■監修者・中島洋の深読み
中島洋 中島洋=マルチメディア総合研究所所長

1947年生まれ。東京大学大学院(倫理学)修士修了。73年日本経済新聞社入社。産業部で24年にわたり、ハイテク分野、総合商社、企業経営問題などを担当。1988年から編集委員。この間、日経マグロウヒル社に出向し、日経コンピュータ、日経パソコンの創刊に参加。97年-02年慶応義塾大学教授(大学院政策・メディア研究科特別研究担当)。02年-04年、国際大学(グローコム)教授を務める。現在、MM総研所長、日経BP社編集委員、国際大学(グローコム)主幹研究員などを兼務。

循環型社会ビジネスは収益力あるビジネスモデルだ

 「マイコン」が普及してしばらくして、循環型ビジネスの先駆者に出会った。日経新聞の記者のころだ。

 20年前近く前のことである。舞台は「ボイラー」。愛媛県を本拠にした中堅ボイラー会社が「製造業」を「サービス業」へと変えようとしていた。道具は「マイコン」と「センサー」である。当時は通信が貧弱だったので、もう一つ、電話回線が道具に加わった。ボイラーに配したセンサーでユーザーのボイラーの運転状況を常時監視し、ボイラーに装着したマイコンに蓄積、毎日1回、同社のサービス拠点から電話回線を通じてリモート巡回して、データを蓄積する。そこで故障しそうな兆候を見せ始めたボイラーを発見すると訪問して事前修理で直してしまう。ユーザーは一度、導入すると、ボイラーは故障せずに、使用するときにはいつでも必ず使い続けられるのである。

 つまり「ボイラーを売る」のではなく、「燃焼熱を使う」というサービスを売るのである。一度、販売した後は、故障による買い換えは必要ない。商品寿命は大幅に伸びた。その代わりに「保守契約」のサービス収入でメーカーは潤うのである。ユーザーには「所有」から「利用」へと使用形態を変えてもらう。

 このメーカーの売上は伸びなくなった。その代わりに利益は大幅に伸びた。これまで寿命が来て買い換えてもらわなければ売り上げが伸びなかったが、しかし、原料や材料、部品を調達し、工場で組み立てるコストは大きかった。販売戦線は激戦で値引き勝負。コスト割れの商売もあった。売上が大きくても利益はすれすれだった。ところが、故障をさせないサービスビジネスでは、自動的にユーザーの「囲い込み」が起こるので、値引きも不要である。寿命が来た製品を回収して廃棄する無駄もない。製造のための原材料や部品は少なくなったが、ユーザーの状況は完全に掌握しているので、計画的なサービス、計画的な人員管理ができる。無駄を大きく省いた新しい「サービス」の形態が生まれた。

 激しい値引き合戦の「製造業」から安定した利益を上げられる「サービス業」へと転換した。メーカーとユーザーがサービスを媒介に直結して、その間を製品や部品が循環する。それを見守るのは情報機器と通信ネットワークである。

 このボイラー会社は利益率を高めようとしたら循環型ビジネスにたどり着いた。現在は緩急負荷を軽減するために循環型ビジネスが注目されているが、循環型はけっして不経済なシステムではない。実は利益を生み出す仕組みである。寿命が着たら使い捨てにする従来のビジネスモデルのほうが、実は、収益率の低いビジネスモデルだったのだと思う。環境負荷を軽減する社会の要求は、メーカー企業に収益力の高い新しいビジネスモデルに目覚めさせる機会でもある。





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