本海員組合など、ごく数えるほどだという。発足4年ですでに4万7千人を組織化しているが、これは新しい時代の労働組合の形を予感させる。
これまでの日本の労働組合は、企業別に組織化された「企業組合」である。それを母体に産業別に連合会を組織して、産業別の労働組合になっている。しかし、この介護クラフトユニオンでは、企業組合を基礎にしているのではない。例えばニチイ学館は、教育など介護サービス以外の部門があるが、介護部門だけの従事者が参加している。
介護サービスは、基本的に正規職員ではない派遣の形態が多いので、これまでの企業組合の形では組織化が難しい。それを、個人加入の職業別組合という新しい形式で組織化したわけだが、ここ数年日本産業界の雇用形態も大きく変わり、正規社員よりも非正規社員として働く人が急増している。いわゆる「派遣社員」である。こうした派遣社員は派遣会社でも組合に加入していないし、派遣されている会社でももちろん、組合に加入していない。こうした労働者を組織化する手法として、介護クラフトユニオンの方式が有効ではないか。こういうアングルから、派遣労働者を中心にした新組織発足の準備が進んでいるそうだ。
この労働組合は、経営者との集団交渉の役割だけではなく、保険などの共済事業や技術研修、専門分野の職業知識の習得、職業面での悩みや相談ごとなどの情報交換、といった、幅広い支援活動を行うようである。労働組合というより、事業協同組合という色彩が強い。労働団体より経済団体の印象が強い。
介護保険制度は、少子高齢化社会に対応した新しい制度、という予備知識で取材を始めた。しかし、取材を進めるうちに、急速に変化する経済構造のきしみ、のようなものまで感じられる問題が現れてきた。実に奥が深いものであることが分かった。
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