■監修者・中島洋の深読み
中島洋 中島洋=マルチメディア総合研究所所長

1947年生まれ。東京大学大学院(倫理学)修士修了。73年日本経済新聞社入社。産業部で24年にわたり、ハイテク分野、総合商社、企業経営問題などを担当。1988年から編集委員。この間、日経マグロウヒル社に出向し、日経コンピュータ、日経パソコンの創刊に参加。97年-02年慶応義塾大学教授(大学院政策・メディア研究科特別研究担当)。02年-04年、国際大学(グローコム)教授を務める。現在、MM総研所長、日経BP社編集委員、国際大学(グローコム)主幹研究員などを兼務。


 「少子化」の克服には道徳の転覆が必要かもしれない

 筆者が大学教師をしていたころのゼミの女子学生が結婚をした。結婚式を挙げないというので、同期生たちが集まってお祝いの会を開いた。ただし、新郎は参加しなかった。別に夫婦仲が悪いわけではない。恥ずかしがって顔を出せないというのである。お祝いの会に出席した新婦のおなかは今にもはちきれんばかりに大きかった。恥ずかしいというのは「できちゃった婚」だということらしい。いまどき、珍しく内気な新郎である。

 お祝いの会を主催した幹事役は「ダブル祝い」と銘打っていた。本当にめでたいことではないか。最近では結婚しても子供を作らない、という夫婦が多いのに、結婚する前に早くも子供を作るというのは、国家として、社会として表彰すべき話なのである。これが「恥ずかしい」と思うところに何か、根本的な問題があるような気がする。

 日本より早く少子化に危機感を抱いたフランスでは、結婚した夫婦以外の子供についても手厚い助成策を講じているらしい。必ずしもフランスの人口が増えているわけではないが、減少に歯止めがかかりつつあるようには感じる。おそらくそのせいだろう、フランスで生まれる子供の44%は非婚カップルの子供だ。そのパーセンテージは年々、増加している。これまでのように法律的な夫婦から子供が生まれる、という常識にこだわる限り、少子化の克服は難しいのか。

 バリバリに働くキャリアウーマンが、ある日、取引先の幹部と恋愛関係に入って子供を生んだ。相手の男性には妻子がいるので、俗にいう「不倫」である。しかし、彼女は、過って妊娠したわけではない。「確信犯」だった。さらに、このことをもってして彼に結婚を迫るわけではなかった。一応、父親としての認知はしてもらったらしいが、まだ元気な母親に同居してもらって世話を見てもらいながら、仕事を再開し、子供を育てている。

 この話を聞いたときには、相手の男について怒りを感じ、彼女の振る舞いにもわがままな自分本位を感じたものだが、最近では、「これもアリかな」と思うようになった。結婚して女性が子供の世話に忙殺され、主人の考え方に束縛され、一生を不本意に生きてゆくのを我慢できない人もいるだろう。だから結婚もしない、子供もいない、という女性が多いが、それに比べれば、子供も生み、好きな仕事も続けられる環境を自分で作り上げた彼女のほうが素晴らしい生き方をしているのではないか。

 これまでの道徳観とは衝突するが、どちらのほうが合理的なのか。悩ましい。価値観の転換期に差し掛かっているのかもしれない。







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