■監修者・中島洋の深読み
中島洋 中島洋=マルチメディア総合研究所所長

1947年生まれ。東京大学大学院(倫理学)修士修了。73年日本経済新聞社入社。産業部で24年にわたり、ハイテク分野、総合商社、企業経営問題などを担当。1988年から編集委員。この間、日経マグロウヒル社に出向し、日経コンピュータ、日経パソコンの創刊に参加。97年-02年慶応義塾大学教授(大学院政策・メディア研究科特別研究担当)。02年-04年、国際大学(グローコム)教授を務める。現在、MM総研所長、日経BP社編集委員、国際大学(グローコム)主幹研究員などを兼務。


 カリスマ営業経営者の輝き

 ハイ・アベイラビリティ・システムズ(HAS)の高柳肇社長には強烈なライバル意識をもつ批判者がいる一方で、逆に、ユーザー企業や仕事仲間、遊び仲間に根強い隠れたファンが多い。明るい性格、人をそらさない豊富な話題と語り口。「営業マン」とはまさに、こういう人を言うのだな、と得心することが多い。商売で敵に回したくない。ライバルが激しい敵意を持つのも、また、得心が行く。高柳社長が日本アイ・ビー・エム時代に近しかったかつての上司、部下に話を聞きに行くと、おおむね、その周辺に振りまく陽性な空気を思い出してくれた。

 やはり、高柳社長が一騎当千の豪傑の営業マンの育成に力を注いでいる、とその価値観を裏付けるのは、プロ野球、巨人軍の評価について議論を交わしたときだ。ホームランバッターをずらりと並べる巨人軍のすごさに感嘆する。これだけのドリームチームを作れる巨人軍を高柳社長は大好きのようである。

 一方のソフトブレーンの宋文洲会長は、巨人軍の評価がまったく逆である。ホームランバッターばかり並べるとマネージメントのしようがなくなるのではないか、と疑問を呈する。犠牲バントあり、セーフティバントあり、盗塁あり、ヒットエンドランあり、と多彩な能力の選手を手ごまとして持ち、この組み合わせによって相手チームの弱みをついて勝ってゆくのが経営である、というわけである。先発完投能力ある抜群の投手だけをそろえることは難しい。何とか、中継ぎ投手、左腕右腕の軟投型、コントロールはないが、球だけはやたらに速い剛速球の押さえなどを動員して相手の強力打線を交わしてゆく。結局、相手の与えた点数より1点だけ多い得点で逃げ切る。これがマネージメントではないか。

 もっとも、宋会長は「本当のことを言うと、一騎当千の猛者ばかりを集められる優良企業がうらやましい」と本音を言う。「卓越した人材をずらりとそろえることができないので、仕方なく、いろいろ欠点がある人材を底上げしてなんとか使いこなす方法を編み出すほかなかった」というのが実態のようだ。

 宋会長は、結局、営業は、できる人材と能力が不十分な人材をいかに組み合わせてチームとして総合力として能力を向上させるかが勝負だ、という。現実に見回すと、一部の企業を除き、ほとんどの企業では、少数の能力ある人材と多数のそれ以外の人材を抱えているからだ。そのチームワークの方法論として、情報システムを利用した営業支援ツールをベースに情報を共有し、これまで十分な営業ができなかった人材にも、何を為せば良いか、最適な指針を与えられるというのである。

 どちらが好きか――と聞かれると、少し迷う。チームワークでこつこつ進むのは端からみるとあまり華麗ではない。好き嫌いではやはりホームランバッターを抱えた営業の方が好きだ。しかし、どちらが優勝するチームだろうかと考えると、長期的には、多彩な能力あるそこそこの人材を抱えたチームではないか、と思う。

 巨人軍をみると、優勝できない原因は、よく指摘されるとおり、「4番バッターばかりを集め過ぎる」ことにあるのではないか。







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