■監修者・中島洋の深読み
中島洋
=マルチメディア総合研究所所長
1947年生まれ。東京大学大学院(倫理学)修士修了。73年日本経済新聞社入社。産業部で24年にわたり、ハイテク分野、総合商社、企業経営問題などを担当。1988年から編集委員。この間、日経マグロウヒル社に出向し、日経コンピュータ、日経パソコンの創刊に参加。97年-02年慶応義塾大学教授(大学院政策・メディア研究科特別研究担当)。02年-04年、国際大学(グローコム)教授を務める。現在、MM総研所長、日経BP社編集委員、国際大学(グローコム)主幹研究員などを兼務。
「海老」の次は「カニ」が求められるニューバブル
1980年代後半、日本のバブル経済真っ盛りのころ、豊かさにどっぷりと浸かった日本国民は海外から高級食材を買いつけてきた。そのころの代表的な高級食材は「えび」だったような気がする。伊勢海老を世界の海に追い求める、というのも、なんだか変な気がしたが、昔から海老は「天丼」「天ぷらそば」など国民的人気メニューの天ぷらの中でも上級食材の定番だったのだから、懐が暖まった機会に、この食材の粋を極めたくなった気持ちも分からないではない。特に伊勢海老は結婚式やお祝い事の主役の食材でもあった。
しかし、今度の好景気の中で追い求められる食材が「カニ」「羊肉」「カカオ豆」というので、ずいぶん、すそ野が広がったという気がする。いずれもそれぞれのジャンルの高級の粋を極めるという点では、かつての高級食材ブームと共通点はあるけれども。
「カニ」という点では、伊勢海老によく似たものに「ロブスター」という「カニ」がある。ロブスターは形状や食感が伊勢海老に似ているのでうっかりすると海老と勘違いするのだが、実はザリガニの親分なのだそうである。沖縄にゆくとこれも伊勢海老を思わせる「ヤシガニ」という大型の食材がある。ヤシガニもザリガニの仲間だというのだが、確かに、ザリガニだと思って見るとザリガニに良く似ている。しかし、昔、近くの沼や池でスルメなどをえさにして釣り上げて遊んだザリガニの種類かと思うと、ちょっとイメージが落ちそうである。
このヤシガニも宮古島などでは夏場には大量に見かけるそうだが、あまり調理してくれる料理屋は見かけない。島の人に聞いても、始終、食べている、という人にもなかなか出会わない。一度、看板にヤシガニ料理を掲げている店に入って食べたが、シーズンが外れて珍しい時期だったかも知れないのだが、料金はびっくりするほど高かった。味は、料理法が上手だったのだろうが、実にコクのある美味だった。海老とカニは食感では区別ができないな、と感じた。ところで、このヤシガニは料理する直前までえさを与えながら飼育していた。何を食べさせているのかと見てみると、なんと、りんごだった。もちろん、沖縄でりんごは取れない。捕獲したヤシガニにまで遠路はるばるから運んだ果物を食べさせる。ザリガニにりんごの香りを感じたものだった。おいしい食材は世界を動き回っているようだ。
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