■監修者・中島洋の深読み
中島洋
=マルチメディア総合研究所所長
1947年生まれ。東京大学大学院(倫理学)修士修了。73年日本経済新聞社入社。産業部で24年にわたり、ハイテク分野、総合商社、企業経営問題などを担当。1988年から編集委員。この間、日経マグロウヒル社に出向し、日経コンピュータ、日経パソコンの創刊に参加。97年-02年慶応義塾大学教授(大学院政策・メディア研究科特別研究担当)。02年-04年、国際大学(グローコム)教授を務める。現在、MM総研所長、日経BP社編集委員、国際大学(グローコム)主幹研究員などを兼務。
「自治体合併の本当の意味は?」
地方自治体の合併は英語でなんと表現するのか。
新聞紙面では恒例の英語のカット見出しをつけるために頭を悩ました。企業の合併なら「merge(r)」を使うのだが、辞書を繰ってみるとどうも違う。用例を探ってゆくと、どうやら「union」が一番、適切のようだ。
そこで改めて、自治体の合併の意味が見えてきた。「union」は2つの組織体が足し算して連合を組む、というイメージである。確かに、自治体の合併は、ある地域と別の地域が足し算してその面積を広げることになる。企業の合併は単純な足し算ではなく、強いところを強くして、弱いところを切り捨てたり補完しあったりする、機能的な再編成が中心だ。双方の組織の人間が互いに交流して一つになるのが目的だ。以前と以後では中身は大きく変わる。
これに対して自治体の合併では、呼び名は変わるかもしれないが、元の地域は合併前と合併では別に風景が変わるわけでもないし、住んでいる人が急に変わるわけでもない。1+1が2になるだけである。なるほど、「merge」ではなく「union」の方が適切な表現である。
しかし、である。平成の大合併は果たして、1+1が2になるような牧歌的なものかどうか。明らかに違う。目的は逼迫した財源を効率よく使うための組織再編成である。つまり地域を支える「行政組織」の効率化、そのための組織再編成のための合併である。目的は行政組織の合併であって、ついでに地域が同じ行政組織の管理下に統合される、というのが実態なのである。
そこで、今回の英語の表記は、「restructuring」にした。リストラである。企業のリストラも本来は効率化のための組織の再編成である。結果として余剰になった人員を削減することになるので、いつの間にか、リストラとは人員カットのように意味が変異してしまったが、今回の平成の合併は、まさしくそういう意味での組織の再編成だった。
日本語ではもやもやしていた事態が英語に直して検討してみると意味がはっきりすることがある。平成の大合併は、どうやら、その一つの例である。
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