■監修者・中島洋の深読み
中島洋 中島洋=マルチメディア総合研究所所長

1947年生まれ。東京大学大学院(倫理学)修士修了。73年日本経済新聞社入社。産業部で24年にわたり、ハイテク分野、総合商社、企業経営問題などを担当。1988年から編集委員。この間、日経マグロウヒル社に出向し、日経コンピュータ、日経パソコンの創刊に参加。97年-02年慶応義塾大学教授(大学院政策・メディア研究科特別研究担当)。02年-04年、国際大学(グローコム)教授を務める。現在、MM総研所長、日経BP社編集委員、国際大学(グローコム)主幹研究員などを兼務。

クリーンエネルギーの本命は?

 風力発電、燃料電池、太陽電池、バイオマス等々――次々とクリーンエネルギーの主役を目指すエネルギーが登場して話題を提供するが、果たしてその本命はどのエネルギーだろうか? 

 石油ショックで原油価格が高価格水準に移行した1970年代以降、エネルギーの事情は大きく地殻変動した。原油価格は一気に10倍以上に跳ね上がり、コスト構造が一気に変わってしまった。石油火力のコスト高騰で電気代は上がり、アルミ精錬などのエネルギー多消費産業は日本から姿を消した。ガソリンを食わない小型車が世界的に売れて、日本車が米国車を追い詰める闘いは、なぜか、今日まで続いている。

 消費エネルギーを削減する技術は急速に進行しているのだが、これは、続いてきた「地球温暖化ショック」の露払いとしては最適な役割を果たした。問題は石油とのコスト競争だけではなかった。異常気象を引き起こし、海面を上昇させる危険があり、人類の命運がかかって来たのである。その地球温暖化は、とりあえず、化石燃料から発生するCO2による「温室効果」の影響が大きく、その元凶である石油・石炭の使用を削減することを、先進国に要求しているのである。国別のCO2削減目標を決めた京都議定書を批准していない米国でも、政府とは別に大企業や消費者は徐々にCO2削減に目覚め始めている。

 自動車はバイオマスが先行した。ブラジル、米国が大きくシフトしつつある。これには電気自動車も猛追中だが、その電気を何で起こすのかが、次の問題だろう。

 太陽電池は住宅用として、補助金行政を背景に日本が一歩前に出た。太陽電池は半導体なので、使用が本格的になれば、量産効果でコストが飛躍的に下がるのではないか、と期待されている。現在はまだ、他のエネルギーより高コストで競争力は小さいが、この10年で急速に競争力を付けてきたので、日本政府・産業界はあと一息である。特に直接に住居や工場、公共施設で利用するだけでなく、広大な海洋や砂漠で水素などの製造用の電気分解の電力に使って、これを運んで大消費地の近くで水素発電に利用する、などのエネルギー燃料サイクルができれば太陽電池の利用方法は広がる。

 風力は騒音が難点なので、遠隔地で発電することになるが、送電ロスをどうするか。

 まだ、地熱、波力、潮力、海洋温度差などのクリーンエネルギー技術が実用化できるかどうか、開発中である。

 まだまだ競争は始まったばかりだが、主役がだれかについて、姿が見えてくるには10年は必要ないだろう。地球温暖化のテンポが急で、その影響が明確になってきたので、開発支援のための政策がこれから世界各国で強力に展開されることになるはずだ。





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