■監修者・中島洋の深読み
中島洋
=マルチメディア総合研究所所長
1947年生まれ。東京大学大学院(倫理学)修士修了。73年日本経済新聞社入社。産業部で24年にわたり、ハイテク分野、総合商社、企業経営問題などを担当。1988年から編集委員。この間、日経マグロウヒル社に出向し、日経コンピュータ、日経パソコンの創刊に参加。97年-02年慶応義塾大学教授(大学院政策・メディア研究科特別研究担当)。02年-04年、国際大学(グローコム)教授を務める。現在、MM総研所長、日経BP社編集委員、国際大学(グローコム)主幹研究員などを兼務。
「メンタルヘルス」との再会
「メンタルヘルス」という言葉に出会ったのは80年代の後半、日本経済新聞記者の時代だった。三菱銀行(現在の東京三菱銀行)の健康管理の一環として、社員の「心の健康」の増進のために「メンタルヘルス」の手法を採り入れる、というので、丸の内の三菱銀行本社ビルに出向いた。
会場には、50人ほどの社員が集まっていた。ビジネスマンのストレスの状況をテストする質問用紙の問いに答えて、まず、第一関門である。
第二関門は、特に問題がある人だけではなく、全員が一般的なストレス緩和のプラクティスを体験させられた。着衣をゆるめて血行を良くし、ゆったりと椅子に座る。目をつぶって、インストラクターの指示に従ってゆっくり腹式呼吸を始める。腹に空気を誘い込むように意識しながら、鼻からゆっくりと息を吸い込んで、いっぱいいっぱいになったところで呼吸を数秒間止めて、それからまた、吸い込んだときよりもさらに時間をかけて息を吐き続け、肺の中から空気がなくなると思えるまで吐く。吐き終わったら、また息を吸い始めて同じ動作を5分から10分ほど持続する。
気持ちがすっかりと落ち着く。脈拍も事前に比べて事後は明らかにゆったりと脈打っている。頭の中が一度、空っぽになって、次いで新しい血が流れ込んだようにすっきりした。目を開けると、これは目をつぶった後はいつもそうなのだろうが、周囲が妙に明るく、まぶしく感じられた。憂鬱になった精神状況が、この腹式呼吸だけで少し明るい方向に改善されるのだそうだが、そんな気持ちがした。
皮膚の表面の体温を測ると、事後には明らかに上昇していた。指の先がぴりぴりと感じられた。腹式呼吸によって血行がよくなり、体の隅々の毛細血管に血が流れ、皮膚の表面も血流が流れるので体温が上昇するそうである。脳内の血行も良くなり、前向きに物事を考えられるようになる、と教えられたが、果たしてどうか。実感では、この説明を信じてしまった。現在に至るまで、信じている。
それにしても20年近く前、すでに会社の組織の中ではストレスが高じていた。リストラの嵐が吹き荒れ、セクハラ、パワハラもまた問題視されるようになった最近の会社の中ではストレスはさらに重くなっているだろう。まあ、物事を深刻に考えず、とりあえず、腹式呼吸から始めてみよう。頭も心もつかの間、すっきりするはずだ。
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