■監修者・中島洋の深読み
中島洋
=マルチメディア総合研究所所長
1947年生まれ。東京大学大学院(倫理学)修士修了。73年日本経済新聞社入社。産業部で24年にわたり、ハイテク分野、総合商社、企業経営問題などを担当。1988年から編集委員。この間、日経マグロウヒル社に出向し、日経コンピュータ、日経パソコンの創刊に参加。97年-02年慶応義塾大学教授(大学院政策・メディア研究科特別研究担当)。02年-04年、国際大学(グローコム)教授を務める。現在、MM総研所長、日経BP社編集委員、国際大学(グローコム)主幹研究員などを兼務。
「石油高騰がもたらすメリット」
石油高騰が各国の特定の業界を直撃している。
米国ではジェット燃料の高騰を吸収できずに大手の航空会社が行き詰まった。筆者が近く行く予定の米国アトランタへの成田からの直行便はこの航空会社の路線だけだったので、シカゴやニューヨークなどで飛行機を乗り継いで行かなければならなくなった。日本の航空会社も利益を圧迫されている。赤字が広がった会社もある。タクシー、運送会社などガソリンや重油を使う業界は一様に悲鳴を上げている。
社会的なパニックが起きているわけではないが、直撃された業界や企業にとっては深刻である。社会全体が比較的冷静に受け止めている分だけ、「同情」を得られないこれらの業界や企業にとっては余計にいらだつ話である。
社会が比較的冷静に構えているのは、エネルギーについては別の資源を使い始めているからだ。石油の値段が高くなったから新しいエネルギーが注目されているわけではない。1970年代の石油ショックの時には新エネルギー源の開拓は、確かに、石油価格に対抗できるコストのエネルギー源を確保することが目的だった。しかし、今回は事情が異なる。この10年間は、炭酸ガスを増大させない新エネルギー源の開拓という新しい目的である。
風力発電、水素由来の燃料電池、太陽光発電、そして植物からアルコールを取り出すバイオマスエネルギーなどである。地熱や波力、潮力なども利用可能エネルギーとして目をつけられている。
特に、バイオマスについては、今回、勉強になった。サトウキビとトウモロコシがその原料に使われていることは知っていたが、国によっては麦だの、果てはワインまでが利用されているというのだから驚きだった。
しかし、それにしても、植物を発酵させてエタノールにして燃焼させるのだから、結局は、エタノール中の炭素が燃えて炭酸ガスを排出するではないか、というのが、当初の疑問だった。取材しているうちにその疑問は一挙に解消した。キーワードは「カーボン・ニュートラル」という言葉だった。植物は炭酸同化作用で取り込んだ炭素をエタノールに変えて燃やすので、排出する炭酸ガスは摂取したのと同量、という計算である。炭酸ガスの出し入れについてはプラス・マイナス・ゼロ、つまりニュートラルということになる。ガソリンや石炭などの化石燃料が排出する炭酸ガスは太古の大気から摂取した炭酸ガスなので、現在の大気で計算すると、差し引き大幅なプラスということになる。
石油が安いときには、環境問題だけでは開発速度は鈍かったが、石油価格高騰が加わったので少し動きは加速されたかもしれない石油価格高騰は、地球環境問題にとっては大きなプラスであるようだ。
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