■監修者・中島洋の深読み
中島洋
=マルチメディア総合研究所所長
1947年生まれ。東京大学大学院(倫理学)修士修了。73年日本経済新聞社入社。産業部で24年にわたり、ハイテク分野、総合商社、企業経営問題などを担当。1988年から編集委員。この間、日経マグロウヒル社に出向し、日経コンピュータ、日経パソコンの創刊に参加。97年-02年慶応義塾大学教授(大学院政策・メディア研究科特別研究担当)。02年-04年、国際大学(グローコム)教授を務める。現在、MM総研所長、日経BP社編集委員、国際大学(グローコム)主幹研究員などを兼務。
携帯電話市場の新しい競争条件は「法人需要」
監修者の中島 洋の主力業務の一つが、IT関連の製品やサービスの市場シェアの調査会社「MM総研」の責任者である。もちろん、国内携帯電話市場のシェアも調査し、発表している。
そのMM総研所長の中島に昨年末から当時のボーダフォンのモロー社長から意見交換を求めるアポイント調整の連絡が何度かあった。中島の日程とモロー社長のそれとの調整がつかず、結局、アポイントが成立したのは今年の2月末だった。すでに当時、今年秋のナンバーポータビリティ(通信会社が変わっても電話番号が変わらない)を契機にした激しい競争をボーダフォンが乗り切れるかどうか、懸念する声が聞かれていた。その以前、1年間にわたって、ボーダフォンがほとんど市場開拓の目だった投資をしてこなかったことがその理由だった。MM総研の行った携帯電話の代理店の調査でも、そのことが際立っていた。
モロー社長に率直にその調査結果を伝えて、このままで行けば、ナンバーポータビリティ施行前に、ボーダフォンの代理店は見切りを付けて他の陣営に乗り換えてしまうのは目に見えている、と指摘した。それとともに、焦点となるのは法人向け市場の切り札となるFMC(固定電話とケータイの統合)であることも指摘した。KDDIがauの傘下にあり、パワードコムがKDDI陣営に入った以上、ボーダフォンに残された選択は、分かれて出たばかりの日本テレコム、つまりソフトバンクとの提携しかない。そのことは代理店も推測しているのに、ボーダフォンが態度を決めかねているのに苛立っている。その決断が遅れれば遅れるほど、ボーダフォンに見切りを付ける代理店が増えて、ボーダフォンの生き残る可能性は縮小する。こう、モロー社長に伝えた。
その数日後、ボーダフォンがソフトバンクに身売りする、という報道がロンドンから伝えられた。どの程度、中島の進言が影響したか分からないが、この報道を受けて、ボーダフォンの決断の決め手は「FMC」であるのを強く感じた。ナンバーポータビリティを巡る騒ぎは遠くないうちに一段落するだろう。その後、法人向けの「FMC」が主力戦場になるだろう。携帯電話市場も、関が原で天下は決しない。大阪冬の陣、夏の陣と、戦場は次々と現れるだろう。
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