■監修者・中島洋の深読み
中島洋
=マルチメディア総合研究所所長
1947年生まれ。東京大学大学院(倫理学)修士修了。73年日本経済新聞社入社。産業部で24年にわたり、ハイテク分野、総合商社、企業経営問題などを担当。1988年から編集委員。この間、日経マグロウヒル社に出向し、日経コンピュータ、日経パソコンの創刊に参加。97年-02年慶応義塾大学教授(大学院政策・メディア研究科特別研究担当)。02年-04年、国際大学(グローコム)教授を務める。現在、MM総研所長、日経BP社編集委員、国際大学(グローコム)主幹研究員などを兼務。
ハイテクとレアメタル――「無資源国」、日本はどうするのか
新技術というのは情報通信技術(ICT)、生命技術(バイオ=BT)、ナノテク(ナノレベルの微小領域の技術)、新素材、新エネルギーなどを指している。未踏領域に挑む新技術が道具として採用するのがこれまで利用していない、あるいは限られた分野でしか利用してきていない元素類である。その代表がレアメタルである。鉄鋼に添加して特殊鋼にする需要は日本の高度成長期以降、急速に増大してきた。超高層ビルや巨大橋梁、新型自動車など軽くて強靭な鋼鉄を求める産業界、消費者の要求に応えてその需要は高度化するばかりである。
レアメタルは産出量が少なく、これまで技術的な理由、あるいは経済的な理由(産地が偏っていて輸入が難しい、取得するのにコストがかかりすぎる、など)で、使用する機会が少なかったものだが、用途が広がり、多少はコストがかかっても生産量を増やしたい、という要求が強くなれば、産出する側も工夫を凝らすようになる。人によっては、レアメタルを「金属の中でベースメタル(鉄、アルミ、銅、錫など)ではないもの」という幅広い定義を使うが、通常は、使用価値があるが、産出量が少ないものを指して、31種類程度をレアメタルとして分類している。
本文にあるように、最近急速に伸びている需要は液晶ディスプレーや携帯電話などのハイテク製品である。そのハイテク製品を精力的に開発している日本は、そうしたレアメタルの産出がほとんどない「資源小国」どころか、まったくない「無資源国」である。
この状況を打破すべく、努力はしている。太平洋などの深海底深くに大量に転がっている「マンガン団塊」の探索はその代表的なものである。その成分はマンガン、ニッケルにコバルトなどのレアメタルが主成分である。「マンガン団塊」というより、経済価値からいえば「ニッケル団塊」とか「コバルト団塊」というほうが適切である。おまけに資源のない日本にとって有利なのは、各国の経済水域のはるか外側で、どこかの国の占有物ではないことだ。
しかし、問題はその拾得が意外に難しいことだった。水深2000メートル、3000メートルの深海となると、その収穫の地点は水圧が巨大になる。水圧は10メートル深くなるごとに1気圧が増えるから、3000メートルの深さになると300気圧になる。1気圧は1平方メートルの面積に1トンの圧力がかかるので、300気圧は300トンになる。1平方センチに直しても、3トンになるから、指の先のつめの面積に3トンという飛んでもない圧力がかかる。深海底の物質を掬い上げるのは、この圧力に耐える装置が必要で、技術的にも経済的にも難しい。経済水域外の資源についての国際ルールでも難しい問題が横たわり、その後、すっかり、マンガン団塊の熱は冷めてしまったかのようにみえる。
結局、資源産出国へのアプローチが早道ということで、いま、日本はその可能性を模索中だが、「次の一手」も考える時期が来るだろう。
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